今年の7月、地下鉄鶴舞線「大須観音駅」から歩いて10分ほどの堀川沿いに「コインリングの制作体験」ができるお店「I.BE.LABO 名古屋大須店」がオープンしました。お気に入りのコインからオリジナルの指輪がつくれると話題のコインリングづくりですが、体験できるお店は多くありません。今回、名古屋の中心部にオープンしたということでＳＮＳで話題になり、今もなお再生回数が増え続ける人気ぶりです。
お店を手掛けたのは、愛知県安城市で福祉施設をはじめカフェやIT事業を展開する法人「株式会社アイシア」代表の岡田昇大さんです。岡田さん個人がオーナーとなって始めたお店だそうですが、今後お店を増やして、ゆくゆくは法人運営を考えているとのこと。今回は、一枚のコインからリングができるまでの工程を撮影させていただきました。そして、なぜこの業態を選ばれたのかとても気になり、そのあたりのお話を伺いました。岡田さんの予想外の経歴も知ることができましたので、そちらも併せてご紹介します。

ビルの2階にあるお店は、白を基調に木目とレンガを織り交ぜたインテリアで、かわいさとスタイリッシュが同居するステキな空間でした。
ナチュラルで優しいテイストのテーブルの上に、世界中のコインがたくさん並んでおり、来店したお客さんはこれらの中から気に入ったものを選んでリングを作り上げていきます。

国が違えば大きさや描かれているものも違うのですが、丸い形はほぼ共通。コインの中には特別な言い伝えを持つものも。

迷ったら、「運命」にまかせてみるのもいいかもしれません。

お気に入りの一枚が見つかったら、まずは中央に穴をあける作業からスタートします。今回は店長に協力していただきました。

プレス機にコインをセットし、レバーを上下しながら少しづつコインにヘッドを近づけていきます。油圧式なのでほとんど力はいりません。最後は「パンッ」という大きな音をたててコインの中央部分が押し出されました。

先ほどプレスしたコインを、今度は別の機械を使って中央部分を完全にくり抜きます。

この後、穴が開いた方をリングに加工していきます。中央の小さい破片はペンダントに加工することが可能。

次は、穴の開いたコインを変形させる工程です。大きさの違う逆台形の型に押し込むことで、穴に対して徐々に角度をつけていきます。ここは少し力がいるかもしれません。友達やカップルと力を合わせて共同作業すると楽しいかも。

だいぶ形が変わりました。ここまで変形したら、次は希望のサイズに合わせる作業です。

リングストレッチャーは、下にいくほど太くなる軸にメモリが刻まれており、レバーを下げてこの軸をわずかに開くことで穴を少しずつ広げることができる機械です。この機械を使ってリングの穴を希望のサイズになるまで広げます。

希望のサイズに変形できたら、今度は先ほどの機械に加工中のリングをさかさまに入れて形を整えていきます。

途中、火であぶって加工しやすくしながら同じ作業を繰り返し、リングの形に仕上げます。

形が出来上がったら、最後は磨く作業です。この磨き方によってテイストが決まります。

見事にリングが仕上がりました！
名古屋大須店に訪れるお客さんはカップルが多いそうで、皆さん楽しそうに作っていくそうです。リングを二人で作って、それを身に付けるなんておしゃれでかっこいいですね。人気が出るのもうなずけます。

ここで、お店のオーナーである岡田さんについて。

岡田さんの社会人としてのキャリアのスタートは、中学校の体育教師でした。3年間続けたそうですが、事情で消防士へと方向転換します。そして、消防士を3年間務めた後、身内が起業した現在の会社に現場から入り、7年目の今年3月に社長に就任しました。

もともと子供が好きで「教育の仕事に携わりたかった」という岡田さん。キャリアチェンジを重ねながら方向性を固め、社長に就任した今取り組むのは、「仕事を通してエネルギーにあふれた若者を育て、のびのびと羽ばたいていける場づくり」だそうで、その基盤を整えるためには収益アップを目指して事業のさらなる拡大も必要と考え、福祉の分野だけでなく飲食やITの分野にも事業展開しています。業種を違えても一貫しているのは、人の成長を後押しする場づくりに徹している事。有能で熱意のある人には積極的に裁量を与え、ある程度の失敗も容認するスタンスだそうで「みんな、自分たちで考えて行動してくれます。そして、想像してた以上のことをやってれるんです」と嬉しそうに話します。今回、新たにそうした場が増えたことは、喜ばしい限りです。

ところで、オープンしたお店は安城のお店に続く2号店ですが、そもそもなぜコインリング制作体験のお店を始めたのでしょうか。それについてお聞きしたところ、「高校の後輩が岐阜でこういったお店をやってまして、話の流れでそれを知って『珍しいし、手軽にものづくり体験ができる』ということで興味を持ちました。それに、いろんな意味で汚いイメージがあるお金ですが、知れば世界中のコインにはそれぞれにまつわる興味深い言い伝えがありましたし、何よりこんな素晴らしいものに生まれ変わるというところが気に入りました。ちなみに、ここで扱うコインは、神社に持ち込むなどして浄化しています。気持ち的なものですけど」と、ものづくりの街で事業に携わってきた方の視点も交えて話してくれました。

今回おじゃまして感じたのは、オーナーやスタッフの方々の人柄に触れたり、制作体験を楽しむことで、良いパワーをたくさんもらえそうなお店だということ。
お店は地下鉄の駅や大須商店街からも近いので、遊びのコースに入れておくものおすすめです。何より、大須の雰囲気にぴったりではありませんか。今後もますます盛り上がることを期待しています。

店舗情報