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【京都市北区】明治時代の起業家が建てたレンガ造りの素敵な洋館。10/13〜15は秋のイベント開催

まーちコーディネーター/ライター(京都市)

こんにちは。まーちです。ここ数日は秋雨が続き、朝晩ぐっと寒くなりました。
今日は京都市北区の白梅町にある、国の登録有形文化財でもあるレンガ造の素敵な洋館をご紹介します。

最寄駅の嵐電「北野白梅町」駅から西大路通を下り、西大路一条の交差点へ。

角にファミリーマートがある一条通を西へ曲がり、道なりに50mほど歩くと「衣笠会館」に到着です。北野白梅町駅から徒歩3分ほどの住宅街にひっそりと建っています。

入口には「衣笠会館」「公益財団法人衣笠繊維研究所」の看板があり、奥にレンガ造の洋館が見えます。見学時間は平日11-15時で「見学希望者は入口のインターフォンでお知らせください」とのことで、早速インターフォンを押して訪問しました。

門からお庭へ進むと、奥にレンガ造の立派な洋館が見えてきました。(外観のみ撮影許可をいただきました。)
玄関の上にはバルコニーのような部分があり、各部屋のアーチ窓も可愛らしいです。
ここだけ見ると明治時代にタイムスリップしたような建物!

中に入ると、スタッフの方が出迎えてくださいます。他の見学者がいらっしゃらなかったので、資料と共に衣笠会館についてじっくりご説明いただきました。

起業家 藤村岩次郎の自邸だった衣笠会館

衣笠会館は、1905年(明治38年)京都の起業家 藤村岩次郎氏の自邸として建築。藤村岩次郎氏は1888年に藤村織布を起業。「綿ネル」という表面を起毛加工した綿布の将来性に着目。やがて「京都綿ネル株式会社」にて紡績、製織、起毛加工、染色の一貫生産を始め、日本を代表する会社へと成長。その成功を経て、藤村岩次郎氏は、衣笠村にあった、因幡藩:池田光政の屋敷跡地に約3500坪の自邸を構えます。
1911年頃には自邸近くにさらに約4200坪を購入し賃貸住宅地「衣笠園」を開設。この衣笠園もひとつの契機となり、自然環境に恵まれた田園風景の広がる衣笠村に、山口華楊、堂本印象、木島櫻谷らの画家、映画監督の牧野省三なども居住し、「絵描き村」が作られました。

(衣笠会館のパンフレットより抜粋)

現在では、洋館やお庭など敷地の一部が残っているのみですが、元々は3500坪大豪邸であったことに驚きました。かつては母屋やビリヤード場、お庭に池もあったとのことで「藤村氏は綿ネルで大成功されたんだろうな」と、繊維業が栄えていた当時を想像します。
スタッフさんのご説明では、立命館大学そばに美術館がある堂本印象や木島櫻谷などの名前も出てきました。藤村氏が手掛けた不動産事業をきっかけに、多くの芸術家たちが衣笠に集まり「絵描き村」となったというお話も大変興味深かったです。

説明の後に、スタッフさんに館内をご案内いただきました。
建物はいくつも部屋があり、外観から想像していたよりもずっと広く、高い天井は開放感があります。暖炉は部屋ごとに異なる装飾がされていたり、茶室があったり、大正時代には生活のため洋室の一部を和室へ改装するなど、個人の自邸だったからこそ、当時の日々の暮らしを感じることができました。

レンガの長手だけの段、小口だけの段が一段おきに積まれているのがイギリス積み。
レンガの長手だけの段、小口だけの段が一段おきに積まれているのがイギリス積み。

レンガ造りの建物ではイギリス積み、フランス積みなど幾つか種類がありますが、衣笠会館はイギリス積みで作られています。
一般的にイギリス積みは強度が高く、使うレンガが少なくて済むので経済的と言われているそうです。


また、館内の展示コーナーには、藤村氏の関わった繊維業に関係する蚕や絹糸に関わる研究資料、機織り機等も多数展示されています。
近くにあるURの花園団地にキャンパスがあった京都工芸繊維大学(昭和40年代に松ヶ崎へ移転)とも養蚕や絹の研究などで繋がりが深いそうで、当時は京都工芸繊維大学の学生さんたちが集まるサロンのような場所だったそうです。

1905年に建てられた衣笠会館は、現在は国の登録有形文化財に登録されています。100年以上の歴史ある洋館が北野白梅町の住宅街にあり、そして無料で見学できるとは今回まで知りませんでした。
歴史好きな方、建物好きな方に、ぜひ訪れていただきたいスポットです。

伺った際はお庭に芙蓉が咲いていました。
伺った際はお庭に芙蓉が咲いていました。

10月13日〜15日は秋のイベント開催

衣笠会館は通常は平日11-15時の間に見学可能(木曜日休館)ですが、今週末10/13、14、15日は秋の公開イベントが開催されます。


「絹織物再発見!見て、感じて、体験」と題して、行松啓子氏作品展(座繰り生糸、染織品)などの展示や、14日(月)午後には織物の原理を学びながらストラップを作るワークショップ(有料・事前予約制)も開催されます。公開イベントの期間中は衣笠会館の見学も可能です。
イベント詳細は衣笠会館の公式サイトをご確認くださいね。


皆さんもこの機会に歴史ある洋館をじっくり見学してみてはいかがでしょうか。

衣笠会館(旧藤村岩次郎邸 洋館)
住所:京都市北区北野下白梅町29
Tel:075-461-5949
見学時間:平日11〜15時(木曜日は休館)
見学料:無料
公式サイト

@kinugasakaikan

衣笠会館は公益財団法人衣笠繊維研究所が所有管理されています。

コーディネーター/ライター(京都市)

京都生まれ。2014年から京都観光サイト運営に携わり京都観光や地域情報発信を始める。10年間の東京生活を経て京都へUターン。現在は京都暮らしを満喫しつつ「京都コーディネーター」として京都観光事業、京都暮らしへのアドバイスなどを行なっています。京都ならではのスポット、グルメ、伝統工芸、アートなど、京都の街の魅力を発信しています。

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