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霞ヶ浦、茨城101校の代表に――100年目の高校野球・茨城大会

川端康生フリーライター

2対0。そのスコアが最後まで動かなかった。

3年連続して決勝を戦う霞ヶ浦と、30年ぶりに勝ち進んだ日立一が対戦した茨城大会の決勝。

その「2」がスコアボードに記されたのは初回だった。

先頭の佐藤が相手エラーで出塁すると、続く益子がすかさず送りバント。関口がライト前へ運び、1アウト1、3塁で打席には4番清水。先制のチャンスである。

ここで霞ヶ浦がとった作戦は驚きだった。

セーフティスクイズ。2球目、1塁線に見事に頃がし、1点をもぎとった。「4番」に、である。

清水は続く打席でもバントを決めたから(しかも内野安打にした)、このチームにとっては珍しいことではないのかもしれない。

しかし、僕のような“よそ者”にとっては驚きであり、執念を感じさせる場面だった。

執念――冒頭の「3年連続して決勝」はすべて準優勝。もっと言えば、ここ5年で4度決勝を戦い、4度準優勝。つまり決勝でことごとく敗れ、霞ヶ浦は甲子園を逃し続けているのだ。

だから、今年こそ何が何でも……初回の4番のスクイズに、そんな執念を垣間見た気がしたのである。

1点をもぎとった後、5番根本将がレフトオーバーのタイムリーを放ち、2点目。

もちろん、この初回の「2」以外、すべてのイニングが「0」で埋め尽くされることになるとは、誰も思っていなかったに違いない。

立役者としては、やはり安高投手を挙げなければならない。

決してサイズがあるわけではないが、ボールにキレがあり、制球力もいい。ピッチングのテンポもいいから野手にもリズムができる。140キロ台の速球を持つ本格派・綾部を擁しながら(準決勝で完投した)、先発を託したのがうなずけるピッチングだった。

何より惚れ惚れしたのはマウンド度胸。打者に向かう気迫は十分。2回(牽制でランナーを刺したかに見えたが)ボークをとられた場面でも、消極的になることなく牽制を投げ続けるハートの強さにも感心した。

もちろんスコアボードが「0」で埋まったのは日立一の背番号「3」にしてエースの鈴木彩投手の力にもよる。

決勝も含めて全7試合に登板(準々決勝からはすべて完投)。59イニングを投げ、チームの躍進を支えた。

この試合でも3回ノーアウト満塁、4回ノーアウト2,3塁などランナーを背負う場面は多かったが、要所で大きなカーブなど変化球を駆使して切り抜け、終盤は尻上がりに調子を上げた。

鈴木彩を盛り立てたバックの守備も素晴らしかった。4回のピンチをダイビングキャッチで救ったライトの木村をはじめ、随所で好プレーを見せた。

「盛り立てた」と言えば、ベンチの共闘感も見ていて気持ちがよかった。ピンチに直面したナインを、ピンチを切り抜けたナインを、赤津選手を中心に大きな声とゼスチャーで励まし、盛り立て続けた。

ノーシードながら4試合で逆転勝ちし、決勝まで進んだ要因の一端に触れた気がした。

攻撃でも四球やデッドボールで塁を賑わせることもあった。しかし、結局ヒットは1本だけ(4回に木村がセンター前に放った)。

しかも霞ヶ浦は7回から綾部を起用。盤石の継投で、勝利と甲子園を確実にたぐり寄せた。

センバツ8強の常総学院をはじめ、シード校が早々に敗れ去った「茨城の夏」。101校の頂点に立ったのは霞ヶ浦だった。まさしく“悲願”達成しての甲子園。ようやくつかんだ夢舞台に綾部、安高の両腕で挑む。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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