金正恩氏が「ビッグマック」を食べる前にしなければならないこと
「我々の目標は米国との戦争ではない。平壌にマクドナルドができることだ」
北朝鮮のある官僚は、西側のジャーナリストに対してこのように述べたという。同国の首都・平壌に、世界最大のハンバーガーチェーン店であるマクドナルドの赤と黄色の看板がそびえ立つことこそが、米国との関係改善の象徴になるという意味だ。
アヒル肉のバーガー
史上初となる米朝首脳会談が成功裏に終われば、決して不可能なことではない。しかし、会談自体は開催の方向で進んでいるが、トランプ氏がいったんは会談中止を持ち出すなど、実現までには何があるのかわからない。はっきりしているのは、トランプ氏の会談中止をめぐる金正恩党委員長の慌てぶりもあって、米国に有利な方向で進んでいるということだ。
(参考記事:金正恩外交は「すでに惨敗」している…自分の実力を過信か)
こうしたなか、米国のNBC放送は、金正恩氏が平壌にハンバーガーショップのフランチャイズ開設の許可を検討していると報じた。これはつまり、米国からの投資に開放姿勢を示しているということだ。NBCは米国の情報機関関係者3人の発言を引用して、米中央情報局(CIA)が今月初め、このような内容の報告書を出したとしている。
これに先立ち、今月9日に金正恩氏と会談したポンペオ米国務長官は、米国のFOXテレビのインタビューで、北朝鮮が完全な非核化に応じた場合、見返りとして民間資本を主体とした経済支援を行うことについて言及している。
ちなみに、北朝鮮国民もハンバーガーの存在を知らないわけではない。独自のハンバーガーショップもあり、アヒル肉のハンバーガーなどは北朝鮮ツーリストの間ではよく知られている。
(参考記事:北朝鮮、地方に広がる「ファストフード店」味には賛否両論)
女子大生を拷問
ハンバーガーはともかく、金正恩氏が米国文化をはじめ西洋文化に憧れをもっていてもおかしくはない。そもそも金正恩氏の実兄である金正哲(キム・ジョンチョル)氏は、エリック・クラプトンの熱狂的なファンとして知られ、海外で追っかけまがいのことをしている。
(参考記事:金正恩氏の兄は「有能なギタリスト」だった!)
ある脱北エリートの話では、金正恩氏自身はブリトニー・スピアーズのファンであるとも言われる。それなのに一方では、資本主義社会の文化を「退廃的」と非難し、北朝鮮国民が海外の文化を自由に楽しむ機会を奪っている。ある女子大生は、韓流ビデオのファイルを持っていたというだけで拷問され、悲惨な運命に追いやられた。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)
北朝鮮の文化統制は、れっきとした人権侵害だ。金正恩氏が米国のハンバーガーショップの開設を望むのなら、同時にこうした文化統制をやめるべきだ。そうして初めて、金正恩氏がビッグマックをほおばり、スターバックスのラテを飲む姿が、北朝鮮と自由社会の融和の象徴と見なされるのではないだろうか。