音楽ストリーミング時代の申し子ドレイクが『Scorpion』で示した驚異の数字
カナダ人アーティスト、ドレイクが6月末に発表した最新アルバム『Scorpion』は、デビューからわずか7日間で史上初めて定額制音楽ストリーミングサービスで10億再生を記録した作品となり、音楽業界に驚きを与えている。
業界関係者が音楽メディアBillboardに伝えた情報によれば、6月29日から7月5日の7日間で『Scorpion』は、アメリカだけで再生回数が7億5000万回以上を記録し、ストリーミング中心の音楽市場と、ヒップホップアーティストとの抜群の相性を改めて証明した。
これまで、1週間単位での再生回数でグローバルとアメリカ国内ともに過去最高を記録したのは、23歳のアメリカ人ラッパー、ポスト・マローンが今年発表したアルバム『beerbongs & bentleys』だった。ポスト・マローンは、4月27日から5月3日の1週間でグローバルで記録した7億弱と4億3130万回という記録を樹立したものの、約2ヶ月後には更新される結果となった。
アメリカでは、『Scorpion』はリリースからわずか3日で再生回数が4億3500万回を突破する急激な勢いで再生され、ポスト・マローンのアメリカでの記録をリリースからわずか3日で突破するほどの音楽消費量を生み出した。
ストリーミング時代の音楽業界が認める『Scorpion』
予想はされていたが、『Scorpion』は2018年の音楽業界を代表するモンスターアルバムとなっている。そして、今年最も売れたアルバムになるだろう。
本作の人気に大きく寄与した音楽ストリーミングサービスにおいて、SpotifyとApple Musicの定額制音楽ストリーミングサービスも猛烈に『Scorpion』をプッシュしている。そして、各プラットフォームがそれぞれ異なる差別化要因のアピール手法を取っていることは非常に興味深い。
Spotifyは『Scorpion』が1日の再生回数の最高記録を達成したことを発表。リリースから24時間で1億3200万回以上が、全世界のSpotifyだけで再生された。さらにSpotifyは1時間あたりの平均再生回数が1000万回以上に達したことも発表。これは、同プラットフォームがグローバル規模で短期間に高いエンゲージメントを実現できることを示している。
Apple Musicでは、Spotifyを上回る過去最高記録が生まれた。リリース24時間で1億7000万回以上の再生新記録を達成したことを発表。これまで同プラットフォームでの最高記録はドレイクの『More Life』で、初日に8990万再生を記録していた。
Apple MusicがSpotifyを再生回数で上回ったことは、アップルがとりわけアメリカ人のリスナーや音楽好きにアピールしてきたブラックミュージックやアーバンミュージックのアーティストとの高い親和性がブランドイメージとして直接的に反映された結果となって表れている。
アメリカの音楽業界団体RIAA(全米レコード協会)は、『Scorpion』をリリース初日の24時間で、ミリオン(100万ユニット)の売上を達成した「プラチナム・ディスク」に認定した。音楽業界全体でドレイクの金字塔を支援し、市場の盛り上がりを強調しようとしている。
こうした認定の裏には、RIAAを含むアメリカの音楽業界が、売上データに音楽ストリーミングからの再生回数をフィジカルとダウンロードに合算する計算方法を採用しているから実現したといえる。
RIAAは4月にポスト・マローンの「beerbongs ‘bentleys」をリリースから4日後に「プラチナム・ディスク」に認定している。
ドレイクは『Scorpion』のCDバージョンを7月13日に発売することを既に発表している。音楽ストリーミングだけでなく、フィジカルパッケージからのさらなる売上が期待できそうだ。
ソース
Drake’s ‘Scorpion’ Is the First Album to Hit 1 Billion Global Streams in a Single Week (Billboard)
Drake’s Scorpion Went Platinum on Its Release Day (Pitchfork)
Drake’s ‘Scorpion’ Is Earning 10 Million Spotify Streams Per Hour (Complex)