Yahoo!ニュース

悲願に届かなかったナポリ、ペップも称賛の名将サッリは続投すべき?

中村大晃カルチョ・ライター
5月6日、セリエA第36節トリノ戦でのナポリのサッリ監督(写真:ロイター/アフロ)

悲願には手が届かなかった。もちろん、可能性はゼロではない。だが、信じている者はいないだろう。ナポリは絶対王者ユヴェントスから覇権を奪うには至らなかった。

セリエAが残り2節となり、2位ナポリと首位ユーヴェの勝ち点差は6ポイント。13日のローマ戦で勝ち点を挙げれば、ユーヴェの7連覇が決まる。仮にユーヴェが2連敗しても、ナポリがユーヴェを追い抜くには、現在16点差もある得失点差を挽回しなければならない。

実質的に、勝負はついたと言えるだろう。ディエゴ・マラドーナ時代の1990年以来となる28年ぶりの優勝という夢はついえた。そこで次に注目されるのが、マウリツィオ・サッリ監督の去就だ。

アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は続投を希望と話すが、随所で指揮官への不満をうかがわせている。一方、ナポリへの愛を強調するサッリ監督も、会長との微妙な関係を騒ぐ声が消えない。

ジュゼッペ・グアルディオラをも感嘆させたイタリア屈指の名将だけに、ナポリを離れた場合も引く手あまた。プレミアリーグを筆頭に、国外のビッグクラブから熱い視線が注がれている。

実際、サッリはそれだけの実績を残してきた。就任から2年連続で勝ち点80を突破し、今季も現在85ポイント。あと1勝で、勝ち点や最多勝利のクラブレコードを更新する。2連勝でリーグを締めくくれば、勝ち点91に到達。ユーヴェが支配した過去6年でも、これを上回る勝ち点は、2013-14シーズンに生まれたリーグ記録の102ポイントだけだ。

だからこそ、サッリを支持するナポリファンは多い。先日もデ・ラウレンティス会長のメディアの発言に対抗し、スタジアムでサポーターがサッリ支持を表明したばかりだ。

5月10日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙の世論調査でも、続投を望むファンは68%にのぼった。今季限りでナポリとサッリが別れを選ぶべきとしたのは、21%にとどまっている。

2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

ただ、ロレンツォ・インシーニェ、ドリース・メルテンス、ホセ・マリア・カジェホンの強力トリデンテ(3トップ)をはじめ、マラドーナに続くアイドルとなったマレク・ハムシクが君臨する中盤、強豪がこぞって関心を寄せるカリドゥ・クリバリを要する守備陣と、充実した戦力を備えながらも、ナポリはスクデットに届かなかった。

優勝するために、いわゆる「トッププレーヤー」が必要なのは疑いない。では、どういった人材が求められるのだろうか。世間が特に望んだのは、守備の国イタリアでコンスタントにゴールを量産し続けるインテルの主将マウロ・イカルディだった。同じストライカーでも、イタリア復帰が注目され、以前からナポリへの好感を隠さないマリオ・バロテッリの得票率は8%だった。

2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

一方で、サッリが退任した場合、ナポリは新たなサイクルを迎えることになる。ジョルジーニョやクリバリをはじめ、サッリの下で飛躍した選手たちの移籍が予想されるからだ。その場合、後任監督は「新たなナポリ」をつくることが求められる。

容易ではないタスクを担ううえで、ファンからふさわしいと考えられているのが、チェルシー退団が濃厚とされるアントニオ・コンテ。同じく世界的な地位を確立させているカルロ・アンチェロッティが続いた。

2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2018年5月11日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

イタリアでは、4年連続の国内2冠に迫るユーヴェのマッシミリアーノ・アッレグリ監督の去就も騒がれているところ。リーグを代表する2チームの指揮官の今後に注目したい。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事