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エンタメ誌の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる(2021年1~3月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが。(写真:show999/イメージマート)

部数公開誌は4誌のみのまま…部数現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

まずは最新値にあたる2021年の1~3月期分と、そしてその直前期にあたる2020年10~12月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2020年10~12月期と2021年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2020年10~12月期と2021年1~3月期)

最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、このポジションは前期と変わりなし。他の雑誌と比べると群を抜いて部数が多い「Vジャンプ」の立ち位置は、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」と同じようだ。

2019年10~12月期では「声優アニメディア」「メガミマガジン」「アニメディア」の3誌の部数が一度に非公開化された。いずれも学研プラス発行の雑誌で、現状でも電子版だけでなく紙媒体版でも定期的に刊行が行われており、休刊(準備)のために部数が非公開化されたわけではない。恐らくは発売元の判断で非公開化が実施されたのだろう。

似たような現象は以前「週刊アスキー」「電撃PlayStation」「ニュータイプ」でも起きており、やはり発売元の判断であった可能性がある。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務は無いものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は残念と評せざるを得ない。また、突然の非公開化は他の雑誌でよく生じる「非公開化から休刊」パターンをイメージさせる。

ともあれ現在印刷証明付き部数を提示しているゲーム・エンタメ系雑誌は、今期でも4誌。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無なのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

しかしながら類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうにないのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「週刊ファミ通」「電撃Nintendo」「Nintendo DREAM」「MC☆あくしず」などが挙げられるが、いずれも印刷証明付き部数は非公開。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が考慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2021年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2021年1~3月期)

前期比でプラスを示したのは2誌「声優グランプリ」「PASH!」、双方とも誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた上げ幅を示している。一方マイナスを示したのは「Vジャンプ」と「アニメージュ」はマイナスで、「アニメージュ」は誤差領域を超えた下げ幅。

「Vジャンプ」は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にある。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らないパターンが続いている。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式として定着している。しかし部数動向を見るに、その方程式が必勝とは言い難い状況なのは否定できない。とりあえず15万部が底のような部数動向だったが、今期ではその底すら突き破る形となった。

なお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供のため、電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減少しているとの解釈は難しい。販売スタイルは今でも原則として紙媒体の雑誌のみである。

「声優グランプリ」は前期比プラス18.1%と大幅な部数アップ。

↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)

該当期に発売されたのは3誌。別冊付録として2021年4月号では「声優名鑑2021 男性編」、5月号では「声優名鑑2021 女性編」があり、これが人気を博したようだ。部数動向を見直すと、ここ数年は毎年1~3月期に部数が大きくアップする傾向があり、あるいは毎年定番となった声優名鑑別冊付録が貢献している可能性はある。あるいはこの別冊付録がついている号のみ購入する人もいるのだろう。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2021年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2021年1~3月期)

プラス誌は「PASH!」「声優グランプリ」「アニメージュ」の3誌で、前2誌が誤差領域超え。マイナスは「Vジャンプ」のみで誤差領域を超えたマイナス。

「PASH!」は非常に大きなプラスを示している。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

「PASH!」は特集記事や付録による部数への影響が大きく、部数変動が他誌と比べると大きくなる傾向がある。例えば2016年1~3月期は「おそ松さん」特需、2016年10~12月期は「ユーリ!!! on ICE」特需によるもの。今期が前年同期比で大きなプラスを示したのは、2021年3月号で「呪術廻戦」の特集が展開されたのが大きな要因だと思われる。あるいは2月号の「刀剣乱舞-ONLINE-」の特集も影響しているかもしれない。いずれもきらびやかな表紙がファンの心をくすぐったに違いない。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

1年前には3誌がまとめて部数非公開化に踏み切り、その状態が今期も続いているため、「三大アニメ誌」の動向の確認などが不可能となり、記事構成の大幅縮小の状態が継続している。部数の非公開化は発売元の出版社、あるいは編集部による判断である以上仕方がないが、褒められる話ではないのは言うまでもない。部数の非公開化という判断もまた、雑誌動向にかかわる情報となるからだ。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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