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女子ラグビー 2ヶ月間、ともに過ごし絆を深めたNZが金メダル! 東京で歓喜のハカを披露

斉藤健仁スポーツライター
ハカを披露したNZ(Credit:Mike Lee - KLC fotos)

7月29日(木)〜31日(土)にかけて東京スタジアムで、東京五輪の女子ラグビー(セブンズ)が行われた。31日に行われた決勝では、優勝候補筆頭で前回大会銀メダルのニュージーランド(NZ)がフランスを下して、初の金メダルに輝いた。フランスは銀メダル、フィジーが銅メダルで、ともに女子ラグビーで初のメダル獲得となった。

◆前回銅メダルのカナダが8強入りを逃す

4チームずつ3つの組に分かれて行われた予選プールBでは、リオデジャネイロ五輪で銅メダルのカナダがフィジー、フランスに敗れ1勝2敗で3位となったが、得失点差で決勝トーナメントに進めないという波乱が起きた。カナダは女子セブンズ史上最多得点を誇るキャプテンのギスレーヌ・ランドリーを中心に今回もメダルを狙ったがかなわなかった。

プールCの日本は初戦でオーストラリアに0-48で大敗。2試合目のアメリカ戦こそ7-17と善戦したが、アジアのライバル中国にも0-29で敗れて3連敗を喫して決勝トーナメント進出はならなかった。

ポーティア・ウッドマン、ミカエラ・ブライド、ルビー・ツイと3人のセブンズ年間最優秀選手を擁するNZ、前回4位の英国、2018年セブンズワールドカップ準優勝のフランスは予選プールで3連勝を達成。前回大会・金メダルのオーストラリアはアメリカに逆転負けを許したものの決勝トーナメントに進出した。ROC(ロシアオリンピック委員会)、中国が初のベスト8入りを果たした。

突破するカナダのランドリー主将
突破するカナダのランドリー主将写真:ロイター/アフロ

◆フィジーが前回王者の豪州を下してベスト4入り!

準々決勝では、NZはROCに36-0と快勝したが、オーストラリアがフィジーに12-14 で敗れて連覇の夢が潰えた。

英国対アメリカは、英国が今大会好調なジャスミン・ジョイス(唯一のウェールズ代表)の2トライなどでアメリカを21-12と下し2大会連続のベスト4に進出した。フランスも粘る中国を24-10で下し4強入りした。

準決勝第1試合はNZとフィジーの対戦となった。NZが前半2分にガイル・ブロートンのトライで先制するも、フィジーは4分にバシチ・ソリコビチのトライとビニアナ・リワイのコンバージョンで逆転し、前半、最後にインゴールノックオンを誘ってフィジーがリードする。

後半2分にソリコビチが再びトライを挙げて点差を広げるが、NZはウッドマン、ステーシー・フルーラーのトライで逆転に成功する。しかし、フィジーがロスタイムにレアピ・ウリニサウのトライで17-17と追いついて勝負は延長戦に突入。延長2分、NZはブロートンのトライで22-17とフィジーを退けて、2016年の前回大会に引き続いての決勝進出となった。フィジーは3位決定戦へ回った。

準決勝2試合目は英国とフランスの欧州勢同士の対戦となった。フランスがアンヌ=セシル・シオファニ、セラフィーヌ・オケンバのトライで一気に14-0とリードする。英国も5分にジャスミン・ジョイスのトライで追い上げるが、フランスはコラリー・ベルトランのトライで再び突き放す。英国は前半終了間際にジョイスが再びトライを決めて21-12として前半を折り返した。

後半に入ってもフランスの優勢は変わらず、1分に再びシオファニがトライを挙げて26-12と突き放す。英国も1本トライを返したが、フランスが26-19で初のファイナル進出を決めた。

トライ王にも輝いたフィジーのウルニサウ
トライ王にも輝いたフィジーのウルニサウ写真:ロイター/アフロ

◆フィジーが東京で旋風を巻き起こし銅メダルを獲得!

3位決定戦は、共に初のメダルをかけたフィジーと英国との対戦となった。フィジーはアロウェジ・ナコシの連続トライでリードし、英国も共同キャプテンのメーガン・ジョーンズがトライを挙げて14-5で前半を終える。

後半に入ってもやはりフィジー が追加点を挙げ21-5と突き放す。英国も終盤に1トライを返すが21-12でフィジーが勝利した。英国は2016年の前回大会に引き続き、またしても3位決定戦に敗れてメダルを逃した。嬉しい銅メダルとなったフィジーは国全体でもこれでラグビー男子と合わせて東京五輪2つ目のメダルとなり、1大会2メダルは同国史上最多の快挙となった。

フィジーの銅メダルは、男子のフィジーの金メダルとは大きく事情が異なる。男子と違い女子のフィジーはこれまで女子のワールドシリーズやワールドカップで上位に入った経験はなかったため、前評判もさほど高くなく、決勝トーナメントに進出できるかどうかくらいかと予想されていた。

しかし、蓋を開けてみれば予選グループでは前回大会銅メダルのカナダを、準々決勝では同大会・金メダルのオーストラリアを下して4強入り。準決勝でNZに敗れはしたものの、延長戦まで王者を苦しめ、3位決定戦で実力のある英国も破り強豪国の仲間入りを果たしたと言えよう。

もともとフィジカルの強さはあったが、男子同様にコロナ禍で家族と離れた環境でトレーニングを重ねてきたことに加え、15人制&7人制男子フィジー代表経験のあるサイアシ・フリHC(ヘッドコーチ)が課題だった規律面も辛抱強く改善してきた。大会直前の6月末にオーストラリアで行われた国際大会でも、NZ、オーストラリアを破って優勝するなど好調を維持して大会に臨み、大きな成果を出した。いずれにせよ、今後の活躍が楽しみである。

◆NZが決勝でも強さを発揮し悲願の金メダルを獲得!

決勝は優勝候補筆頭のNZと、2024年パリ五輪のホスト国であるフランスとの戦いとなった。NZは前半1分、エースのミカエラ・ブライドのトライで先制に成功する。フランスも1トライを返したが、NZはガイル・ブロートン、タイラ・ネイサン=ウォンが決めて19-5とリードして前半を終える。

後半2分にアンヌ=セシル・シオファニのトライでフランスは巻き返しを図るも、反撃はここまで。NZは後半5分にネイサン=ウォンのトライで試合を決めて、26-12でノーサイド。NZが見事に初の金メダルを獲得し、敗れたフランスは銀メダルに輝いた。

ボールを持ってゲインするNZのウッドマン
ボールを持ってゲインするNZのウッドマン写真:ロイター/アフロ

◆ハカの歌詞「力を合わせればきっと乗り越えられる」を体現

ワールドシリーズ総合優勝6回、ワールドカップ優勝2回の絶対王者の「ブラックファーンズ」ことNZは、金メダルが有力視されていたリオ五輪では隣国のライバル、オーストラリアに敗れ銀メダルに終わった。

3人の世界最優秀選手受賞者を含むスター集団だが、リオ五輪の悔しさをバネに、優勝した2018年のセブンズワールドカップ以降は、ケガによる入れ替えもあったが、ほぼメンバーを固定し結束を強め、チームでプレーすることを強く意識して練習、試合に臨んでいた。

キャプテンのサラ・ヒリニは「リオ五輪が終わって、私たちは自分たちのチームカルチャーを作る必要性を感じました。(東京五輪の)直前の2ヶ月はずっと一緒に過ごした。本当に互いを大事に思う特別な関係になった」と振り返った。

表彰式の後、ブラックファーンズのために作られたハカである「Ko Uhia Mai(知らしめよう)」を披露した。最後の歌詞、「困難にぶつかったとき。団結しよう。力を合わせればきっと乗り越えられる」のように、まさかの銀メダルからチーム一丸となって努力を積み重ね、5年越しの悲願を達成した。

金メダルを獲得したNZ(credit :Mike Lee - KLC fotos for World Rugby)
金メダルを獲得したNZ(credit :Mike Lee - KLC fotos for World Rugby)

◆東京五輪 女子ラグビー 最終順位

金 ニュージーランド

銀 フランス

銅 フィジー

4位 英国

5位 オーストラリア

6位 アメリカ

7位 中国

8位 ROC(ロシアオリンピック委員会)

9位 カナダ

10位 ケニア

11位 ブラジル

12位 日本

◆東京五輪 トライランキング

1位 8トライ

レアピ・ウルニサウ(フィジー) 

2位タイ 7トライ

ミカエラ・ブライド(NZ)

アンヌ=セシル・シオファニ(フランス)

ジャスミン・ジョイス(英国) 

5位タイ 5トライ

ゲイル・ブロートン(NZ)

ステーシー・フリューラー(NZ)

セラフィーヌ・オケンバ(フランス)

エマ・トネガート(オーストラリア)

チャリティ・ウィリアムズ(カナダ)

ポーティア・ウッドマン(NZ)

英国のエースとして気を吐いたジョイス。チーム唯一のウェールズ代表選手だ
英国のエースとして気を吐いたジョイス。チーム唯一のウェールズ代表選手だ写真:ロイター/アフロ

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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