いよいよスタートする新4K8K衛星放送の魅力とは? どうすれば見られる?
いよいよ2018年12月1日に、BS/110度CS放送で「新4K8K衛星放送」がスタートする。すでに124/128度CS放送で4K本放送「スカパー! 4K」がスタートしているが、8K放送は今回が初の本放送開始となる。4K放送についても、映像の画質を保ちながらより低容量で伝送するための圧縮伸張技術、暗部から明部までのコントラストを表現する「HDR(High Dynamic Range)」技術、色再現性を高めるための規格など、最新鋭の技術を投入したのは今回の新4K8K衛星放送が初めてだ。
新4K8K衛星放送ってなに? 4K、8Kの意味は?
新4K8K衛星放送のことについて詳しく紹介する前に、まず「4K」と「8K」とは何かについて紹介していこう。
4KはフルHDの4倍(縦横各2倍)、8Kは16倍(縦横各4倍)の解像度
4Kというのは1000を表す「K(キロ)」というキーワードによって「約4000」という意味を表している。8Kは「約8000」という意味だ。フルハイビジョン(フルHD)放送が「横1920×縦1080ピクセル」なのに対し、4Kは縦横2倍の「3840×2160ピクセル」、8Kはそのさらに2倍の「7680×4320ピクセル」となる。4K、8Kに対し、フルHDは「2K」と呼ばれることもある。
色再現性やコントラスト表現などもアップし、音質も向上
新4K衛星放送はフルHDに比べて解像度がアップしただけではない。色再現性も向上している。現行のテレビ放送では「BT.709」という規格を採用しているが、これは自然界に存在する色のうち約74.4%をカバーする規格となっている。テレビ自体の色再現性がアップしても、テレビ放送の規格が古いため再現しきれなかったのだ。しかし新4K8K衛星放送では自然界の色を約99.9%カバーする「BT.2020」という規格を採用した。再現性はテレビ受像機によって違いはあるものの、テレビ受像機側のパフォーマンスを存分に発揮できるような規格が採用されたというわけだ。
速い動きにも追従できるようになった。現行の放送では1秒間に30コマ分の映像しか表示できないが、新4K8K衛星放送では最大で120コマの表示に高速化できる。動きの速いスポーツなどもぼやけずに表現できるようになる。
映像の階調表現も、従来は約1600万階調だったのに対し、約10億階調まで一気に拡大する。色のグラデーションなどがより自然に表現できるのが魅力だ。
「HDR(High Dynamic Range)」技術を採用し、暗部から明部までの映像表現力がアップしている。従来の「SDR(Standard Dynamic Range)」と呼ばれる規格では約100nit(ニット、1平方メートルあたりの明るさを示す単位)の明るさまでしか輝度信号を記録できなかったのに対し、HDRではその100倍の約1万nitまで記録できるようになった。
従来は暗い部分が真っ黒につぶれたり、明るい部分が白飛びしていたのに対し、HDRを採用する新4K8K衛星放送では破たんせずに映像の暗部から明部まで表現できるようになった。
音質面では新8K衛星放送が最大22.2chの「MPEG-4 AAC方式」を採用。新4K衛星放送は最大5.1chの「MPEG-4 ALS(Audio Lossless Coding)方式」を採用。MPEG-4 ALSは音声信号を間引かずに収録できる「ロスレスオーディオフォーマット」なので、従来のテレビ放送に比べて音声技術もかなり進化している。
新4K衛星放送は「比較的手軽に高画質を楽しめる」のが魅力
2018年12月1日にスタートする新4K8K衛星放送は、大きく「新4K衛星放送」と「新8K衛星放送」の2つに分かれる。まずは身近な「新4K衛星放送」の魅力や特徴について紹介していきたい。
視聴には「4Kチューナー」が必要
新4K衛星放送を視聴するためには、新4K衛星放送に対応する4Kチューナーが必要になる。以前から「4Kチューナー内蔵テレビ」とうたうモデルは販売されているが、今年後半以降に発売された4Kテレビ以外の「4Kチューナー」は新4K衛星放送に対応していない(こちらは124/128度CS放送の「スカパー! 4K」に対応するチューナーを内蔵している)ので注意してほしい。
新4K衛星放送に対応するチューナーを内蔵するテレビはかなり増えてきているので、4Kテレビを持っていない人は内蔵テレビを購入するのがオススメだ。
しかしすでに4Kテレビを持っている人であれば、外付けできる4Kチューナー、もしくは4Kチューナー内蔵BDレコーダーをオススメしたい。
▼4Kチューナーを内蔵する4Kテレビ(抜粋)
・東芝 REGZA X920/Z720X/M620X/M520Xシリーズ
・シャープ AQUOS AX1/AN1/AL1シリーズ
・三菱電機 REAL RA1000/XS1000シリーズ
・ハイセンス A6800シリーズ
▼4K放送を視聴・録画できるBlu-ray Discレコーダー(抜粋)
・パナソニック「おうちクラウドディーガ DMR-SUZ2060」(実勢価格12万円前後)
・シャープ「AQUOS 4Kレコーダー 4B-C20AT3」(実勢価格12万円前後)
▼4K放送を視聴できる外付け4Kチューナー(抜粋)
・アイ・オー・データ機器「REC-ON HVT-4KBC」(実勢価格3万5000円前後)
・ピクセラ「4K Smart Tuner PIX-SMB400」(実勢価格3万円前後)
BS放送を視聴できる環境ならすぐに4K放送を楽しめる
新4K衛星放送はBS放送で全10チャンネル(うちBS日テレは2019年12月1日、WOWOWは2020年12月1日に開始予定)、110度CS放送で全8チャンネルと、合計18チャンネルのラインアップになるが、実はそのうちの6チャンネル分が現行のBS放送と同じ帯域で放送されるのだ。そのため現行のBS放送を視聴できる世帯の場合、4Kテレビと4Kチューナーさえあれば一部の4K放送を視聴できるというわけだ。
ただし全チャンネルを視聴したい場合は、アンテナなどの設置が必要になる。
全チャンネルを視聴するには「SHマーク」のアンテナ設置が必要
BS/110度CSアンテナを設置していたり、ケーブルテレビと契約していてBS放送を視聴できる環境であれば、4Kチューナー内蔵テレビもしくは4Kテレビ+4Kチューナーで前述のように6チャンネル(現状ではBS日テレを除く5チャンネル)を視聴できる。しかしそれ以外の4K放送まで存分に楽しみたいのであれば、新4K衛星放送に対応するアンテナの設置や、分波器、分配器などの導入が必要になる。
従来のBS/110度CSアンテナと設置する方向は全く同じなのだが、従来の放送が「右旋」(進行方向に向かって右回りの「右旋円偏波」)なのに対し、新4K衛星放送の多くは「左旋」(進行方向に向かって左回りの「左旋円偏波」)のため、右旋と左旋の両方に対応するアンテナが必要になるというわけだ。さらにそれらを宅内で伝送するための分波器や分配器、さらには必要に応じてブースターなども導入する必要がある。
それだけではどれを買えばいいのか分からないと思うので、新4K8K衛星放送に対応するアンテナなどの機器には「SHマーク(スーパーハイビジョン受信マーク)」が付いている。新4K衛星放送を視聴したい、ゆくゆくは8K衛星放送も見たいという場合は、SHマーク付きの機器を購入すればいいということ覚えておいてほしい。
8K衛星放送は現状でシャープ「AQUOS 8K」だけが視聴可能
新4K衛星放送は4Kテレビに4Kチューナーを接続する状況も含めて、かなり多くの家庭で手軽に視聴できるようになる。しかし一方で次世代テレビの最高位として期待される「8Kテレビ」は、まだ一般庶民には手が届きにくい存在だ。
現状ではシャープが2018年11月17日に発売した8Kチューナー内蔵テレビ「AQUOS 8K AX1シリーズ」3機種だけが新4K8K衛星放送すべてのチャンネルを視聴できる(チューナー非搭載の8K対応テレビも発売されたが、別途8Kチューナーが必要になる)。
新8K衛星放送は「NHK BS 8K」の1チャンネルのみで、放送も朝10時から夜10時20分までに限られているので、その点にも注意が必要だ。
AQUOS 8K AX1シリーズは8Kチューナー1基に加えて4Kチューナー2基を内蔵しており、別売の専用ハードディスクを接続することで8K放送を録画したり、4K放送を視聴しながら裏番組で4K放送を録画するといったことも可能だ。
現状では最も安いモデルで80万円前後とかなり高額だし、やはり8Kもの超高画質を楽しむのであればできるだけ大画面にしたいもの。60インチでももちろん高画質を十分体験できるのだが、コストパフォーマンスを考えると70インチモデルを選ぶことをオススメしたい。