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清真学園、7回コールドも水戸商を苦しめる――100回記念大会・茨城

川端康生フリーライター
水戸市民球場(著者撮影)

清真学園を讃えたい

 まずは清真学園の健闘を讃えたい。

 結果は17対3(7回コールド)だが、途中までは競っていた。5回を終えた時点では2対4。正直に言えば、意外な展開だった。初回、3本のヒットと2つの盗塁で早々に2点を失ったときには予想できなかった。

 しかし、生井沢投手は120キロ台の速球と80キロ台のスローボールを丁寧に投げ続け、少なくとも5回までは水戸商打線を惑わせ続けた。打っても初回、左中間に糸を引く2点タイムリーを放った。

 3番の有川もパワーがあった。6回、川澄投手のスピードボールをレフトオーバーに打ち返したバッティングは見事だった。その有川をホームに迎え入れた和田の三遊間への一打。チームの意地を感じさせた。

 苦しんでいたのは水戸商の方だったのではないか。部員数15人。それでもAシードを苦しめるだけの技術と工夫と集中力が清真学園にはあった。

古豪復活へ

 それでも水戸商業、そんな健闘をねじ伏せる力があった。6回2アウトから4点をもぎとってしまった打力はさすがだった。

 ツーランホームランを放った4番・小林俊。生井沢投手の高めに浮いた失投を見逃さなかった。それをライトスタンドまで運べるのはやはり別格。超高校級だった。

 この試合ではこの本塁打を含む4安打。サイズはあるわけではないが、強いインパクトから強い打球を放てる。スピードにも自信があるのだろう。盗塁も再三試みた(内野安打では一塁にヘッドスライディングもみせた)。走攻守にわたって魅力的なプレーぶりだった。

 7回、四球を足がかりにして大爆発。一挙9点を奪い、コールド勝ちに持っていけるあたりはやっぱり格の違いというしかない。それでも戦いぶりはどこか大味で、おかげで試合途中まで接戦を強いられることになった。

 タレントは豊富だ。投手陣も大津、川澄、坂本とこの日繰り出した3人はいずれも伸びのある球質。特に川澄は前評判通り、威力あるボールを投げ込み、スコアボードに140キロ台半ばも掲示。スタンドを沸かせた。

 実力は疑いようもない。あとはそんな魅力的な個性を勝利にどう結びつけていくか。

 春4強。甲子園を視界にとらえて戦う100回目の夏である。

 82回大会以来遠ざかっている茨城の頂点へ。本当の戦いはこれからだ。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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