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【加東市】ひな人形着付師に聞くーー親から子へと…伝統文化の継承

Okada Chieka地元情報を届けるフリーライター(加東市・小野市)

かつて日本でまだ医学が発達していなかった頃、人を模した人形(ひとがた)を海や川へ流すという、無病息災を願う大切な行事がありました。

また上流階級では、少女たちがままごとのように人形などで遊ぶ”ひいな遊び”というものが流行。これら二つが合わさったものが、現代に受け継がれている「ひな祭り」の原型だという説があります。

画像引用:Wikimedia Commons 平安京出土人形代
画像引用:Wikimedia Commons 平安京出土人形代

しかし現代では徐々に本来の意味が風化しつつあり、由来や理由が分からずになんとなく3月3日を過ごす人が多いというのもまた事実。

出井人形店 ひな人形着付師・出井和典さん
出井人形店 ひな人形着付師・出井和典さん

兵庫県加東市で唯一、ひな人形の着付師としてご活躍されている方がいます。

今回、加東市大畑にある出井(いずい)人形店の代表・出井和典さんに、後世に語り継ぎたい「ひな祭り」への想いをお話しいただきました。

ひな人形着付師・出井さんインタビュー

展示場入り口
展示場入り口

ーーまずは今一度、ひな祭りの由来や意味を教えていただけますか?

女の子が生まれたことを祝い、そしてその子が結婚するまで厄災から守り続けてくれるのが、このひな人形です。飾られた人形にはそれぞれの役割があって……。

『日本の節句文化を継承する会』という団体が作った約4分のショートアニメが分かりやすいので、お時間があればぜひご覧ください。

やはりひな人形を一年に一度、出して、また片づけるという行動……やはりこの過程が大切だと考えています。

展示場に並ぶ作品たち
展示場に並ぶ作品たち

ーー恥ずかしながら、出井さんに教えていただくまで筆者も深く知りませんでした……。やはり今、そういう人は多いのでしょうか?

ひな祭りは本来、そうした意味を祖父母から親世代へ、そして子へと語り継いでいくものだったんですが……そんな家庭はもう少ないんじゃないでしょうか。今は核家族化が進み、祖父母と一緒に暮らすという家庭が少なくなっているのが一つの原因かなと思います。

ーーなるほど。では、出井人形店の具体的なお仕事内容を教えてください。

ひな人形を作る職人というのは頭師・着付師・小道具師という三つから成り立っており、私はこの中の着付師にあたります。頭と小道具を仕入れ、お客さまの注文を受けて希望の布で人形に着付けを施し、完成させます。

生地の種類は千差万別
生地の種類は千差万別

ーーつまりオーダーメイドで好きな衣装を選べて、世界にたった一つのひな人形が出来上がるということですね。

はい。お客さまにイメージしていただきながら、使用する布を一緒に選んでいただきます。また出井人形店の実用新案として、着付前の人形の胴体にお子さまのお名前を記した”為書き(ためがき)”を貼り付けています。

ーーそれはとても嬉しいでしょうね……!

そうですね、完全一点ものとしてお客さまからは大変喜ばれています。

完成後、地域によっては直接ご自宅までお届けして設置までしているのですが、やはり贈られたお子さまやご家族が喜ぶ顔を見られると私も嬉しいです。

出井さんのブログでは注文主への気遣いで着付前の写真を紹介
出井さんのブログでは注文主への気遣いで着付前の写真を紹介

ーーそもそもなぜ、この加東市で人形の着付けを?

この加東市は山に囲まれ、暖かい時期は農業が盛んです。一方で冬の時期になると農業の仕事はなくなってしまうため、寒い時期に農業に代わる産業として始まったようです。

人形の関節の位置を決める”腕折り”は一発勝負
人形の関節の位置を決める”腕折り”は一発勝負

ーーちなみに2025年に開かれる大阪・関西万博『ひょうごフィールドパビリオン』では出井人形店も認定されていますよね。県外などから訪れる人々に対してどのようなプログラムを予定していますか?

これはまだ未定ですが、押絵づくり体験などを考えています。押絵とは羽子板などで使われる伝統的な技法で、紙と布地の間に綿を入れて糊付けするというものです。

ーー出井さんは二代目としてこの出井人形店を切り盛りされていますが、今後の展望をお聞かせください。

生涯現役として、一つひとつ丁寧に心を込めたひな人形をこしらえていきたいですね。

また現在、淡路島で暮らす息子が衣装の縫製を担ってくれています。彼が店を継いでくれると言っていて、これからの世代に継承できることを嬉しく思います。

日本人形協会から節句人形工芸士に認定
日本人形協会から節句人形工芸士に認定

ひな人形着付師・出井さんの職人技はこれからも受け継がれる

出井人形店 外観
出井人形店 外観

この記事では、兵庫県加東市にある出井人形店のひな人形着付師・出井さんにお話を伺いました。取材当日は展示場ほか貴重な作業場も見学させていただき、いたるところに職人のこだわりを感じられました。

2025年の万博では『ひょうごフィールドパビリオン』を機に、さらに加東市に根付く文化が広まっていくことを願います。

有限会社 出井人形店
公式サイトはこちら
所在地:兵庫県加東市大畑 1161
TEL:0795-46-0069
FAX:0795-46-0082
メール:idoll.bizz@gmail.com
定休日:水・日・祝祭日
※問い合わせは極力MailかFaxにて下記時間帯に
・平日9:00~17:00(Tel:0795-46-0069)
・土曜9:00~12:00(Fax:0795-46-0082)

地元情報を届けるフリーライター(加東市・小野市)

兵庫県加東市在住のフリーライターOkada Chiekaです。日ごろはメディアで記事の企画・執筆などして楽しく暮らしています。家から出たくない引きこもりウーマンですが、加東市と小野市の情報をお届けするために走り回ることを決意しました。お酒と映画とゲームが好きなアラサーレディですので、SNSで気楽に話しかけてください。

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