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【西宮市】伊勢神宮御料酒「白鷹」の蔵元、辰馬家の歴史的所蔵品を無料鑑賞『白鷹禄水苑 暮らしの展示室』

RonyaWebライター 2024年9月地域C.MVA受賞(西宮市)

2024年11月5日、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。

今回は、そんなタイムリーな日本酒にまつわるニュースです。

大正13年より、天照大御神を祀る伊勢神宮(三重県伊勢市)で毎日供えられる清酒「白鷹」が、西宮市の酒蔵によって醸造されたものであることをご存知でしょうか。伊勢神宮の神々の食事の際に供される、全国で唯一選ばれた御料酒です。

その「白鷹」の蔵元は、1862年(文久2年)に初代、辰馬悦蔵氏が西宮の地に創業されました。

江戸時代に発見された「灘の生一本」を象徴する存在となった『宮水』と兵庫県産米『山田錦』を、伝統的な『生酛(きもと)造り』の技法を用いて酒造りを行う酒蔵です。

今回は、その「白鷹」の蔵元で、江戸時代から続く灘五郷(西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷)の一つ、名家『辰馬家』の歴史の一端を垣間見ることができる「白鷹禄水苑 暮らしの展示室」をご紹介します。

JR「西宮駅」より徒歩約15分、札場筋線沿いにある、一際目立つ非常に大きな日本家屋です。

11月にお邪魔したのですが、見事な紅葉が出迎えてくれました。

玄関右手には古いタンクのようなものが。これは、宮水運搬に使用していた牛車なのだそうです。

この『白鷹禄水苑』は、2001年に4代目の故・辰馬寛男氏が私財を投じて「宮水を守り、灘酒の伝統文化を次世代へ伝えたい」という願いを込めて設立されました。

この扉から中へ。

中へ入るとすぐに、豪壮たる素晴らしい二層吹き抜けの土間が。100年以上前の古材を利用した黒柱、大梁と貫木組みで構成されているそうです。

白鷹禄水苑総合プロデューサー・辰馬朱滿子さんに、お話を伺わせていただくことができました。

「元々は、ここにかつての蔵元、私の高祖父にあたる初代の住居がありまして、蔵ではなく住居の再現なのです。戦争で全部焼けてしまったのですが、ただ当時の写真や見取り図、そして庭の土蔵がひとつだけ焼け残り、その中に江戸時代末の創業期から戦前、昭和初期までの生活用品が残っていたのです。それを元に、かつての住居をイメージ的にここで再現したのです。そして『暮らしの展示室』として当時のような部屋に焼け残った生活用品を展示して、当時の蔵元の暮らしを再現しています。」

この土間、奥右手に「暮らしの展示室」の入り口があります。早速中を拝見させていただきます。どんな歴史や物語が詰まっているのか想像が膨らみます。

土足厳禁で、スリッパに履き替えて中へ。

板廊下に3つのお部屋があり、それぞれに古き良き時代のお品物が展示されています。

「中は季節の行事などによって展示替えをします。今は、昭和初期の婚礼衣装を並べていますが、次回はお正月の祝膳であったり結納一式、昭和初期の雛人形や五月人形などに入れ替えます。」

「雛人形は三世代の雛人形を展示しますが、京都の老舗『丸平大木人形店』さんのもので、昭和初期のこの辺りの蔵元や商家、ヨドコウの山邑さんもこちらの雛人形を注文されていました。今日保存されていることが稀有な、一つの『家』から出た生活用品を通して、かつての蔵元の暮らしを見ていただくというのが、この「暮らしの展示室」のコンセプトです。」

最初のお部屋は、明治から大正にかけての茶の間です。時代劇ではお馴染みのシーンですが、本物の現物を見ることができ、当時の暮らしの息遣いを感じられました。それにしても豪華な水屋ですね。こんなに綺麗に残っているのですね。

「美術品は永く資料館などで保存されますが、生活用品を残していくということは難しいです。ですから、戦火を逃れ焼け残ったものを展示しようという着想から、かつての商家建築を再現しました。」

それぞれのお品の説明書きがあります。

昭和初期の婚礼衣装です。日本の伝統古典着物の美しさや魅力を、改めて再確認することができます。

関西のならではの風習も学べます。

大正時代の離れの化粧部屋。お嫁入りのために取り揃えられた、定紋入りの長持ちと箪笥に、ホヤ付き燭台という初めて聞く照明器具もありました。

壁には、辰馬家四世代の写真が。当時の名家の生活や風景が垣間見え、歴史に引き込まれます。

そしてこの階段を上がると、2階にも展示室があります。

ショーケースの中にはたくさんの小道具が展示されていました。

お殿様が使っているような枕がありました。奥にはお薬箱など、珍しいものが沢山あります。

◆「彩」造り酒屋の女性像
◆「文」造り酒屋の旦那像
◆「宴」造り酒屋のハレのしつらえ
◆「住」造り酒屋のケの暮らし

4つのコーナーがあり、タイトルにちなんだお品が展示されています。

◆「彩」造り酒屋の女性像
直接見に行っていただきたいので、一部だけご紹介します。

それぞれのお品物の紹介文もパネル掲示されています。

◆「文」造り酒屋の旦那像

初代辰馬悦蔵氏は、明治・大正期の文人画家の富岡鉄斎とも交流があり、両者の親交を表した品々も展示されています。

この書状は、 富岡鉄斎が辰馬悦蔵氏に送ったもので、辰馬家よりの贈り物のお礼と骨董品の話題が書かれたものです。

貴重な物を拝見することができ、大変感激しました。

他にも見どころ満載なのですが、最後に辰馬家旧宅の模型をご紹介します。

数多くの部屋があり、女中部屋もあるなど、当時の造り酒屋の暮らしぶりが伺えるだけでなく、住居と酒蔵が同じ敷地内にある「内蔵形式」も詳しく再現されています。

とても見応えのある「暮らしの展示室」でした。ぜひ皆様も、西宮の貴重な歴史に触れに行ってみてください。

お越しの際には、1階の中庭も素晴らしいので、ぜひご覧くださいね。

また、この奥には「白鷹集古館」があり、白鷹に伝わる昔ながらの酒造りに使われていた道具や資料、伊勢神宮御料酒に関連する展示物なども見ることができます。

次回はこちらを取材させていただこうと思っていますので、お楽しみに。

「白鷹禄水苑」は、「暮らしの展示室」「白鷹集古館」のほか、多様な魅力が詰まっている複合施設です。

・白鷹の限定酒や季節の日本酒を一杯から気軽に楽しむことができる「蔵BAR」
・白鷹の代表的な日本酒のほか、珍味や酒器なども販売されているショップ「美禄市」
・日本酒関連のイベントと西宮の文化や芸術に触れることができる「宮水ホール」
・お稽古、会合、お茶会、句会などに利用できる茶室「悦庵」
・伝統の懐石料理が定評の老舗「東京竹葉亭西宮店」

皆様も、西宮の誇るべきお酒と歴史に触れにいらしてみてはいかがでしょうか。

≪店舗情報≫
【店名】白鷹禄水苑 暮らしの展示室

【拝観料】無料
【住所】兵庫県西宮市鞍掛町5−1
【電話】0798-39-0235
【営業時間】11:00~18:30
【定休日】第1・3水曜日
【公式HP】白鷹株式会社 白鷹禄水苑

Webライター 2024年9月地域C.MVA受賞(西宮市)

大手企業のCM制作のADやスタイリストなどの経験を経て渡米。NYで遊学。国際結婚をしてヨーロッパに移住。家族で帰国後、Webライターとしての活動開始、現在に至る。大好きな西宮ならではの美味しいもの、楽しいことなどを探し出してご紹介します!また、ワンちゃん猫ちゃんとの生活をより楽しく豊かにするための情報もお届け。フォローよろしくお願いします!

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