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頭突きあり“世界一危険な格闘技”に挑む22歳

藤村幸代フリーライター
ラウェイ戦に向け「頭突きの精度も高めたい」という金子大輝(4/27公開練習にて)

【格闘技から制約を取り払ったら……】

血気盛んな2人の人間が向かい合い、一方が「格闘技で勝負しよう!」と申し出たとする。もう片方はおそらく、こう答えるだろう。

「望むところだ。で、ルールはどうする?」

そう、他のスポーツと同様、格闘技にもルールが必要だ。

特に、肉体を直接ぶつけあう格闘技は、安全性や娯楽性を担保するためにも「ルール」という名の約束事や制約は欠かせない。

では、その制約を最大限に取り払ったら、一体どんな闘いになるのか?

そんな疑問に対して、答えの一端を示してくれそうな試合が行われる。5月1日、神奈川・横浜文化体育館で開催される『ZONE(ゾーン)4「原点回帰」』はキックボクシングのイベントだが、この中で2試合、ラウェイ・ルールが組まれるのだ。

【“世界一危険な格闘技”と言われる理由】

ミャンマー古来の伝統格闘技「ラウェイ」は、1000年の歴史を持つと言われている。ルールはとてもシンプルで、それゆえに過酷だ。

まず、グローブはつけない(バンデージのみ)。攻撃はパンチと蹴り、ヒジ、ヒザに加え、頭突き、立った状態での関節技も認められる。試合時間はキックと同じ3分5ラウンドだが、判定はない。つまり、勝つには相手をKOするしかない。

「ラウェイの試合は根性の削り合いというか、人間と人間の魂の削り合いというイメージ」

2013年9月、本場ミャンマーでこのルールに挑み、顔面に裂傷を負いながらもフルラウンド闘い抜いた元ムエタイ世界王者、藤原あらし(バンゲリングベイ・スピリット/37)は語る。

【怖いからやりたくないとは言いたくなかった】

5月1日、自身二度目のラウェイルールに臨む金子大輝
5月1日、自身二度目のラウェイルールに臨む金子大輝

これまでラウェイ公式戦で勝利した日本人は、外国人初勝利の偉業を成し遂げた田村彰敏(2004年)と、寒川直喜(2007年)のみ。“世界一危険な格闘技”とも“究極の格闘技”とも言われるラウェイの壁は厚い。

今回、その壁に挑む金子大輝(リバーサルジム川口REDIPS)は、格闘技キャリア4年の22歳。無謀な挑戦にみえるが、実は今年2月、現地でラウェイ初戦に臨んでいる。

「ラウェイ戦を承諾したのは、『素手は怖いのでやりたくないです』と言いたくなかったから。格闘技を始める前の自分がそれを聞いたらがっかりすると思うし、来たオファーは基本、絶対に断りたくないんです。格闘家って、いつ、どんな時でも闘うものだと思うので」

【5月1日、今の格闘技では見えない何かが見られる?】

初挑戦では、「前日習ったばかりだった」という頭突きをヒットさせるも、2ラウンドKO負けに終わっている。

「相手はチャンピオンでしたが、そんなことは関係なく気持ちで負けたことが本当に悔しかった。控室に戻ってからも『このままじゃ終われない』と、うわごとのように言っていました」

体操一家に育ち、小中高と器械体操に打ち込んだが、加藤凌平ら同年代の厚い壁に阻まれ続けた。

「だからこそ、体操でなしえなかったことをなしえたい。格闘技に懸けているんです」

元キック世界王者でZONE代表の小林さとし氏も、「とてつもない動きをする」金子の高い身体能力、そして純粋に強さを求める“心”を汲んで、今回のオファーを決めたという。小林代表は、ラウェイ戦の意義について次のように語る。

「素手で5ラウンド殴り合うなんて、時代に逆行しているかもしれない。でもラウェイの試合を通して、今の格闘技では見えない何かが必ず見えてくると思う」

格闘技への情熱を押さえきれない金子を含め、4人のラウェイ戦士から、我々は“闘いの原点”を垣間見ることになるのだろうか。5月1日の闘いに注目したい。

左より、同大会で全日本王座を狙う森井洋介、小林代表、金子大輝、藤原あらし
左より、同大会で全日本王座を狙う森井洋介、小林代表、金子大輝、藤原あらし

ZONE 4「原点回帰」

【日時】2016年5月1日(日)14:00開場/ 15:00本戦開始

(本戦開始前にアマチュアマッチ実施)

【会場】神奈川・横浜文化体育館

【注目カード】

◆ラウェイルール 3分5R(第7試合)

金子大輝(リバーサルジム川口REDIPS)

ニャンリンアウン(ミャンマー)

◆ラウェイルール 3分5R(第8試合)

ソーゴームドー(ミャンマー)

プロイタクシン・ノー・ナクシン(タイ/元ラジャナムダン認定スーパーウェルター級8位)

◆全日本スーパーフェザー級王座決定トーナメント準決勝&決勝 3分5R(第3、4、10試合)

〈トーナメント出場選手〉

森井洋介(ゴールデングローブ/元WBCムエタイ日本&WPMF日本フェザー級王者)

カズ☆仲村(真樹ジムオキナワ/元KING OF STRIKERSスーパーバンタム級暫定王者)

サックスワン・GTジム(タイ/GTジム)

ダイナモ☆レンジャー(契明ジム/INNOVATIONフェザー級8位)

◆バンタム級 3分5R(第9試合)

藤原あらし(バンゲリングベイ・スピリット/元WPMF世界スーパーバンタム級王者、元全日本バンタム級王者)

キム・ドンセン(韓国/THE GYM/国際格闘技連盟フェザー級王者)

など全10試合予定

【問合わせ】FIGHTING GLOBE事務局 042-711-7510 

info@f-globe.jp   http://f-globe.jp

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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