ソニーミュージック、Spotify株を売却して得た資金をアーティストに還元へ
ソニーミュージック・エンタテインメントは、保有していたSpotify株7億6100万ドル(約840億円)相当を売却して得た資金全額を、アーティストやレーベルに還元することを明らかにした。ソニーミュージックは4月に保有するSpotify株5.71%の約半分を売却していた。
支払いを受ける権利があるのは約10万のアーティストで、約200万曲の楽曲カタログが含まれる。ソニーミュージックは個別の契約内容に関係なく、資格のある全てのアーティストとレーベルが対象になるとしている。
レーベルに送られたメールでソニーミュージックは「私たちの音楽クリエイターに対する配慮と捉えてもらえることを期待しています」と述べている。
支払いの分配方法は、ソニーミュージックが株式を保有していた時期のSpotifyの売上高とソニーミュージックの売上高から計算する独自の手法が用いられる。詳細は該当するレーベルへメールで送られた模様だ。
今回の分配は8月末までに完了を目指すとしている。また、ソニーミュージックは今後もSpotify株を売って得た資金はアーティストとレーベルに直接支払うことを明言している。
ソニーミュージックが保有するレーベルは、コロンビア・レコード、RCAレコード、エピック・レコード、ソニーミュージック・ラテン、レガシー・レコーディングスなど多岐にわたり、多数の作品を配信している。
加えて、Ultra MusicやMinistry of Soundなどダンスミュージックレーベルや、欧米のオーディション番組「The X Factor」プロデューサーのサイモン・コーウェルのレーベルSyco Musicなども傘下にある。
Spotifyから得たソニーミュージックの収入の多くは、こうしたレーベルと契約する数多くのアーティストたちによって生み出されている。
Spotify株を持ち続けて、時期が来てから売りに出し、より多くの利益を獲得しようという選択肢もできたはずだ。しかし、ソニーミュージックは会社の利益よりも、アーティストとレーベルとの関係性を優先した。これが、世界の音楽業界の現状だ。
ワーナーミュージックも同じくアーティストへ還元
5月にはワーナーミュージック・グループが保有していたSpotify株75%を売却して、約4億円相当の資金をアーティストにデジタルの売上と共に分配することを発表していました。
メジャーレコード会社では、唯一ユニバーサルミュージックがSpotify株を売却していないが、すでに売却して得た資金はアーティストに還元することを明らかにしている。
Spotifyは4月にニューヨーク証券取引所で初値165ドルで上場した。株式公開には直接上場(Direct Listing)方式を取ったため、株主は上場以降に株式を売ることが可能になった。そのために、ソニーミュージックとワーナーミュージックの資金分配が実現した。
音楽メディアBillboardがソニーミュージック・エンタテインメント・カナダから入手したレーベルへのメールを公開している。詳細はこちらで読むことができる。
今後も、メジャーレーベルが得た収入をアーティストやレーベルに還元していく流れが世界の音楽業界全体で高まることに期待したい。
Source:
Warner Music Group sells 75 percent of its Spotify shares for $400 million (Recode)
Fewer Spotify Shares Sold Than Expected in Unusual Listing (Bloomberg)