<朝ドラ「エール」と史実>音のモデル・内山金子も、学芸会で「かぐや姫」の役をやっていた?
再放送中の朝ドラ「エール」、今週の主役はヒロインの関内音。いうまでもないですが、のちに古関裕而の妻となる、内山金子がそのモデルです。
やはり注目は、学芸会の「かぐや姫」でしょう。これも、なんと実話です。
ただ、金子の幼少期はほとんど記録が残っていないため、わずかな資料からなんとか物語をひねり出した印象です。
今回は、その苦労のあとをたどってみましょう。
「まるで寄宿舎みたいににぎやかな家庭」
まずは、内山家の家族構成。ドラマでは3姉妹ですが、史実では1男6女の大所帯でした。次女の清子がこう書いています。
ドラマでは、兄妹があまりに多いと収拾がつかないので、3姉妹にまとめたのでしょうか。
ちなみに金子は、「読書三昧」で「音楽が大好き」だったと記されています。
なお、父が若くして亡くなったのは事実ですが、それは交通事故ではなく、脳溢血だったといいます。
このあたりは、史実をふくらませたといえそうです。
「かぐや姫、かぐや姫」と呼ばれて……
「かぐや姫」のエピソードも同じです。小学校の学芸会でこれをやったのは事実ですが、記録に残っているのは、以下のとおりわずかです。
とはいえ、この「かぐや姫」への思い入れがあったからこそ、金子は、「竹取物語」で国際的な賞を取った(とされる)古関裕而に手紙を送り、熱烈な文通を経て、ついに結婚にいたったのです。
ドラマで「かぐや姫」のエピソードを大きく取り上げたのは、当然の流れといえるでしょう。
長男・勝英は外資系サラリーマン?
そのいっぽうで、史実なのに消されてしまった部分もあります。それは、金子の兄・勝英についてです。
この長男が、なかなかスゴイひとでした。
長男なのに家業を継がず、金子が残したメモによれば、飛行学校を卒業して飛行機を乗り回すかたわら、大陸にわたり、フォード自動車大連支店の副支配人などを務めたとか。いまでいえば、外資系サラリーマンですね。
「男勝り」といわれた金子はこの兄に憧れていて、結婚前、単身わざわざ大連まで会いに行ったりしています。
なぜ、こんな面白い人物を出さなかったのでしょうか。もしかすると、あまりに破天荒で、主人公たちの物語が霞んでしまうと懸念したのかもしれません。
このように、音の物語は、史実をたくみに再構成して作られているのです。