強制中絶に性暴行も…脱北女性が待ち受ける受難
北朝鮮では女性の人権が著しく侵害されている。社会全体が旧態依然とした男尊女卑が根深い上に、女性の人権どころか、普遍的な人権という概念すら浸透していないことが背景にある。
とりわけ、脱北女性の人権が蹂躙されている。
刑務所内で強制中絶
先月27日、韓国国家人権委員会とソウル国連人権事務所は共同で「北朝鮮の国連女性差別撤廃条約(CEDAW)審議に対する女性人権討論会」を開催。このなかで、韓国のNGO・北朝鮮人権市民連合のキム・ソヒ常任幹事は、脱北女性たちの人権が侵害されている実態を報告した。
脱北女性の人権侵害については、これまでも当事者から告発されている。例えば、脱北して現在は韓国在住のキム・チャンミさんは2007年に中国へ逃れたが、北朝鮮に強制送還され、拘留場、集結所、教化所に収監された。
この時、彼女は、北朝鮮の収容施設で当局幹部により性的虐待され、妊娠させられ、さらに麻酔もせずに中絶手術をされたというのだ。
(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言)
今回の討論会では、中国で妊娠した脱北女性たちが北朝鮮へ送還される場合、強制的に中絶手術をされるケースが多いとも報告された。
妊娠の経緯はともかく、脱北女性たちのなかには、人身売買で中国に送り出された女性たちもいる。彼女たちは何の法的保護も受けられない状態でアダルトビデオチャットへの出演を強制されている。こうした環境に置かれれば、好むと好まざるにかかわらず妊娠に至ることも起きるだろう。
(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
コンドーム着用はゼロ
さらに、キム・ソヒ氏は、「女性は事実上、政治的・公的活動が遮断されているうえに、妊娠と避妊、性感染症などに関する保健教育もしっかり受けていない」と報告した。
韓国の北韓戦略情報サービスセンターによると、北朝鮮では2010年12月初めから梅毒に感染する人が急増した。中でも15~20歳までの女子高生、女子大生の間での感染が爆発的に増えた。
事態を重く見た金正日総書記は、「99常務」と呼ばれるタスクフォースを立ち上げ、全国で性感染症の検査を行ったが、「性感染症の検査」という名目では行われなかった。これは、隠蔽しているのではなく、性について公の場で語ることを避ける社会的風潮によるものだという。
性教育の不在によって、女性がいかに身を守るかという知識を持つことができず、女性が不利な立場に立たされることが多い。
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち)
韓国の統一省によると、同国に定着する脱北者の85%が女性で、その割合は年々増加現象にある。理由は、本稿で指摘したように金正恩体制の下で女性の人権が蹂躙されており、女性にとって住みづらい社会だからだ。
表向きは男女平等を謳っている北朝鮮で、女性たちの人権が著しく侵害されているという実情は、より広められるべき問題だ。