第1号スポーツブラは男性用スポーツ用品を縫合。42年後のスポーツ用品メーカーは豊富なサイズでアピール
バストの大きい女性ほど、運動から遠ざかってしまうという論文が発表された。
今年3月に発行された「ジャーナル・オブ・サイエンス・アンド・メディシン・イン・スポーツ」に掲載されている。(論文のリンクと筆者の過去記事はこちら)
運動すると胸が揺れ、痛みを感じることもある。それだけでなく、揺れている胸を見られているのではないか、という他人の視線が気になって、運動の頻度が低くなることもあるようだ。
健康的な生活には適度に運動するほうが良い。しかし、バストの大きい人にとっては、胸の大きさが運動を遠ざける要因になっている。
最も現実的な解決策は、自分の身体にあったスポーツブラを選ぶことだ。
2017年8月14日のニューヨーク・ポスト紙によると、米国でスポーツブラが誕生したのは1977年。バーモント大学職員だったリサ・リンダールさんは、日常的に男性たちとジョギングを楽しんでいた。しかし、ブラジャーの肩ひもがずれ落ちたり、背中に食い込んだりしてくることに不満を持っていた。
そこで、リンダールさんは、デザイナーのポリー・スミスさんとともに、ジョギングに適したブラジャーを作ろうとした。けれども、すんなりとはいかなかった。
暗礁に乗り上げていたとき、リンダールさんの夫が冗談半分で、ジョックストラップ(男性がスポーツ時に股間に着用するサポーター)を胸に着用する、というアイデアを出した。しかし、ジョークでは終わらず、もしかして、というひらめきにつながった。ジョックストラップをふたつ縫い合わせて、スポーツブラにしてみたのだ。これが米国のスポーツブラ第1号の原型である。
それから40年あまりがたった。
スポーツ用品メーカーのナイキは3月11日に、2019年春・夏モデルのスポーツブラを発表した。テーマは包括的であることを意味する「インクルーシブ」である。
誰もが自分にあったスポーツブラを選べるように、というコンセプトで、幅広いサイズと品ぞろえをしている。プレスリリースによると、57種類、サイズはG44インチまで用意したという。米国サイズのG44は、日本のサイズに換算すると、Hカップでアンダーが100センチに相当する。胸の大きさゆえに運動を苦にしていた人にも朗報かもしれない。
筆者がナイキのホームページで確認したところ、値段の範囲は定価30ドル(約3300円)から75ドル(約8250円)まで。誰もが買える値段かと言えば、そうとは言い切れない。それでも、一般的なブラジャーの値段と比べると妥当な価格帯だろう。
ちなみに42年前に発売された最初のスポーツブラは、前述したニューヨーク・ポストの記事によると、16ドルだったという。
Tシャツだけで運動できる男性に比べれば、コストがかかる。だったら、誰かが彼女にプレゼントすればいいのではないか。
米国で30年間、スポーツブラの研究をしてきたラジーン・ローソン博士は「プレゼントしたいのならば、ギフトカードにするべき」と答えている。50段階のサイズから身体に合うものを選ぶのは、本人にしかできない、ということだ。