ラブホ運営会社が手がけた一般ホテルが凄すぎる5つの理由と掲載NGのワケ
ラブホテルは“レジャーホテル”へ
筆者のホテル評論家としてのテリトリーは、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、旅館、民泊など宿泊施設全般にわたるが、いわゆる“ラブホテル”もその範疇だ。業界では「レジャーホテル」という呼称が定着しており本稿でもそれに倣うが、男女が特定の目的のために利用する施設と一般的には理解されている。正確な定義を確認するためには、その独特なスタイルから法律的な解説も必要であるが本稿では割愛する。
レジャーホテルの取材を進めていくと、デラックスホテルでいま人気のサービスが実はレジャーホテル発祥であったり、旅館で新たにスタートしたサービスがレジャーホテル先行だったりとつくづくその奥深さを実感する。そのような経験から業態にかかわらず、また色眼鏡で見ることのない横断的な評論を貫くことで、宿泊施設のサービスがより深く理解できるのではないかという考えからのテリトリーだ。
他方、レジャーホテルの情報が世間一般に流布されることはほとんどない。たとえば深夜のテレビで性にまつわる部分から興味本位にとりあげられることはあっても、基本的には一般メディアではタブーだ。ウェブメディアでも検索NGワード的な観点から記事化が難しい場合もある。実際、一般の方からも時々耳に入る声は一昔前のイメージで語られたものが多い。
しかし、これはレジャーホテル業界にも原因の一端がある。いまとなっては、業界誌への連載を持つなど業界に関わるようになり容易となったが、筆者自身、当初は取材をしようにもホームページにメールアドレスの記載もなく、連絡先すらわからないケースが多く匿名性の高さを感じたことが思い起こされる。
秘匿性の高いレジャーホテル
このように、レジャーホテルの情報は業態が持つイメージ同様、秘匿されている感覚は未だにある。匿名・秘匿といえば、レジャーホテルジャーナルの世界(といっても専門誌を除けば筆者くらいかと思われるが)でタブーなことのひとつに、レジャーホテル運営会社が手がける一般ホテルの情報がある。すなわち、元々はレジャーホテルの運営のみをしていた会社が手がけた一般ホテルといった内容だ。
こうしたケースでは、一般ホテルのみの取材や情報発信はウェルカムと言われるが「あの人気ホテルの運営会社が実はレジャーホテルもやっている」というようなレジャーホテルと絡めた情報の発信は完全NGで、過去OKだったというケースはひとつもない。レジャーホテルは関連会社で一般ホテルの法人とは別というケースもあるが、とにかく情報の取り扱いの厳しさはひとしお。一般の方でも知っている人は当たり前といった情報なのだろうが、とにかくメディアからの発信は全てNGだ。ここでは深く触れないが風俗業としてみられることで事業融資の可否にかかわるなど、公的な問題もあるという。
このような厳格なる情報の峻別は、イメージを売るホテルビジネスであるだけに当然と言えば当然である。それにつけてもレジャーホテルの運営会社が手がけた一般のホテルや旅館が大人気施設となったケースが続出しているだけに、レジャーホテル発祥の凄い一般ホテルというアプローチで紹介できないことはつくづく残念である。
かような事情もあり、このテーマの記事はいつどこで書こうか、否、封印すべきか、ここ数年悩ましさを感じていたが、最近また同様のケースで凄いホテルに出合い記事化を考えた。もちろんレジャーホテル運営会社が手がけた施設というアプローチで紹介したいと考え、掲載の許諾を懇願したがやはりNGとのこと。実例を紹介できないのは大変残念かつ申し訳ないが、こうしたケースで思いつくホテルは宿泊予約サイトの口コミで最低でも4.5以上、中には4.7などという高スコア施設ばかり。
レジャーホテル運営会社の手がける一般ホテルが人気を博する5つの理由
そこで、なぜレジャーホテル運営会社の手がける一般ホテルが人気を博するのかについて分析してみることにする。レジャーホテルの特徴と合わせてみてみよう。
1,ことさらプライバシーが重要視される
レジャーホテルならずともゲストのプライバシーを確保することは宿泊業にとって基本中の基本であるが、ことさらレジャーホテルにおいてはそのハードルが上がる。ゲスト同士が会わないような動線、目線など、一般のホテルに採り入れたらさぞかし快適なホテルになるのではないかという要素である。
2,突発的利用が多い
一般のホテルであれば予約をするのは当然だろうが、レジャーホテルではウォークインが基本(中には予約を受け付ける施設もある)。全く出向く予定はなかったが、急遽利用するといった突発的なチェックインも多い。すなわち宿泊にしろ休憩にしろステイの準備を全くしていない前提で、ホテル側は客室のアメニティなどを準備しておく必要がある。実は外資系ラグジュアリーホテルよりもアメニティが充実しているレジャーホテルといったケースも珍しくない。
3,客室ステイに主眼が置かれる
一般のホテルのようなパブリックスペースという概念がない業態だけに、いかに客室で快適に過ごせるかといった点に注力されている。結局、客室にコストを注ぐことができるので、広い客室面積、充実した設備などはレジャーホテル一般の特色でもある。何より防音に優れていることも重要だ。また食事で言えば、持ち込み用の冷蔵庫、各室の電子レンジ(最近ビジネスホテルで散見するようになった)といった備品は当然であるし、ルームサービスの充実度が高いことも特徴といえる。オーダーはテレビの画面上でリクエストするが、その他、追加備品もテレビで注文できるのは当たり前だ(これも最近の一般ホテルで増えてきたサービス)。また、コンセントの位置からエアコンの風が当たるポジションへの配慮等々、一般のホテルではなかなか見られない秀逸なポイントは枚挙に暇が無い。
4,女性目線に秀でている
昨今、一般ホテルが人気となるポイントに女性目線の追求があるが、レジャーホテルでは以前より常識とされてきた部分だ。最近、ビジネスホテルや旅館で見かけるようになったお気に入りをセレクトしピックアップ出来るシャンプーやアメニティのバイキングは、レジャーホテル発祥でかなり以前から提供されてきたサービス。また、ドライヤー類(ヘアアイロンなど)が2種類・3種類というのはレジャーホテルではデフォルトになっている。
5,ゲストと接することが出来ない
レジャーホテルのスタッフに取材をすると「我々もできればお客様にお目にかかって接客し感謝を述べたい、感想・意見も聞きたい」という。クレーム・コンプレをその場で直接受けたいというのは理解できる。しかし、それは許されない業態だ。そこで不満を持ち帰られないよう、前述したアメニティのように先手を打つべく様々な手を尽くす傾向がレジャーホテルにはある。あったらいいなを予測したサービス形態はおもてなしの精神にも通じる。
こうした発想で、レジャーホテル運営をしている会社が一から一般のホテルを造り上げようとすれば、痒いところまで手が届くホテルが誕生することは理にかなっているといえるだろう。
昨今、ホテルの業態はクロスオーバーしており多様なスタイルの施設が誕生している。レジャーホテルでも一般ホテル化の傾向が見られる施設が増え、ビジネス利用、女子会利用などでも人気の施設が目立っている。都市部では駅から近い立地に加え、繁閑で料金変動がほぼみられないことや一般の予約サイトに掲載されない施設も多く、2020年東京オリンピックのホテル不足の一部受け皿になるではないかと筆者は思料している。
みなさんが快適に過ごしているあのホテルには、もしかしたらレジャーホテルの発想が採り入れられているのかもしれない。
※記事中の写真と一般ホテルを手がけるレジャーホテル運営会社の施設とは何ら関係はありません