日本の低金利は正常な状態ではない
14日の日本経済新聞に「緩和への慢心、市場揺らす 円キャリー解消も結果」というタイトルの記事が掲載されていた。これはFinancial Timesの記事を日本語訳にして紹介したものである。内容については紙面を読んでほしいが、最後の箇所だけ引用させていただきたい。
「重要なのは、低金利での資金調達は本来、正常な状態ではないということだ。一般の貯蓄者であれPE界の大物であれ、ヘッジファンド関係者であれ中央銀行家であれ、投資家がこれに気づくのが早ければ早いほどよい。」
日本の低金利そのものが正常な状態でないとの指摘に対し、そんなことはない、賃金が、景気が、物価が、といったご意見もあろうが、それは正常な金利が付いているのであれば動かない理由付けになる。
しかし、日本はそもそも異常な金融政策が少なくとも10年以上行われ、その間、低金利がいかにも正常の状態にあるかのように思ってしまっているかもしれない。
この低金利はデフレ脱却という、よくわからない目的のために、政治的な配慮も手伝って、人為的に起こされていたものである。物価が低迷している間は、いかにもそれが当然にみえたかもしれない。
しかし、少なくとも2022年4月に消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比が2%を超え、それが現在まで続いている状況にあっては、低金利が正常な状態ではないことが明らかになってきた。
日銀は金融政策で長期金利まで抑え込むという、まるで戦時下でもあるかのような政策まで打ち出してきた。これが本当に正常な状態であったのか。
ただし、それを異常だと感じながらも、それに応じて市場での価格形成も行われることで、いわば市場参加者もそれに慣れてしまった。
それどころか、もう日銀は普通の金融政策には戻れないという考え方も強まってしまった。
それによって、日本の低金利が条件となる円キャリートレードによるポジションが予想以上に膨らんでしまった。
それだけでなく日銀は株式市場にも関与していたことで、実際には大きな歪みが市場で生じてしまっている可能性がある。
これに対し、日銀はもう金利は上げるべきではないとか、上げられないと認識するのではなく、その歪みを少しずつ解消させるため、日銀はむしろ淡々と正常化を進めるべきだと考え方をあらためるべきである。
それを、一般の貯蓄者であれPE界の大物であれ、ヘッジファンド関係者であれ中央銀行家であれ、投資家もそろそろ気づいてきたのではなかろうか。