Yahoo!ニュース

【ハッケン!土浦まち歩き】城下町・東崎周辺その3~境内に土俵も!鷲神社は力自慢の男たちの聖地!?

コイケケイコ土浦在住ライター(土浦市)

鷲神社(わしじんじゃ、鷲宮とも呼ばれます)は東崎分の鎮守で、土浦市に創建された神社の中でも古い歴史を誇っています。かつては土浦八景にも選定された土浦の名所のひとつ。境内のそこかしこには気になるスポットが点在しています。

「土浦八景」のひとつとして絵葉書にもなった古社

東崎分の東崎町。その名の通り「東の先(崎)」にある町には、氏神様が鎮座しています。

「鷲神社」は、1564年(永禄7年)創建で、旧土浦市街にある神社の中ではかなり古くより存在していることでも知られています。

社殿は長い参道のその先に。すっきりとした佇まいで心が洗われるようです。

「鷲神社は、その景観の良さで『土浦八景』のひとつに選ばれている場所なんです。社殿と鳥居を映した写真は絵葉書としても販売されて人気があったそうです」と話すのは、土浦市立博物館の学芸員・萩谷良太さん。

博物館が編纂した図録に載っている絵葉書と現在を見比べてみるとその美しさはまったく変わらず。今も昔も東崎の人々に親しまれていることがうかがえます。

今も健在。江戸時代よりも前に建つ古碑

拝殿に掲げられた扁額も素敵です。

「鷲神社」の文字の向かって左側には「雄山珂月謹書」とあり、市内の法雲寺・済岸寺の住職が揮毫したもののようです。

※珂月ご住職は、法雲寺から東崎の済岸寺に移り、明治20年頃、80歳で没したそうです

よく見ると龍神をモチーフにした彫刻も見事です。

拝殿の裏手に本殿があり、お社に施された彫刻も必見です。

足元に目をやると「鷲神社の石碑」とあります。その先では、萩谷さんが何かを覗き込んでいます。

萩谷さんが覗き込んでいたのは土浦市指定史跡の鷲神社の石碑です。

柵に覆われているのでじっくり眺めることはできないのですが、この石碑も神社創建とほぼ同じ時期に置かれた物。

江戸時代以前のものがこんな市街地のど真ん中に置かれているのです。

雨にも負けず、大洪水に見舞われたときも流されることなくこの場所に。

いくつもの時代の町の様子や人々の営みを見守り続けてきたであろう古碑を眺めているとなにかを語りかけてくるようなそんな気がしてきます。

力自慢の男たちが持ち上げたのは225kgに及ぶ巨石!

広い境内には大きな石が転がっているような、置いてあるような。

萩谷さん:これは「力石」といいます。若者たちがこの石を持ち上げて力を競ったと言われています。

ぱっと見は、ちょっと頑張れば子どもでも女性でも持ち上げられそうな石ですが・・・

石に彫られた文字を萩谷さんが解説してくれたところによると「六十貫」とあります。江戸時代以前、1貫は銭1000枚に相当する重さとされていて、明治時代に1貫=3.75kgに定義されたそうです。

それでいくと60貫は225kg。

土に半分埋もれていて正体がよく分からなかったのですが、かなりの重量の石です。

腕を競い合い、力を見せ合う、力自慢の男たち。

「●●さん家のご主人、力石を持ち上げたらしいわよ」「うちの亭主がこの前力石を持ち上げてさ」

そんな話題で盛り上がる東崎の人々の様子が目に浮かぶようです。

力自慢ついでにもうひとつ。境内には「参拝記念碑」と刻まれた石碑も見ることができます。

この石碑、下の方を見ると手形も刻まれています。

萩谷さん:この石碑は、茨城県東茨城郡(現在の水戸市)出身の大相撲力士の常陸山こと常陸山谷右衛門(ひたちやまたにえもん)の参拝記念に立てられたものです。常陸山は、第19代横綱。手形も常陸山のものをかたどったものでしょう。

神社を参拝に訪れていた氏子さんのお話によると、昔は境内に土俵があったそう。萩谷さんが調べたところ、江戸時代の日記にも鷲神社での相撲が年中行事のように書かれていて、土浦の人々が相撲を愛し、ゆかりもあったことがうかがえます。

境内には水の神様・農業神として親しまれる弁財天様も!

境内の奥のほうには緑が生い茂っていて季節ごとに異なる表情で参拝する人々の目を和ませてくれます。

この整備された公園のような佇まいが絵葉書になった理由のひとつと考えられています。

緑の中には石像や石碑が点在しています。

こぽこぽと音のする方に目をやると金魚が気持ちよく泳ぐ池もあります。

池の真ん中には祠があって、水の神様、そして農業神でもある弁財天が祀られています。

漁業や農業がさかんな集落だったこともあって、弁財天が信仰されていたのかもしれません。

参道付近に錨(いかり)が置かれているのも水辺の町ならではかもしれません。

旧正月15日に行われていた行事「ジャカモコジャン」

参道沿いには鷲神社にまつわる伝承を記した案内板が掲げられています。そこには「ジャカモコジャン」という不思議な言葉が・・・。

萩谷さん:「ジャカモコジャン」は、旧正月の15日に行われていた行事です。言葉の意味には、念仏を唱えるときに鳴らす鐘や太鼓の音がそのように聴こえたことが由来という説と神楽の音に由来するという説があります。ジャカモコジャンの日は、東崎のお母さんたちが作るみそおでん(田楽おでん)を買って味わうのが楽しみのひとつでした。

境内掃除にやってきていた方たちにお話を伺うと、サトイモをふかして皮を剥く作業がとても大変で、住民の高齢化も進んだことから現在は行っていないということです。

「本当においしいのよ、みそおでん。また若い方たちが中心となって復活してくれたら子どもたちも喜ぶわよね」

鷲神社は、地域の平和を見守る神様がいるだけでなく、住民たちの親睦を深める場でもありました。

<鷲神社>
住所:茨城県土浦市東崎町4-31 MAP

土浦在住ライター(土浦市)

土浦市在住のフリーランスの編集・ライター。海外・国内の旅行関連のガイドブックや書籍制作をはじめ、ブライダル情報誌の編集にも携わる。食べること・飲むことが好きで、趣味が興じて最近では食を中心にWEB、紙媒体などで取材執筆活動中。地元土浦の飲食パトロール、歴史やカルチャー学習も積極的に行っています。

コイケケイコの最近の記事