Yahoo!ニュース

“誤球”隠ぺいの韓国ユン・イナが2年1カ月ぶりの優勝!でも残る冷たい視線「選手に歓迎されていない?」

金明昱スポーツライター
韓国女子ツアー2勝目を手にしたユン・イナ(写真・KLPGA)

 韓国女子ゴルフツアーの「済州サムダスマスターズ」(8月1~4日)で、21歳のユン・イナが通算14アンダーで今季初優勝を果たした。

 ユン・イナといえば、2022年の「韓国女子オープン」で“誤球”を隠した不正行為が発覚し、3年のツアー出場停止処分を言い渡されていた選手。その後、社会貢献活動などが認められ、処分が1年半に短縮。今季4月のトーナメントで1年8カ月ぶりの復帰を果たしていた。その後もブランクを感じさせないプレーで、14試合でトップ10入りが7回。そのうち2位が3回で、「勝つのは時間の問題」と言われていた中で手にした優勝だった。それに今季の年間ポイントランキングと賞金ランキングも2位に浮上。平均ストロークも69.8864で1位となりタイトル獲得の可能性も大いに出てきた。

 ちなみにユン・イナは2022年7月の「エバーコラーゲンクイーンズクラウン」以来、ツアー2勝目。優勝を決めるパットを決めた瞬間には、同僚たち数人から祝福のウォーターシャワーを浴びる姿があった。そのシーンを見る限りは、多くの選手たちに“誤球”の事件も受け入れられたのだと感じていた。しかし、韓国メディアの報道を見てみると、どうやらそんな雰囲気でもないようだ。

「優勝はうれしくも様々な感情が交差」

 ユン・イナは優勝後、「今回の優勝は大きな意味があり、うれしくも様々な感情が交差しています」と語り涙を流していたという。「プレゼントのような優勝が訪れ、とても幸せです。2年前の失敗と私のよくない行動で多くの方たちを失望させてしまいました。多くのファンのおかげで復帰し、その後に初優勝して様々な感情が渦巻いています」と語っていた。

 また、「あの事件以来、3カ月は家を出なかったです。両親と共に過ごす時間がたくさんあったのですが、『人生は塞翁が馬(さいおうがうま)』と教えてくれました。辛い時間を過ごしながら悩み、これからどのように生きるべきか考えました。またゴルフをするかも分からなかった」とも振り返った。

祝福のウォーターシャワーを浴びるユン・イナ(写真・KLPGA)
祝福のウォーターシャワーを浴びるユン・イナ(写真・KLPGA)

 様々な感情が沸き起こるのも無理もない。スポーツ紙「イルガン(日刊)スポーツ」は「ユン・イナはフィールドに“復帰”したが、多くの同僚たちからは“歓迎”されなかった。処分の軽減を否定的な視線で見る選手がほとんどだった。それでもユン・イナが18番ホールで優勝パットを入れると、ユ・ヘラン、パン・シンシルなど数人の選手がウォーターシャワーを浴びせて祝福した」と伝えている。

「周りの選手も少しずつあいさつしてくれるように」

 つまり、ユン・イナの優勝を歓迎できない人たちも多かったと言うことだ。実際にそうした否定的な雰囲気があるのも想像できる。誤球を隠してプレーしたという重い事実は消せないし、彼女に対する風向きが変わるのはだいぶ先の話になるのかもしれない。殺伐とした雰囲気がまだ残っていることは、ユン・イナ自身が痛いほどよく分かっている。

「私が復帰したての頃よりも、周りの選手たちは少しずつあいさつをしてくれるようになり、『お疲れさま』、『がんばったね』と激励してくれるようになった。これからも選手たちにより明るくあいさつし、近づいていけるように努力していきたい」

 豪快なドライバーの飛距離(約250ヤード)を武器にプレーで魅せられるスター選手候補なのは間違いない。信頼回復にはまだまだ時間がかかるが、今後も成績と結果でファンを楽しませ、選手や関係者に認められていくしか道はない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事