明日が投開票日 安倍政権の防衛政策の信を問う石垣市長選挙の行方は?現地ルポ
尖閣諸島を抱える沖縄県石垣市。防衛問題を争点に自民・公明からの推薦を受ける現職・中山義隆氏と前市長で無所属の大浜長照氏の一騎打ちの構図で激しい選挙戦を続けている。明日がいよいよ投開票日。安倍政権の防衛政策への信任となるのか否か。選挙戦の行方について、8bitNewsを使って映像発信をスタートさせたジャーナリスト・蜂谷祥子の報告。
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明日、3月2日に投票日を控えた石垣市長選挙は大詰め、28日に各候補者と彼らの後援者たちから話を聞いた。
鮮やかな黄緑色をチームカラーとしている自民・公明推薦、現職の中山義隆氏(46)の 陣営は、中山氏の若さと行動力をアピールするために市内を自転車で街宣。
中山候補は自分の生まれ故郷でもある石垣市について、世界に誇れる国際的な観光都市にしたいと語った。
注目の集まる自衛隊の配備の可能性については「前から自衛隊に関しては、スタンスは変わりません。国防とか安全保障というのは国の専権事項なので市の市長が自衛隊をどうするという話では無いと思うんですね。そういう話がもしあったとしても、話し合いはしっかりと条件をいろいろ聞きますし、聞いた話は市民の皆さんにオープンにしていろんな賛成反対あると思いますので、そういった議論をしっかりとやっていくべきだと思っています。市長が個人的に自衛隊を誘致するということは一切ありません」と話した。
石破茂幹事長や小泉進次郎さんの来島について、自民党が野党だった時代から政治家としての付き合い、個人的なつながりもあった為今回来島して応援していただいたと経緯を話した。
中山陣営の選対本部長、沖縄県議会議員で自由民主党石垣市支部支部長の砂川利勝氏(50)は石破幹事長と小泉進次郎政務官(32)が中山氏の応援の為に来島の際には、政治に関心の低い方も興味を持って見にきた為、投票に行ってもらえるだろうという感触があり、2人の来島には大変良い効果があったと語った。本土と比べて高い沖縄の投票率は、沖縄県民は政治は生活だと実感を伴ってわかっているためだと言う。
砂川氏は石垣への自衛隊配備の誘致、配備の可能性についてはこの石垣市長選挙の争点ではないと明言。琉球新報が告示日に掲載した石垣での新たな自衛隊配備の候補地に関する報道を沖縄の新聞社による選挙妨害だと非難した。選対本部から琉球新報に抗議文も提出。
砂川氏は、4年間で中山氏が市長として獲得した沖縄県の予算、一括公金などを利用して今まで市で停滞していたものを活性化させることができたので、国、県、市の流れが一本となっている今の状態を継続させ、自民公明与党と足並みを揃えて市政を行う方針だとビジョンを示した。
仲井眞知事の辺野古容認と沖縄県民の民意との食い違いについては、石垣市長選挙においては争点ではないとしてコメントをしなかった。
尖閣諸島の防衛については、防衛問題は国の問題だが、そこで漁をして生活をしている人々が安心安全な漁業を営めるように石垣市が努力をするのは当たり前のことだと述べた。
石垣市で4期、16年間市長を務めた前市長の大浜長照候補(66)は 「市民が主人公の石垣市政を取り返せるかどうか。それとも東京からの声に、あるいは東京から支配されるような石垣市になるのかというのは、この争点は非常に大きな意味があると思います」と話した。
石破幹事長や小泉進次郎政務官が石垣市という小さな市の選挙を永田町から応援しにくるのには石垣の軍事利用という思惑があることを意味している可能性がある為、石垣を国の思い通りに軍事的に利用させない為の市政をしたいと語った。石垣が軍事的に利用されると、尖閣の問題、台湾、中国を含めた問題が深刻化し、安心して暮らせる島では無くなってしまうのでそれを防がなければいけない。平和であることが何よりの幸せだと語った。
石垣では農業、水産業、畜産業が盛んで、島の3分の1は国立公園で5つの海中公園もあるので、自然と平和産業である観光を大切にし、継承することにこの島の将来があると考えていると語った。
石垣への自衛隊の配備の可能性については、自衛隊といっても日米共同使用なので、オスプレイも来るだろうし、陸も海も空も使うだろう。観光、文化交流、人と人との触れ合いである平和産業と軍事産業を両立させることはできない、と軍事基地にはっきりとノーを示した。
米軍基地の負担などにあまり触れずに保守的だと批判のある育鵬社の教科書問題については、教科書は教育学に基づいてつくられるべきで、政治的な介入や意図の結果で教科書が選ばれてはいけないと述べた。
沖縄が長年抱える基地問題について、国土の0.6%である沖縄の面積に70%以上の軍事基地が集中しているが、県民の意思でつくった基地はない、そして辺野古強行移設も許されるべきことではないと述べた。沖縄戦の時に、基地の無かったところは攻撃されず、基地があると攻撃されたというのは証明済みの事実。集団強制自決など悲惨なことがあったが、そういったことは基地のない島では起きなかったということはもっと重視するべきことだと語った。
市長を4期、16年間やった経験や医師としての経験も生かし、市民が主人公の石垣市をつくるために、年に4回市民会議会を開き、市民のナマの声を聞き、それを市の職員にも聞いてもらう、できるものは政策として実現して予算もつけ、市民の要望に答えていきたいと意欲を見せた。
大浜候補の後援をしている元沖縄県議会議員、元宜野湾市長の伊波洋一氏(62)は「普天間飛行場の辺野古移設を巡って県民が圧倒的に反対しているのにそれを認めてしまった(仲井眞)知事がいる、その知事を日本政府は一生懸命後押ししているのだけれども、各地域で行う市長選挙や地方選挙で基地反対の立場の人達が当選をしているという流れです」と今の石垣市長選挙がどのような政治的な流れの中で行われているのかを解説した。
基地のある普天間のような場所と基地の無い石垣のような場所の暮らしの違いを聞くと「石垣は落ち着いていますよね。のんびりとしてますしね。だから本来の沖縄の自然が息づいている。人々もそのように暮らしていますね。普天間のような基地のあるところでは、日常的に爆音が鳴り響いているし、何よりも昔の沖縄がないんですもう。あれだけ広大な土地を基地に取られたがゆえに、本来の集落が壊されてしまって、戦後のスタートは戦争前からの沖縄ではなくて、戦後の基地の島沖縄の中での沖縄となってしまった」と語った。
台湾や中国とも近い石垣市や沖縄県では、日本と中国の対立を懸念している。沖縄というのは特別なところで、琉球と中国は正式な国交を結び交易をしていて、中国からの文化もたくさん入ってきたという歴史がある。中国と友好的な関係を持っていた沖縄と、中国と対立関係にある本土とでは違った外交の歴史がある。沖縄では本土のように中国に対して敵意を持つという考え方は根付いておらず、石垣のような台湾や中国にとても近い国境の島では、台湾とも中国とも軍事的にではなく平和的に友好的な関係を築きたいと考えていると伊波氏は言う。本土に対する想いを聞くと「沖縄の立場を理解してほしい」と言った。
石垣市長選挙は明日3月2日に投開票。選挙戦最終日の今日は、中山候補は18:00から730交差点で打ち上げ式を行う。大浜候補は今日18:00からJA石垣前で打ち上げ式を行い、名護市長の稲嶺進氏や参議院議員の山本太郎氏が応援に駆けつける予定となっている。
取材・撮影 蜂谷祥子