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WTB海老澤(明大)、FB矢崎(早大)はジョーンズHCのお眼鏡にかなう「第2の福岡堅樹」になれるか?

斉藤健仁スポーツライター
合宿に参加して選手たちに声をかけるジョーンズHC(撮影:斉藤健仁)

 ヤングジャパンがパシフィックアイランダーに挑む。ラグビーのU20日本代表を中心に構成されている「JAPAN XV」が4月5日よりサモアに遠征しており、「パシフィック・チャレンジ」でサモア、フィジー、トンガの代表に準じるチームと対戦する。

・4月10日(水) マヌマ・サモア対JAPAN XV

・4月15日(月) フィジー・ウォーリアーズ対JAPAN XV

・4月20日(土) トンガA代表対JAPAN XV

◇大学4年生の〝オーバーエイジ〟4人が参加

 「JAPAN XV」のメンバーは、現在、シーズン中であるリーグワンを戦っている選手は参加しておらず、U20日本代表候補24名に、2月、日本代表指揮官になったばかりのエディー・ジョーンズHCが福岡で行った日本代表の強化合宿に招集された〝オーバーエイジ〟である大学4年生の4人が参加している。

 その4人とは早稲田大学のキャプテンとなったHO佐藤健次、帝京大学のキャプテンに就いたFL青木恵斗、昨季も唯一同大会に参加した京都産業大学のSH土永旭、そして明治大学の副将に就いたCTB秋濱悠太(いずれも4年)だ。

〝オーバーエイジ〟の3人。左から秋濱、佐藤、青木。いずれも桐蔭学園出身(撮影:斉藤健仁)
〝オーバーエイジ〟の3人。左から秋濱、佐藤、青木。いずれも桐蔭学園出身(撮影:斉藤健仁)

 U20日本代表にとっては、7月にスコットランドで開催される「ワールドラグビーU20トロフィー」(U20世代の国際大会で2部にあたる)に向けて、絶好の強化の機会となるだろう。また、将来の日本代表を担う可能性のある大学4年生の4人にとっては、エディー・ジョーンズHCへの大きなアピールの場となる。

◇日本代表の指揮官になったばかりのジョーンズHCも視察

 昨年までの同大会に参加する「JAPAN XV」と違うのは、1月にラグビー日本代表の指揮官になったばかりのジョーンズHCが視察することだ。6月から本格的にシニアの日本代表が始動するため、現在、選手選考の最中だという。

私にとって一番大きな仕事はセレクションです。私たちは2027年のワールドカップを見据えたセレクションが必要です。もちろん我々は今すぐ勝利を手にしたいが、私はチームを再建しなければならない。

ご存知のように、2023年ワールドカップのメンバーは年齢の高い選手が多かった。だから私たちはチームを再編することが求められている。だから有望な若手選手を発掘するということは、非常に重要なことで、最重要事項です。今、(コーチング)スタッフの75%は決まってきているので、あとは最後の仕上げをして、スタッフが揃い次第、〝超速のラグビー〟をどのように実践していくかを話し合うことになるだろう」(ジョーンズHC)

 ジョーンズHCに若い選手からシニアの日本代表に呼ぶ可能性があるのか聞くと、「まずはパシフィック・チャレンジでどのようなプレーを見せるかを見極めたいと思います。常に日本代表に選ばれるような可能性は開かれています。私も現地で見て、シニア(の日本代表)に呼べる選手がいれば招集したいと思います。彼らが世界の舞台でパフォーマンスを発揮できるかどうかが選出の条件です。力を発揮した選手が選ばれることになります」と話した。

◇福岡は若き日本代表からスターダムにのし上がった

 ジョーンズHCがかつて日本代表を指揮していた2012年から2015年において、若き日本代表から一気にスターダムにのし上がった選手がいる。それは2015年ワールドカップに出場し、2019年ワールドカップのエースとなったWTB福岡堅樹(元埼玉ワイルドナイツ)だった。

 福岡は一浪の末、入学した筑波大学1年時の11月、6トライを挙げる鮮烈デビューを飾り、大学選手権準決勝、決勝でも国立競技場のピッチにも立った(アタックはもちろん、バッキングアップで逆サイドから相手のアタックを止めた姿が評価されたという)。

 2013年3月、当時の日本代表に準じる「ジュニア・ジャパン」に招集され、「パシフィックラグビーカップ2013」で活躍したことで、大学2年で日本代表入りし、ウェールズ代表やスコットランド代表と対戦し、その後の活躍につなげたというわけだ。

 サモア遠征を視察するジョーンズHC、再び、WTB福岡選手のようなケースが出てくるのを望むのか?と聞くと、「はい、その通りです。福岡選手は、最初に見たときからパフォーマンスを発揮できると思ったのでシニア代表チームに加えました。若手選手に投資することは大事なので、今から次のワールドカップに向けて若手選手を育てていきたい」と語気を強めた。

昨年も飛び級でU20日本代表を経験している矢崎。最注目の選手の一人だ(撮影:斉藤健仁)
昨年も飛び級でU20日本代表を経験している矢崎。最注目の選手の一人だ(撮影:斉藤健仁)

◇WTB/FB矢崎(早大)&海老澤(明大)の活躍に期待大!

 そんな中、「第2の福岡堅樹」になれる可能性のある選手がU20日本代表候補の中に2人いる。1人目は昨季、1年生ながら早稲田大学のエースとして大活躍したWTB/FB矢崎由高(2年)だ。

 高校1年から桐蔭学園のエースとして「花園」こと全国高校ラグビー大会で優勝に貢献。昨年は高校日本代表で活躍後、〝飛び級で〟U20年代の世界大会にも出場して大活躍したランナーで、2月に福岡で行われた日本代表の強化合宿にも招集された。

「(日本代表選手と練習して)レベルの高い環境で練習して、他の意識の高い選手を見て、このまま満足してはいけないとあらためて再認識した。取り組む姿勢をもっと向上させようと思った。パスキャッチなどラグビーの根本的なベーシックスキル、まだ追いついていないスキルをやっています」(矢崎)

 福岡選手のように今回の遠征で活躍して、日本代表に呼ばれたいかをたずねると矢崎は「もちろんチャンスがあればそう(福岡選手のように)なりたい。今年は日本代表でいっぱい試合があるので、そこに選んでもらえるように、一つずつ自分のスキルをレベルアップして結果的に呼ばれたという形を作ってもらえるようにしたい」と腕を撫した。

昨季、1年生ながら明大のエースとして大活躍したWTB海老澤(撮影:斉藤健仁)
昨季、1年生ながら明大のエースとして大活躍したWTB海老澤(撮影:斉藤健仁)

 2人目は、2月の福岡の強化合宿にこそ招集されなかったが、ジョーンズHCが「速くて、いい脚を持っていて、性格も活発で明るい。いい選手になる可能性がある」と名指しして高く評価した、明治大2年のWTB/FB海老澤琥珀だ。

 報徳学園時代はエースランナーとして、冬の花園こそ準優勝だったが春の選抜、夏の7人制と全国大会で優勝した原動力の一人となった。そして昨季、入学した明治大では関東大学対抗戦の中盤からレギュラーWTBとなり、大学選手権でも大活躍した快足ランナーである。憧れは東京サンゴリアスに所属する、南アフリカ代表のWTBチェスリン・コルビだ。

 海老澤は高校時代、U17日本代表と高校日本代表を逃しており、「JAPAN XV」で初めて、15人制で桜のエンブレムのついたジャージーに袖を通すことになる。「(自分の武器は)運動量です。いろんなところに顔を出してアタックするのが持ち味。ボールを持ったら100%ゲインするなど、チームに求められることをしっかりやりたい」と意気込んだ。

 まもなく開幕するパシフィック・チャレンジでは「JAPAN XV」が2020年以来となる優勝ができるかどうはかもちろん、ジョーンズHCのお眼鏡にかなう、いわば「第2の福岡堅樹」が現れるかどうかに注目してほしい!

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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