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15連戦の初戦を白星スタート。ベガルタ仙台、2位浮上!

川端康生フリーライター
この日も黄色く染まったスタンド(筆者撮影)

 まだ負けていない。

 中断前まで2勝2分だったベガルタ仙台は、再開初戦のV・ファーレン長崎戦でも勝利を飾り、開幕から5戦負けなし。順位もサンフレッチェ広島に次ぐ、2位に浮上した。

よく勝てたな

「よく勝てたな、という試合だった。我々が目指しているサッカーからはかけ離れた内容だった」

 渡辺監督がそう振り返った通り、立ち上がりから長崎の勢いを受ける形になった。

 相手の布陣変更(普段の3トップではなく2トップ)は「予想していた。どう食いついてくるのか見ていた」というが、そんな周到さがかえってリズムを失わせることになったかもしれない。

 守備ラインからの意欲的な攻撃の組み立ては見られず、長崎対策として組み替えた3トップの配置も機能せず、結果、セーフティなパスがミスになり、ボールロスト。シンプルに前線にボールを運ぶ長崎のサッカーに巻き込まれることになった。

 それでも先制点はきっちり奪った。

 31分、右サイドから古林がゴール前に入れたクロスは、ややオーバー。しかし、相手DFのクリアがもたついたところを西村が拾って左足で決めた。

 慌てて打たずに、2タッチした西村のフィニッシュでの落ち着きが見事だった。長崎守備陣の余裕のなさとは対照的だった。長崎が混乱していたのは、その直前、波状攻撃を浴びていたからだ。それまでの長崎ペースからモメンタムを引き戻し、攻撃の圧力を強めていた時間帯だったからこそ生まれたゴールだった。

 結果的にこれが決勝点になった。

 もっとも先制した後も、主導権を握り続けたわけではない。特に後半はむしろ長崎のゲームだったと言っていい。

「内容が悪くてもシュートを打たれてなければいいが、決定的な場面で……結果的にゼロで終わったというだけで」

 ちなみに後半のシュート数は仙台=1に対して、長崎=7。しかも、渡辺監督は相手を慮ってコメントを濁したが、ゼロで終われたのは(有り体に言えば)相手のシュートミスに助けられたおかげだった。 

「これまでなかったような崩されたシーンが多かった。それでも勝ったからOKとしていいのか……」

ほぼほぼ完ぺき

 言い換えれば、長崎にとってはポジティブなゲームだった。

90分トータルで相手の2倍のシュート(長崎=12、仙台=6)を放ち、しかもその中には超がつくほどの決定的な得点機もあったのだから、試合後の高木監督が「ほぼほぼ完ぺき」と2度口にしたのもうなずける。

 この試合で試したファンマと鈴木の2トップも機能。DFラインとの駆け引きで鈴木が抜け出し、その背後から澤田が仕掛けるドリブルも効果的だった。ちょっとファウルの多さが気になるが、それはチームのスタイル。勝つことこそできなかったが、手応えを得られた戦いだった。

「残念なゲームだったが、これを続けて勝ち点3を」

 お預けとなったJ1初勝利もそう遠くない、そう感じさせる試合だった。

7週間で15試合

 開幕から5戦負けなし(3勝2分)とした仙台は、昨季から続いているホームでの無敗記録も6試合に伸ばした。渡辺監督の継続指導の下、3-4-3も浸透。そこに新戦力が融合し、若手も台頭し……といい流れに乗っている。

 内容的には不満なこの一戦で、勝利と勝ち点3を手にできたのもその証。すべての勝利を「快勝」で飾ることはできないから、こういう勝ち点の積み上げが上位進出の条件なのだ。

 実はこの長崎戦からワールドカップによるインターバルまで、リーグ戦とカップ戦合わせて15連戦。仙台のカレンダーには、5月20日まで7週間にわたり、週2試合ずつ試合予定が書き込まれている。

 その初っ端、それも昇格してきたばかりの相手との一戦は、何が何でも勝っておきたい試合だったのだ。

 落とせないゲームをきっちりものにして、いざ! 待ち受ける14試合に挑む。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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