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上島竜兵さん突然の訃報 報道を見てつらい人の心の対処法

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
写真はイメージです。(写真:イメージマート)

お笑いタレントでダチョウ倶楽部のメンバーの上島竜兵さんが亡くなったことが分かりました。自殺とみられるとも報じられショックを受けたという声を聞きます。最近は俳優の渡辺裕之さんがなくなったこともあり、働き盛りで元気に活躍していると思っていた方たちの突然の自殺ということで、実際に面識はなくてもテレビで活動を見て身近に感じていた方には衝撃になります。身近に感じていた人の死に接した時、どのように心を保ち癒すかについて考えます。

まず気をつけたい「ネガティブな同一化」

実際に面識がなくても身近に感じている人の自死の場合、気がかりなのが「ネガティブな同一化」です。上島さんの訃報報道を見て自分もゆううつになったという方はこうしたネガティブな同一化に陥っているリスクがあります。身近な方の死により、身体的不調をきたしたり、自分も死にたくなったりすることが多くなることがあります。これがネガティブな同一化です。

特に同じような年代の方にとって衝撃は大きく、コロナ禍の影響が続いたなかで過ごしてきた方は「上島さんのように元気そうに活躍している人が急に亡くなるということは、自分などはうまくいくわけがない」というように感じてネガティブな同一化を起こしてしまうリスクがあります。

どう対処すればいい?

まずは「言語化」をお勧めします。言葉にしてつらい気持ちや悲しい思いを表現することが大事な癒しへの一歩になります。「実際には知らないけれど身近に感じている人がなくなるとつらいね」というように、つらさを表現することは大事です。同じ思いをしている方は多いと思います。ただ「何かあったのか」「コロナ禍が影響したのか」など憶測や詮索をすると、さらに気持ちが落ち込む原因にもなります。

「言語化」が苦手な人はどう対処?

上島さんと同年代の男性の方はつらくても我慢して人に助けを求めたりつらいと言えない傾向が大きいといえます。つらくても平気な顔をして振舞ったり、つらさを紛らわすためにアルコールの力を借りたりすることも多いものです。

また年代は異なっても、ご自分には気持ちを抑え込む傾向があると思う方は身体を動かすことも大事です。言語化が難しい、つまり言葉で表現するのが苦手な方は、身体を動かすことが感情の表現になるからです。

5月の季節に気をつけたい自律神経の調節

ロシアのウクライナへの侵攻や、知床の遊覧船の事故など暗いニュースが多い昨今、しかも気温も定まらず身体が気候の変化に適応しにくい季節です。また連休明けということもあり、自律神経の調整が難しい時期です。自律神経の調整がうまくいかないと体調が定まらず身体の不調により心が落ち込むことが多いので体調管理が特に重要です。この時期に心をケアするために次のような対策があります。

1.深呼吸とストレッチを朝、昼、夜の決まった時間に5~6分ずつ行う

2.朝窓を開けて太陽の光を浴びる

3.散歩したり運動したりする時間を毎日20分ほど作る

4.公園など自然と触れ合う時間を定期的に作る

特に太陽の光のバイオレットライトは脳代謝に影響し、うつ予防の効果があると報告されています。晴れ間を利用して戸外を散歩することなどをお勧めします。

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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