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現在、過去、未来をビジュアライズ。ソニーが新しい”ウェアラブル”の世界をプレビュー

本田雅一フリーランスジャーナリスト
ソニーのウェアラブルデバイス第一弾「Core」を披露する鈴木EVP

スマートフォンやクラウドが社会基盤として浸透しつつある中、それらをインフラとして活用する方法論として、今年はウェアラブルデバイスが流行するというのは、おそらく多くの専門家の一致した見解だ。

昨年、話題をさらった眼鏡型スマートデバイスのGoogle Glass、FitbitやNikeband、UPといった活動量計など、スマートフォンとクラウドを中心に、様々なデバイスが取り巻いている。

こうしたデジタルデバイスを使いこなすユーザーの環境が変化する中、ソニーは“現在、過去、未来を可視化する”、新しいコンセプトを打ち出した。ユーザーが生活の中でこなす様々な行動、イベントを記録し、それをライフスタイルのクオリティ向上に活用しようというのである。

日々の行動・活動を蓄積、可視化

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ソニーが描こうとしているコンセプトは、スマートフォンが持つGPS、カメラなどから得られる情報、ライフログ系の加速度センサー等を搭載するウェアラブルデバイスから収集する活動履歴をアプリ に集約し、画面上でビジュアライズ。自分の行動を振り返り、今必要な情報を見せた上で、さらに未来に必要となる参考情報も提示する新しいコンセプト(もしくはユーザーエクスペリエンス)だ。

米ラスベガスで開催中の家電展示会「International CES 2014」において、ソニー本社EVPでソニー・モバイル・コミュニケーションズ社長の鈴木国正氏はXperiaの新製品を発表する前に 、さまざまなセンサーに取り囲まれ、自ら情報発信を行い、またエンターテインメントコンテンツをモバイル環境でも楽しむ現代のデジタル製品ユーザーに対し、気の利いた 新しい付加価値を提供するアプリケーションと、それに対応する最初の製品を発表した。

SmartWearで集めた情報をビジュアライズするLifelogアプリ
SmartWearで集めた情報をビジュアライズするLifelogアプリ

鈴木氏はソニーが提案するウェアラブルデバイスとサービスを取り囲む世界観を「SmartWear Experience」という名前で呼んだ。SmartWearの世界とつながるデバイスの種類が増えていくことで、アプリケーションがエンドユーザーに提供する情報の適応領域や品質を高めていくことができる。今回のInternational CESで紹介された製品「Core」はSmartWearに接続される最初の製品となる。

Coreはディスプレイを持たない小さな活動量計だ。日本語で”核”を意味する名称を持つこの製品は、Xperiaとペアリングして利用する丸く平たい物体。リストバンドやクリップなど、さまざまな形態で身につけることができる、新しい形の活動量計だ。fitbitやJawbone UPといったデバイスに機能面は近い。

しかし、ソニーが訴求しているのは、単体ハードウェアとしてのCoreではない。ソニーが提案するサービスレイヤとLifelogアプリを通じて提供されるユーザー体験の方だ。

Lifelogアプリが動作している様子
Lifelogアプリが動作している様子

LifelogアプリはCoreから収集する情報だけでなく、今後発売する新しいデバイス 、スマートフォンを通じて発信する様々な生活の記録をスマートフォンおよびデータを保管するクラウド側のサービスに蓄積していく。蓄積する履歴情報が活動量計からだけの情報であれば、どのぐらい歩き、走ったか、といった情報だけを蓄積し、生活習慣に対するアドバイスを行うだけに過ぎない。

しかし、どんな音楽を楽しみ、どんな映像に興味を持ち、どのような写真を誰と共有し、どんな場所でチェックインしたか。スマートフォンの利用履歴やSmartWearコンセプトに対応したデバイスから集まる、”ライフ”、”エンターテインメント”、”ソーシャルコミュニケーション”のすべての履歴を時間軸に沿って記録することで、さらに一歩踏み込んだ情報を利用者に提供できるとソニーは考えているようだ。

そして蓄積された履歴情報を元に、過去の行動について”可視化”。そして過去の履歴やスマートフォンで管理する情報から現在の行動をサポートして、情報を先回りに提供し、さらに生活のパターンや行動予定などから明日の行動を補足する情報を提供。未知の音楽、映像といったエンターテインメントとのエンゲージメントも意識するのだ。

ソニーはこの”現在、過去、未来”を可視化するアプリを活用し、、多様なSmartWearデバイスを開発するとともに、ネットワークにつながるソニー製品とも結びつけていく。さらに他社(たとえばスポーツメーカーや自動車メーカーの作るウェアラブル、センサーデバイスなど)をLifelogアプリに対応させるための開発キットも提供する。

ソニーならではの価値はとは?

生活から娯楽、ソーシャルまで、多様なカテゴリの履歴にまたがって情報を分析し、フィードバックする機能は、たとえばGoogleがAndroidに蓄積される情報や検索履歴などを元に提供するGoogle Now!といったサービスが存在する。また、健康、あるいはスポーツがテーマならば、それぞれに存在感を示しているメーカーが個別に製品を提供する方がシックリ来るだろう。

このCESでもアディダスグループのリーボックが、新しいウェアラブルデバイスを発表。メルセデスベンツブランドの車とコミュニケーションする腕時計などもある。では何がソニーの強みなのだろうか?

様々な色のリストバンドが用意される
様々な色のリストバンドが用意される

鈴木氏は「モーション(体の動き、活動)だけでなく、エモーション(感情)を揺り動かす出来事”を記録」している点が異なると話す。写真、音楽、映像。ソーシャルでのコミュニケーションを含め、利用者にとって特別な瞬間をライフログ化し、さらに将来に向けたリコメンドを行う点が、SmartWearのユニークな点だと話した。

ソニーはMusic Unlimitedなどエンターテインメントコンテンツ、Play Memoriesなどのネットワークサービスも提供している。これらSony Entertainment Networkの利用履歴なども活用することで、他社にはない”未来予測”を含むサービスを提供できる可能性がある。コンセプトビデオの最後には「明日は雨が降るので、傘を忘れずに」と、さらりとスマートフォンがオファーする様子が映し出された。

ウェアラブルプラットフォームを目指すSmartWare

まだ雲をつかむような話ではあるが、”Lifelog”に集まる情報が多様になるほど、また詳細になるほどに、より生活の品質が高まるような価値が提供できる。これは筆者の想像だが、Xperiaが持つワインのラベルを判別する機能を応用すれば、いつどのようなワインを嗜んだかを記録していき、そこにスコアリングの仕組みを組み込めば、未知のお好みワインを教えてくれる、なんてこともできるかおしれない。ソニーはSmartWearを多様なデバイスが集まるプラットフォームに育てたいと考えているようだ。

ペンダントタイプのアクセサリ
ペンダントタイプのアクセサリ

なお、Lifelogアプリは(現時点において)Android用アプリケーションとしてデモンストレーションされていた。現時点でXperia以外のスマートフォン、あるいはiOSデバイスでも利用できるか否かについては明らかではない。

さて、ここまでやるのであれば、すべての情報をクラウド側のサービスに収集し、分析する方がエンドユーザーにフィードバックできる内容もより豊富になるのでは?と思う読者もいることだろう。ソニーもその点を意識してコンセプト開発は進めているようだ。他のWebサービスと接続していくことで、さらに多くの情報を収集し、活かしていける可能性も出てくる。

もっとも、今回の発表はここまで。Lifelogに接続する他社デバイスやプラグインなどパートナーシップに関する詳細、クラウド側でのビッグデータ分析の可能性や、SmartWearの今後の展開、将来像など、不明な部分は多い。ソニーによると、SmartWearの詳細は2月下旬にスペイン・バルセロナで開催されるMobile World Congress 2014で発表される。

フリーランスジャーナリスト

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、モバイル、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジとインターネットで結ばれたデジタルライフと、関連する技術、企業、市場動向について解説および品質評価を行っている。夜間飛行・東洋経済オンラインでメルマガ「ネット・IT直球レポート」を発行。近著に「蒲田 初音鮨物語」

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