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元3階級王者リナレスが番狂わせを起こす? ヘイニー戦を現地メディア関係者が予想

杉浦大介スポーツライター
Photo By Ed Mulholland/Matchroom

5月29日 ネバダ州ラスベガス

マンダレイベイ・リゾート&カジノ

WBC世界ライト級タイトル戦

王者

デビン・ヘイニー(アメリカ/22歳/25戦全勝(15KO))

12回戦

3階級制覇王者

ホルヘ・リナレス(ベネズエラ=帝拳/35歳/46勝(28KO)5敗

 今週末、ラスベガスで行われる中量級の好カードはどんな展開、結果になるのか。無敗の新鋭ヘイニーが下馬評通りに3度目の防衛を飾り、新時代到来を感じさせるか。3階級を制覇してきたリナレスがベテランの意地を見せ、5度目の世界王座戴冠を果たすか。

 今回、マンダレイベイ・リゾート&カジノに集まった3人のメディア、関係者に3つの質問をぶつけてみた。この3-on-3に参加してくれたパネリストの言葉からも、非常に予想の難しい一戦であるという事実が見えてくる。

パネリスト

キース・アイデック(BoxingScene.comのライター、コラムニスト)

マルコス・ビレガス(Fight Hub TVの創始者、インタヴュアー。FOXのボクシング中継で非公式ジャッジを務める)

クリス・アルジェリ(元WBO世界スーパーライト級王者。依然として現役選手だが、ESPNの解説者も務める)

1. リナレスが勝つためにすべきことは

アイデック:特に序盤ラウンド、リナレスはヘイニーにプレッシャーをかける必要がある。ヘイニーは距離を詰められるのを嫌う傾向があるように思う。リナレスはヘイニーが嫌がることをやり、リズムを崩そうとするべき。ライト級でのリナレスがどの程度のパンチャーなのかは判断が難しいが、早い段階で相手にペースを渡さず、なおかつダメージを与えられるようなパンチが打てれば面白くなる。逆に言えば、序盤でヘイニーがリズムを掴んでしまった場合、リナレスにとっては厳しい試合になるだろう。

ビレガス:これまでのリナレスは試合ごとに波があった。今回のヘイニー戦に向け、心身両面で集中し、加齢による衰えも感じられないコンディションを作ってきた場合、私はリナレスにチャンスがあると思っている。リナレスの方が経験豊富で、ハンドスピード、クイックネス、パワーでもヘイニーを上回っている。もちろんヘイニーのスタイルはトリッキーで、攻略は簡単ではなく、ディフェンス、若さの利もある。それでもリナレスが100%の状態だったなら、番狂わせを起こしても私はまったく驚かない。

アルジェリ:リナレスの最大の武器はハンドスピードとコンビネーションだ。コンビネーションパンチに関しては現役屈指だと思うし、それをフルラウンドを通じて操るだけのスタミナも持っている。経験の面でもヘイニーを大きく上回っているのだから、それを生かして賢明に戦わなければいけない。距離を取って、ジャブを使い、フットワークを重視するヘイニーを相手にそれほどチャンスはないかもしれないが、機会があったら一気に攻勢に出るべき。最終的には距離の取り合いになり、リナレスはその高速コンビネーションの射程距離に立つことが重要になる。

元世界王者のクリス・アルジェリはリナレスの高速連打を高く評価する。 撮影・杉浦大介
元世界王者のクリス・アルジェリはリナレスの高速連打を高く評価する。 撮影・杉浦大介

2. ヘイニーが勝つためにすべきことは

アイデック:ジャブを使いながら、体重を後ろに残して戦うのがヘイニーの本来のボクシング。快適にアウトボクシングをしているときのヘイニーを崩すのは容易ではない。今戦に関し、未知数の要素があるとすれば、リナレスをKOしなければいけないという重圧をヘイニーがどのくらい感じているかだ。過去2戦、アルフレド・サンティアゴ(ドミニカ共和国)、ユーリオルキス・ガンボア(キューバ)をKOできずに批判もされた。試合前のヘイニーは「リナレスをKOする」と断言はしていないが、敗戦はすべてKO負けのリナレスに対し、判定勝ちを目標にはしていないだろう。それが良いことかどうかはわからないが、最近の試合よりも積極的に攻めて出る可能性はあると見ている。

ビレガス:ディフェンスに気を配り、リングを動き回り、ジャブを多用するいつものヘイニーらしいボクシングをすべきだ。リナレスを空回りさせ、ミスを誘うのが勝利パターン。リナレスがアグレッシブになり過ぎた場合、ヘイニーにカウンターを打ち込むチャンスが生まれる。そういう展開になれば、深刻なダメージを与えるか、決定的なポイントを奪えるはずだ。

アルジェリ:リナレスが得意とするコンビネーションが届かない位置に身を置き続けなければいけない。ジャブを重視し、距離を取り、リナレスが両足をセットして連打できないように心がけるべき。ミドルレンジ以内まで距離が詰まればリナレスは危険な選手になる。ペースを落とし、どちらかといえばアクションの少ない戦いにすることでヘイニーは勝利に近づくだろう。

3. 試合予想は

アイデック:ヘイニーはKOを頭に置いて戦うとは思うが、結局は判定にもつれ込むと私は考えている。特に中盤頃まではリナレスも良いボクシングをして、好試合になるかもしれない。ただ、最終的にはより若く、現時点でより優れたボクサーのヘイニーが明白な判定勝ちを飾るだろう。

ビレガス:予想の難しい試合だが、先ほども話した通り、リナレスが完調だった場合には大接戦になる。判定が2-1に割れるような内容になっても不思議はない。ヘイニーの判定勝ちが最も安全な予想ではあるが、リナレスにも勝機は十分にあると思う。

アルジェリ:リナレスがアンダードックなのはわかっているが、番狂わせの大きなチャンスがあると考えている。その一方で、リナレスという過去最強の敵を迎え、ヘイニーがこれまでに見せてこなかった新たな姿を見せてくれるんじゃないかという期待感もある。ヘイニーが次の段階までステップアップするか、それとも停滞してしまうか。予想を断言するのは難しいが、ここではヘイニーの判定勝ちとしておきたい。リナレスはまだ判定負けの経験はないが、ヘイニーはサイズを生かしてそれを成し遂げる初めての選手になるのではないか。

アルジェリ同様、ビレガス記者もリナレスに勝機ありと見ている 撮影・杉浦大介
アルジェリ同様、ビレガス記者もリナレスに勝機ありと見ている 撮影・杉浦大介

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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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