注目の相模原、まずは初戦突破――100年目の高校野球・神奈川大会
今夏、神奈川大会の話題の一つ。公立校の甲子園出場なるか――そんな期待の中心にいるのが県立相模原である。
とにかくその成長ぶりが目覚ましい。
昨春16強、昨夏8強、昨秋4強、今春準V。
直線的なステップアップは、予想点線を延ばしていけば、当然、頂点に辿り着く。注目が集まるのも当然である。
起点はやはり佐相監督だろう。
もともとは中学野球の指導者だったと聞く。しかし、川崎北を強打でのし上がらせ(準決勝まで進めた)、3年前に相模原に着任。そこから成長曲線、いや直線が急角度で引かれ始めた。
初戦はやや硬かったか。初回に1点を奪い、3回にも追加点。しかし、そこから試合は拮抗した。付き放すことができなかったのは、対した百合ヶ丘が踏み止まったからだ。
同じ県立高校。でもノーシード。それでも山口投手のボールには立ち上がりから威力があった。投球のテンポもいいから、鍛えられた守備も弾むように動いた。
何より、百合ヶ丘には「踏み止まれるだけの力」を備わっていた。
たとえば4回裏、付き放されるそうなピンチに直面した。相模原にとっては勝負をつけてしまえる好機。第三者からみれば、ここで追加点が入ったら、そのままワンサイドになるかも……そんな瀬戸際で、強打球が三塁線を襲った。
だが、ライン際を抜けて、試合を決定付けそうな白球を、横っ飛びした奥村のグラブはしっかりとつかんだ。立ち上がって、ベースを踏んで、ファーストへ。ダブルプレー。ピンチを脱し、まさしく踏み止まった。
あの一瞬の、あのワンプレー。
そこにユニホームの胸を汚した土と、スパイクにこびりついた泥の総量が証明されていた。ベンチへ駆け戻る選手たちの勢いと、それぞれの全身から発する勢いがの掛け算で膨らんでいく様子に、チームが重ねてきた練習の時間と密度も証明されていた。
勝負はちょっとした差――プレーの差や、個人の差や、チームとしての差で分かれる。その足し算の結果として、4対0は妥当な試合だった。
けれど、「ちょっとした差」が掛け算となって、大きな結果の差になりかねない高校野球において、ちょっとした差を、ちょっとした差のままで踏ん張り切った力は、大きな声で評価したいと思う。
百合ヶ丘は、そんな力をちゃんと培ってきたチームだった。
そして相模原。期待され、注目を集め、第1シードで臨む初めての大会。
宮崎投手、尻上がりに調子を上げ、ストレートとスライダーで、2安打完封。打撃も爆発とはいかなかったが、8安打。7人がこの夏最初のヒットを放ち、「夏」の緊張感から解放された。
とにかく初戦通過。本領を発揮するのはこれからか。その「これから」で、成長直線をさらに伸ばすことが、頂点に辿りつくためには必要に見えた。