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浅田真央さんショー開幕へ、ファンへのサプライズ、姉との「初めての仕事」も

野口美恵スポーツライター
開幕にむけ練習に励む真央さん@bassy

 浅田真央さんが座長として率いるアイスショーの第三弾となる『Everlasting33』の開幕が6月2日に迫ってきた。引退後の『浅田真央サンクスツアー』、そして昨年の『Beyond』と、進化を遂げてきた真央さんが、さらなる自信を持って届けるショー。今回のタイトルに込めた意味は「永遠の愛」だという。インタビューを通して、真央さんがいま伝えたい「愛」を、改めて探る。

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母への愛、姉妹の愛「私の家族の愛がたくさん入っています」

 ショーを通して浅田さんが伝えるのは「さまざまなカタチの愛」だ。その中でも、真央さんが迷わずに「私にとって一番大切な愛」と語ったのは、母・匡子さんへの想い。

「スケートに出会わせてくれたのも、支えてくれたのも、母のおかげ。絶対に忘れることのない愛です」

5月12日の『母の日』には、自身のInstagramに母へのメッセージを投稿。一輪のバラに思いを込めて演じる様子や、母・匡子さんとの写真を投稿した。まだ幼い真央さんの手を握り、匡子さんは優しくほほえむ。真央さんは、

「永遠の愛。いつも見守ってくれてありがとう。また逢える日まで私は母のように強く生きる」

とコメント。ショーでの演目を予感させる、母への愛が溢れるメッセージだった。

 姉・舞との“姉妹の愛”も、実現した。真央さんは昨年のアイスショー『BEYOND』の公演後、姉とともにアルゼンチンと北米へインプットの旅に出た。ニューヨークやラスベガスで様々なエンターテインメントを観覧し、自らのショーの方向性を見極めたという真央さん。中でも、貴重な経験となったのは、アルゼンチンでの日々だ。

「もともとは、姉の舞がアルゼンチンにタンゴ留学をして『本場のタンゴは本当に素晴らしいから、真央も見たほうがいい!』と。いつか行きたいと思っていたので、やっと実現しました。ブエノスアイレスの街は素晴らしくて、市場に行って買い物をして、街を歩いて人々に触れることもできました」

現地では、さまざまな種類のタンゴの舞台を観た。

「夜になると皆が集まって、生演奏でアルゼンチンタンゴを踊るというミロンガというバーのような場所もありました。またロホタンゴというとてもレベルの高い舞台にも感動して…。やはり今まで映像で見ていたタンゴとは違って、現地の人だからこそ醸し出せる空気感があり、本物のタンゴを間近で見られたことは貴重な時間になりました」

インプットの旅から戻ると、プログラム作りでも舞さんに協力を求めた。

「姉は、今回初めて振付師として力になってくれて、7曲近いプログラムをお願いしました。私のソロは、自分と姉でアイデアを出し合いながら作ったので姉妹愛が入っていますし、スケートの愛や、私の人生や、今の思いなど、すべてが詰まっているプログラムに仕上がりました。姉が『社交ダンスをしてきた経験が、今回の仕事に生きた』と言ってくれて、本当に良かったなと思いました」

母や姉のことを語るときの真央さんは、柔らかい笑顔を見せる。

「今回のショーには、母への愛、姉妹の愛。家族の愛がたくさん入っていますね」

練習を重ねる真央さんと柴田嶺さん@bassy
練習を重ねる真央さんと柴田嶺さん@bassy

シブタニ兄妹が振り付け、アイスダンスのエッセンスも

“友への愛”も実現した。平昌五輪銅メダリストのアイスダンサーのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニの2人に、プログラムを依頼したのだ。

「今回のプログラムを作り始めるときに、『前回のBEYONDを超えるためには、自分たちの知識や引き出しだけでなく、誰かにお願いしたいね』と話し合っていました。ちょうどそのときに、マイアから、『こんど日本に行くから会おうね』と連絡があって、『これはチャンスだ!』って。本当にタイミングが良かったのです」

シブタニ兄妹は両親が日本人で、真央さんとは競技者時代から友情を深めてきた。昨年の『BEYOND』もわざわざ来日して観覧してくれた仲だ。

「プログラムを依頼したら、『もちろんできるよ』って言ってくれて、実現しました。スケート仲間の愛があったからこそ出来たプログラムです。アイスダンスの要素を取り入れ、2人で演じるプログラムをお願いしました」

『BEYON』でも人気があった柴田嶺さんとの共演プログラム。前回は、ペアスケーターの競技歴がある柴田さんの経験を活かして、リフトやスロージャンプなどペアに近いショーナンバーだった。今回は、アイスダンスの技術や滑りを取り入れたのだ。

「やはりシングルとダンスでは滑り方や組み方が全く違うので、最初は大変でした。アイスダンスの演技をするというよりは、私達のパフォ―マンスのレベルを上げて、表現の幅を広げるために、アイスダンスの要素を取り入れた、というイメージです。二人の距離感や、目線の交わし方、私達にしか出せない一体感があると思います。前回以上に、大人の表現を出来たら良いなと思っています」

ショーに向けて練習を重ねるメンバーたち@bassy
ショーに向けて練習を重ねるメンバーたち@bassy

ファンに演目をリクエスト「初めて聞く曲も調べて、採用しました」

 “ファンへの愛”を体現する曲もある。実は昨年10月、自身のSNSを通じて、演目のリクエストを募った。

「何千通もの応募をいただいたのです! リクエストの中には、私の知らない曲もあったので、1つ1つ自分で調べました。そのなかで、たった2票しか入っておらず、私も初めて聞いたのですがとても素敵な曲があったので、それも演目に選んでいます。他にも皆さんのリクエストを反映しました」

ファンへのサプライズともいえる選曲だ。滑る演目は、30曲以上。それをノンストップで送り届ける。

「今回はすべて生演奏。皆さんに馴染みのある曲も多く、舞台としても、音楽としても楽しんでもらえると思います。『BEYOND』はライブ感が強いショーだったと思うのですが、今回はクラシックのコンサートやオペラを観に行くようなイメージで作り上げています」

メンバーらと映像をみながらブラッシュアップ@bassy
メンバーらと映像をみながらブラッシュアップ@bassy

練習を通して、仲間への愛も再確認した。

「今回、全体での練習は1月に始まりましたが、メンバーは自分たちでいろいろ試行錯誤しながらブラッシュアップしています。鏡を見たり、自分たちでビデオを撮ったり、自身に責任を持って練習しているのが伝わってきて、本当に信頼できる仲間たち。チームメンバー愛は、さらに高まっています」

自分の練習の合間にも、メンバー達が演技する姿を見守り、拍手を送る。座長でありながら、仲間同士の目線でもお互いを励ましあう。

「永遠にスケートを愛する気持ちは、私も、メンバーも、ファンの皆さんも、みんな一緒だと思います。そう思うと、間違いなくこの『Everlasting』というタイトルにふさわしいショーになると確信しています」

スケート愛は、ショーを行う立川ステージガーデンの近隣エリアに建設中の『MAOリンク』にも繋がっていく。

「自分のリンクが出来るという意味では、スケートに人生を捧げる覚悟が出来ました。後輩スケーターに知識を伝えていきたい、育てたいという思いも芽生えてきました。滑る立場だけでなく、スケートへの恩返しは、これからもずっと続いていきます」

そして「もちろん」といって続ける。

「まずはショーに向けて全力で。いろんな愛を経験して、みんなから大切にされてきたぶん、今、それを恩返ししているという気持ちです。それぞれの先生、家族、仲間、ファンの方、みなさんにいろいろな愛がありました。このショーを通して、その感謝をさまざまなカタチの愛で伝えます」

インタビューの日も、「このあとタップダンスの練習があるので」と笑顔でリンクを後にした真央さん。開幕までの1秒1秒を大切に、最後の最後まで演技をブラッシュアップし、全力の愛を届ける。

Everlasting33

6月2日からのショーでは、永遠の愛を届ける真央さん@baasy
6月2日からのショーでは、永遠の愛を届ける真央さん@baasy

スポーツライター

元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝、20年冬季マスターゲームズ・シルバー部門11位。

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