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YouTubeが楽曲クレジットを表示開始。公式MV、カバー曲にも対応

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
YouTube App(写真:ロイター/アフロ)

新しい定額制音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」を始めることを発表したYouTubeは、動画コンテンツに対しても音楽好きフレンドリーな情報を加えようとしています。

YouTubeは動画に楽曲のクレジットを追加することを発表しました。今後はYouTube上でアーティストと楽曲タイトルだけでなく、フィーチャリングアーティスト、作曲家、レーベル、音楽出版社に関する情報が表示されていきます。

Expanded artist, songwriter, label and publisher credits on YouTube

さらに、楽曲クレジットは、公式チャンネルに投稿されたMVだけでなく、ファンが作成したカバー動画やダンス動画などCGM動画でも「Music in this Video」と概要欄で表示されます。

また、クレジットと合わせて公式動画へのリンクが自動挿入されます。ユーザーは楽曲情報を遡りアーティスト情報を簡単に探し出せ、アーティストやレーベルはユーザー投稿動画から公式動画への誘導が簡単になります。

Spotify、Tidal、YouTubeがクレジット表記でリード

2018年2月にSpotifyが楽曲クレジットの表示をデスクトップアプリで始めると発表。作曲家やプロデューサー情報をリスナー向けに公開し、アーティストと共に楽曲制作で重要な役割を果たしている作曲家の露出拡大に向けた動きを見せています。

さらに2017年11月にTidalは、音楽ストリーミングの中では業界で最も早く楽曲クレジットの開示を始めました。

Tidalの場合、SpotifyやYouTubeのさらに上をいく内容の情報で、プロデューサーや作曲家、レーベル、音楽出版社はもちろん、エンジニア、アレンジャー、参加ミュージシャン、スタジオ名、使用したサンプル元情報まで記す密度の濃い楽曲情報を提供します。

YouTubeのクレジット表記も、Spotifyの流れを受けたものと同様だが、レーベル情報や音楽出版社情報まで加えた点はSpotifyとは異なります。

CDやアナログレコードの時代とは異なり、デジタル音楽サービスでは、作曲家やプロデューサーのクレジットは一般的に表示されない習慣が通例となっていました。

音楽業界で最も重要な存在となった音楽ストリーミングの世界は、熾烈な競争を繰り広げ、成長のための革新が求められています。

音楽業界のビジネスにとって、クレジット表示は小さな変化に過ぎないかもしれませんし、クレジットの表示だけでは広告収益もロイヤリティ料も発生しません。

ですが、これまでデジタルサービスでは見ることができなかったクレジットを見られるようになったリスナーにとってこれは大きな変化です。

SpotifyやYouTubeの作曲家クレジットの開示は、音楽ストリーミングサービスが単に楽曲配信し再生回数を増やすプラットフォームではなく、音楽好きにとっての密度の濃い音楽体験へとつながると期待されます。

こうした正確な音楽情報やクレジットは、音楽ストリーミングサービスのアプリ上だけでなく、スマートスピーカーでの音声情報としての提供できる可能性も今後は広がります。

楽曲やクリエイターへの関心を高めることはより深い音楽体験を作ることは、音楽ストリーミングサービスの継続的な利用価値を高めると考えることができるが、同時に音楽ストリーミング時代において全てのクリエイターのクレジット表記を含む情報開示と業界への貢献を示す取り組みは今後も世界中で議論されるべきトピックです。

ソース

Music on YouTube will now include expanded artist credits and link to official video (9to5 Google)

Expanded artist, songwriter, label and publisher credits on YouTube (YouTube for Artists)

Tidal Begins Adding Liner Notes to Albums and Songs(Billboard)

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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