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中田JAPANの「世界に勝つ」バレー そのために追求してほしいこと

大林素子スポーツキャスター、女優
「いろんな可能性がある」2017年全日本女子メンバー

「感度のいいテンポのバレー」が大事

中田監督が選手たちに伝えた5つの強化ポイント「スピード」「正確性」「連係」「桁外れの集中力」「世界に負けない強さ」。

「スピード」については打つことだけでなく、すべてのプレーが関係してくる。私たちがやっていた日立のバレーも速かった。高いトスでブロック2枚、3枚つかれたら厳しいということはその頃から言われており、セッターの久美さんのトス自体も速かった。その頃でもオープン(トス)というのは、基本存在しなかったくらいで、二段攻撃でも速さがあった。また時間差を含めるなどで複雑にもしていた。

強いて言えば、その前のレセプションにも速さを求められていた。レセプションの角度にもこだわっていた。もちろん全部をそうしてしまうとアタッカーが間に合わないこともあるので、状況に応じて変えていた。そういう「感度のいいテンポのバレー」をすることが大事になってくる。

すべての動きでスピードを追求して

ソウルオリンピックの前の全日本の練習ではネットのアンテナより1、2メートルぐらい上、4メートルか5メートルぐらいの高さところに網をはって、「そこから上(5メートル以上)の高さのボールはなし」ということにしていた。そうなると天井が低くなった感じになり、大きく返すということがなくなるので、その分すべての動きが速くなるし予測も早くなる。速いトスを打つだけではなく相手に対しての準備も早くなるし次の動きも速くなる。そういう“すべてが速い”というバレーをやることで「スピード」を鍛え、メダルを目指した。いろんな形で速さを追求していた。

選手時代の経験が中田久美監督の武器

山田重雄という監督(モントリオール五輪金メダルを含む世界初の三冠監督、当時の日立監督)はソウルオリンピックの頃にすでにそういうことをしていた素晴らしい監督だった。「逆セッター」「全員セッター」「バックブロード」といった様々なアイデアも試して、いろんなことが生み出されていた。久美さんはそういう時代にプレーして、選手時代に当たり前でない規格外のこと、まさかのアイデアなど様々なことを経験している。それが久美さんの武器となると思う。

攻撃パターンは無限大、もっと複雑に

攻撃のシグナルサインは当時は指だけのものが30個ぐらいあり、1ローテで5~6パターンあった。それをもっと組み合わせれば、100パターン以上あったことになる。当時の選手は一人で打つ攻撃の種類が多かった。ちなみに私は、オープンからバックアタック含め(得意不得意はおいておいて、笑)20パターン以上持っていた。攻撃は「無限大」なのだから。

同じ左利きでポジション的にも同じ選手でいうと、長岡(望悠)は私とはタイプが違うがテンポがある、一方の堀川(真理)はセッターをやっていたこともあり、いろんなことができる可能性がある。左の選手に対してのパターンや形の作り方は久美さんが一番よくわかっていることなので、オポジットのポジションに左の選手を置くのか置かないのか、守りの人を使うのかなどの戦術は楽しみの一つ。

同じ左利きの堀川、オポジットに誰を置くかの戦術も楽しみの一つ(坂本清撮影)
同じ左利きの堀川、オポジットに誰を置くかの戦術も楽しみの一つ(坂本清撮影)

一流のオリンピアンになるためにメディア対応もお手本に

キャプテンの岩坂ら選手全員、メディア対応も一流になってほしい
キャプテンの岩坂ら選手全員、メディア対応も一流になってほしい

岩坂(名奈)をキャプテンに指名したことからも、久光製薬の選手が軸となって引っ張っていけば、他のチームの選手も早くなじんでいけると思う。木村(沙織)が引退し、荒木(絵里香)もまだ合流していないので、2020年に向けて誰がリーダーシップを取っていくのか。今の全日本は誰でもリーダー(的存在)になれるので、誰がそうなっていくのかすごく楽しみにしている。誰でなきゃいけないということはないので、どの選手でもよいが、日本を背負う覚悟を持った選手にリーダーシップを取ってほしいと思う。

キャプテンの岩坂は、「(会見で)アドリブがきかないのですみません」と言っていたが、今後はアドリブだらけの記者会見になる。選手として、記者やメディアに対する話し方や立ち振る舞いなども、一流のオリンピアンになっていくには必要なことでお手本にならなければいけない。ここ数年、メディアへの話し方などについては力を入れてきているが、まだ近い(親しい)から甘えてしまったりもある。知っているメディアに対して、また知らないメディアに対しても、選手としてきっちりと対応してほしいと思う。それは岩坂に限ったことではなく選手全員にOGとして伝えたい思いである。中田監督は、そのあたりにも一番厳しいと思うので、「親しき仲にも礼儀あり」で立ち振る舞いアスリートとして憧れられる存在になってほしい。そういう選手がバレーボール界からも多く出てくれることを願っている。

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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