公安警察が「北のマツタケ」に執念を燃やした理由
北朝鮮産マツタケの不正輸入事件で、外為法違反などに問われた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)議長の次男らに対し、京都地裁は10日、執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。
今年春から続いていた公安警察による「マツタケ狩り」騒動も、これで一区切りついた形だ。
マスコミはこの事件を大きく報じ、北朝鮮も「拉致問題の日朝協議がどうなんっても知らんぞ!」と脅しをかけてきている。
しかし、騙されてはいけない。北朝鮮は送金能力の落ちた朝鮮総連を大して重視しておらず、大げさに怒って見せるのは「ゴネ得」を狙っているからに過ぎない。
日本政府による貿易全面禁止の経済制裁も相まって、事件があろうが無かろうが日本から得られる利益は減っているのだから、北朝鮮は今や、この程度の事件で「圧力」を感じはしないのだ。
一部で、「『サザエさん』の磯野さん家(=北朝鮮)を困らせるために三河屋のサブちゃん(=総連)をしょっ引いたって仕方ない」と言われる所以である。
かつては公安警察も、マツタケの取引ぐらいで大騒ぎはしなかった。「総連を潰す時には軍事情報や先端科学技術に対するスパイ事件でやる」というのが彼らの理想だったそうで、事実、そうした事件をいくつも摘発している。
流れが変わったのは第1次安倍政権下の2007年1月、警察庁トップが、「北朝鮮が困る事件の摘発こそが拉致問題を解決に近づける」などという、ピンボケ指示を下してからだとされる。
おかげで捜査の現場は、上層部――すなわち警察庁キャリアから「手柄の大量生産」を強いられ、真相をえぐるための余力を殺がれてしまったというわけだ。
その結果と言うべきか、朝鮮総連が借金のカタに取られかけた本部ビルを買い戻す際、巨額の資金をどのように調達したかという重要案件は、ほとんど解明されていない。
この問題を巡っては、朝鮮総連と公安は今後も駆け引きを続けるだろうが、何らかの形で決着がつくまでには数年を要するだろう。