直近でも4.0%のみ…二人以上世帯の電子マネー利用実情
少額の支払いでは特に重宝する電子マネー。具体的にどこまで使われているのか。二人以上世帯(原則的に夫婦世帯)の実情をさまざまな視点で、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果から確認する。
今回確認するのは、二人以上世帯の消費支出(税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)における、支出=購入形態別の金額。区分としては「現金」「クレジットカード、月賦、掛け買い、電子マネー(ポストペイ)」「電子マネー(プリペイド)」の3通りがある。これらのうちどの方式でどれだけ支払ったかを確認し、電子マネーの浸透度合いを見ていく。なおデータとしては前世紀末の1999年分から精査するが、2004年以前は普及状態がまだ十分でなかったことから、電子マネーは品目化されていない。
消費支出全体は減少傾向にあるが、これは主に消費そのものが低水準(消費量そのものの低下、世帯構成人数の減少(子供がおらず夫婦のみの世帯の場合が多い)、持家率が高いため家賃負担が少ないなど)となりがちな高齢者世帯、特に年金生活をしている世帯の全体に占める比率が増加していることによるもの。一方でクレジットカードなどの利用額は増加中。結果として消費支出に占めるクレジットカードなどの利用率は増加の傾向にある。電子マネーは2009年から値があるが、金額は直近の2019年ではわずかに1万1122円。消費支出全体に占める比率は4.0%でしかない。
この「4.0%」はあくまでも世帯主年齢を問わず、二人以上世帯全体の値。世帯主の年齢が若年から中年の方が金額・割合ともに高いのでは、との推測が成り立つ。そこで世帯主の年齢階層別にその動向を確認したのが次のグラフ。
金額の上では電子マネー(プリペイド)の利用金額は意外にも60代が最も多く1万4036円、次いで50代の1万3965円、40代の1万1559円と続く。そして消費支出全体額に占める比率でも60代がもっとも高い値で4.8%、あとは次いで50代の4.5%、40代の4.2%。電子マネー(プリペイド)はむしろ高齢者の方がよく利用しているのが実情ではある。バスや鉄道などで多用しているのだろうか。
高齢者はクレジットカード、月賦、掛け買いを好まないのか、現金払いの割合が高くなるのも確認できる。クレジットカード、月賦、掛け買いは30代が一番多用していることと合わせ、留意すべき傾向だろう。あるいは対象商品、サービスの傾向的に、現金以外の方法を用いる買い物をあまりしなくなるのかもしれない。
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※全国家計構造調査
家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。
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