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ロシア、インド、中国などBRICSが共通通貨発行を匂わす。トランプ氏は関税で対抗姿勢を示すが

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアのプーチン大統領が最近、新興国グループ「BRICS」加盟国の共通紙幣のように見えるものを手にして写真に写ったことで、米ドルを王座から引きずり降ろそうとするロシアの取り組みが話題となった(WSJ)。

 「BRICS」とは用語としては2001年にゴールドマン・サックス社が2001年に発行したレポートで取り上げられたもので、一般にも広く使われるようになった。このレポートでは、2050年にはBRICSの4か国がGDPで上位6か国に入る可能性があると記載された。

 2009年からBRIC4か国が首脳会議を開催し、2011年に南アフリカが首脳会議に参加した後は、5か国についてBRICSと総称される様になった。2011年からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されてきた。今年初めにイラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、エジプトが正式に加盟した。

 BRICSは、欧米主導の国際秩序や外交関係に対抗するための、経済・外交・環境面などで協調する外交グループとなる。新興・途上国のインフラ整備などへの金融支援を目的として、BRICS開発銀行も設立している。

 米ドル建てシステム以外でBRICS通貨と銀行ネットワークを利用するようになれば、ロシア、中国、イランなどの加盟国が西側諸国の制裁を回避できるようになる可能性がある。しかし、加盟国の経済的、地政学的な違いにより、新通貨が実際に誕生する可能性は低いとみられる(CNN)。

 とはいえ、その可能性はゼロではない。実際にプーチン大統領が共通紙幣のように見えるものを手にしての写真がアップされると、トランプ次期米大統領は、中国とロシアが支援する新興国グループ「BRICS」の加盟国に対し、自身の在任中に新たな通貨を創設しないよう求める考えを示した。この考えに反した場合100%の関税を課すとしている。

 この反応そのものが、これが米国にとって大きな脅威となりうることを示している。ただ、それに対して関税で対応するというところが、良くわからない。関税で対応できるようなものではなかろう。何でもかんでも関税を武器にディール(取引)に持ち込めば解決できるものではない。

 現実問題として、ユーロのような共通通貨が「BRICS」加盟国で出来る可能性は確かに高くはない。しかし、ロシアのウクライナ侵攻、米中貿易摩擦などにより特にロシアや中国などが対欧米として手を組む可能性がないとはいえず、そこにインドやブラジル、中東諸国などが加わるのは脅威でしかないことも確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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