米国が協調介入を検討したとは考えられない理由
財務省幹部は24日までに、先の日米財務相会談で為替の協調介入を協議したとする一部報道について「事実ではない」と否定的な見解を示した。帰国後、匿名を条件にロイターに語った(24日付ロイター)。
TBSは22日に、日米財務相会談で鈴木財務相がイエレン財務長官に「直近の円安が急激であることを数字で示した」と鈴木氏は説明した。そして、日本のある政府関係者が取材に対し、協調介入について協議したことを認めたとし、その関係者は「米国側は前向きに検討してくれるトーンだった」とも話したという。ちなみに会談は30分程度であった模様。
この報道を受け、ドル円は一時、下落するなど反応を示した。しかし、市場では「米国側は前向きに検討してくれるトーンだった」に対して疑心暗鬼となっていたとみられ、ドル円はすぐに値を戻していた。
この報道に対し、財務省幹部は「TBSの報道は事実に反しており、当局として取材に応じた事実もない」と述べた(24日付ロイター)。
「米国側は前向きに検討してくれるトーンだった」というのは、どう考えても希望的観測にしか思えない。
鈴木財務相は会見で、日米で「緊密な意思疎通を図っていく」と話したものの、介入については「コメントしない」としていた。
そもそも日本側が米国側に介入について打診を本当にしたのか。たしかにその可能性はあるかもしれないが、それを米国側がまともに取り上げたとは考えづらい。
相手側のトップがイエレン財務長官であり、前FRB議長である。ドル円を取り巻く状況を最も理解している人物であろう。
今回の急速なドル円の主要な要因に、日銀とFRBの金融政策の方向性の違いがある。FRBの利上げ加速についてはイエレン財務長官は理解というか、それを望んでいることがうかがえる
米国政権にとって現在の大きな課題が物価高への対応である。それに呼応する格好でFRBは利上げを加速させようとしている。
それに対して日銀は強力な緩和策を改める気がない。円安がこれによって急速に進むのは必然である。
しかも米国にとってドル高は輸入物価を通じて物価上昇の抑制要因ともなり、むしろ歓迎される。
この状況下、日本の財務相から円安是正に協力してほしいといっても筋違いだろうということになる。まずは日銀の金融政策をどうにかさせるべきと考えるのが当然か。
日銀の金融政策の柔軟性が失われて久しいことぐらいは、イエレン財務長官はお見通しであろう。それで急激な円安となっているのは自業自得とみられても致し方がない。
米国側にとっては急激な円安ドル高は痛くもかゆくもない上、プラス材料でもある。むろん、急激な円安で日本経済に大きな打撃を与えかねないと言うのであれば、協力も惜しまないのかもしれない。しかし、まずはやることをやってから(金融政策の柔軟性回復)でないと、協議のテーブルにすら乗せられないということになるのではなかろうか。