コロナ禍でオンライン取材が当たり前になった
2020年はついに一度も海外に出張しなかった。20年ぶりかもしれない。新型コロナの感染力がけた違いに強いことがわかり、呼吸困難に陥る重症化にもなりやすいという厄介なウイルスの感染拡大したせいだ。世界各地で入国制限やロックダウンをしている。人から人へと唾液感染だから移りやすい。
3月下旬あたりからテレワーク(WFH: Work from Home)になり、オフィスまで電車に乗って出かける必要がなくなった。それでも筆者のようなジャーナリストや編集者は、ITエンジニアと並んでWFHで活動しやすい立場にはある。図1のように在宅勤務導入率では上位にある職種だ。
テレワークと言っても職種によっては在宅勤務できない仕事も多い。特に、資材や購買、受付・秘書といった職種は在宅勤務の導入率は低い。製造業のエンジニアや実験を行う工学のエンジニアは設備のある工場や実験室に通わなければ設備を使えない。このため、在宅勤務はしづらい。しかし、論文を書いたり読んだりする時はオフィスに行く必要はない。
昔、原稿用紙に向かって長い記事(特集や解説)を書く時は、自宅で執筆していたことがよくあった。まさにテレワークだった。米国のように編集者やジャーナリストは昔から自宅をオフィスにしていたケースが多い。ジャーナリストは、東海岸、中央、西海岸に分かれてそれぞれがオフィスを持ち、自分の守備範囲をカバーしていた。1980年代くらいまでは電話取材が多く、パソコン通信、インターネット取材へと進化してきた。ファックスで取材していた期間は短かった。
そして今はZoomやWebEx、ON24、Teamsなど会議ツールを使った取材へと変わった。今年、急激にこういったインターネットツールを使った取材インタビューや記者会見が増えた。記者会見、企業のセミナー、国際会議、展示会など、多くのイベントがオンラインに代わった。逆にこうなると、今まではめったに行けなかった海外での展示会や国際会議も簡単に参加できるようになる。もちろん出張費は要らない。悩みは時差だけだ。それも北米以外の取材なら、時差はそれほど苦ではない。欧州の朝はこちらの夕方であり、真夜中にはならないことが多い。
オンライン会議が今年ほど普及していない昨年までは、国際電話取材もそれなりにあったが、時差を考慮してくれていた。しかしオンラインのリアルタイムでは、特に米国取材は時差が厄介だ。米国の朝はこちらの真夜中になる。夜遅いと眠くて起きていられない。
それでもオンラインツールの便利なことは、後になってオンデマンドで視聴できることだ。リアルタイムで視聴できなくても(その場合は質問できないが)、後でゆっくり視聴できることは、内容を理解しやすいことにつながる。
結局、大抵のことはオンラインツールで取材できてしまうのである。資料のないインタビューも時間を配慮してもらえば、記事を生むことはできる。今年、一度も海外出張はしなかったが、海外取材はむしろ増えた。
毎年1月の始め、米国ネバダ州ラスベガスで開かれる民生用IT関係のCES(図2)は、完全オンラインになる。取材したければ、アポイントメントもオンライン上で取れる仕組みを導入している。実際に出向いてさまざまなエンジニアやジャーナリストとディスカッションできるような臨場感と情報量と比べると確かにオンラインは落ちるが、出張予算もないジャーナリストやエンジニアは低コストで参加できるというメリットは大きい。
また国内での学会や業界活動での講演は全てオンラインに代わったが、ここでもメリットがないわけではない。東京で開催しても地方にいる人は出張費がかからないから参加しやすい。またリアルの場だと気後れして質問が出にくいが、オンラインでしかも事前に講演資料を配布していれば、多数質問が出て活発な議論ができるようになる。
ただし、デメリットとして、参加者同士の議論がまだしにくいという点がある。参加者と講師との間のディスカッションやQ&Aに限られる。これもツールの改良で、参加者同士のディスカッションもいずれできるようになるようだ。オンライン会議は意外と使え、情報量は多い。