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YouTubeの音楽動画再生数、米音楽チャートに反映するルール変更

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
YouTube(写真:ロイター/アフロ)

アメリカの音楽チャートを運営するビルボードは、2020年1月からYouTubeで視聴されたミュージックビデオオーディオコンテンツのストリーミング再生数をアルバムチャートで合算するルール変更を発表した。

https://www.billboard.com/charts/billboard-200

ビルボードのアルバムチャート「Billboard 200」ではまた、YouTubeのビデオ再生数に加えて、Apple Music、Tidal、Vevo、Spotifyで配信される公式ミュージックビデオ動画コンテンツの再生数も合算する。

新しいルールは1月3〜9日の週から集計が適応される。最初のチャートは1月18日発表分から合算チャートとなる。

YouTubeの再生数はビルボードのシングルチャートや、ジャンル別チャートでは2013年から合算されてきた。アルバムチャートで換算されるのは今回が初めてとなる。

アルバムセールスにYouTube再生カウントを換算する際には、現行の音楽ストリーミングと同じ回数で換算する。YouTubeの有料ユーザーの場合は1250再生、無料ユーザーは3750再生を1アルバムとカウントされる。このルールは、Apple MusicやSpotify、Deezer、Tidal、Pandoraなどサブスクリプション型音楽ストリーミングや広告モデルの無料音楽ストリーミングに適用されているルールと同じになる。

参考までに、現在のBillboard 200でカウントされるCDセールスやストリーミング再生数は以下の数値となっている。

Billboard Chart rule
Billboard Chart rule

YouTubeの再生データはジャンル別アルバムチャートにも合算される。R&B/ヒップホップやラテンミュージックなどミュージックビデオの人気が高いジャンルは影響を受けやすくなるはずだ。

正確な音楽チャートを指標とするため

YouTube Musicのグローバル責任者であるリオ・コーエン(Lyor Cohen)はYouTube再生データの統合について次のようにコメントしている。

音楽チャートをより正確な再生の指標にするための非常に重要な決定だ。ラテンミュージックやヒップホップ、エレクトロニックなど、常にYouTubeで圧倒的な人気を獲得してきた音楽ジャンルがようやく公式チャートで正当に評価されるだろう。今回の決定は、YouTubeと音楽業界との連係をさらに一歩前進させてくれた。ビルボードと音楽業界に感謝している。

出典:Billboard

ビルボード・チャートを運営するメディア企業、Billboard-The Hollywood Reporter Media Group社長のディアナ・ブラウン (Deanna Brown)は次のように語る。

音楽消費の業界標準として最も信頼されるチャートの代表である私たちのゴールは、変化する音楽市場に常に対応し、正確に反映することです。YouTubeやその他の動画ストリーミングの再生データをアルバムチャートに追加するという決断は、音楽消費市場と、アルバム・コンテンツを取り巻く消費行動の進化を表しています。

出典:Billboard

前述の通り、アメリカでは音楽チャートでアルバムセールスをカウントする方法として、フィジカル音楽とダウンロードのセールス、ダウンロードしたシングルを合算する「トラック換算アルバム」(track equivalent album)、ストリーミング再生数をアルバム単位で集計した「ストリーミング換算アルバム」(streaming equivalent album)という3つの方法を採用している。

日本人アーティストがアメリカでチャート入りを狙いのであれば、このルールを理解することも重要になってくる。

日本のようにフィジカル音楽中心の国では見られないが、2010年代の音楽シーンでは、チャートに大きな変化が生まれ、国毎での計算方法が変化してきた。特に、ストリーミングやデジタルサービスの音楽消費が大半を占める国では、カウント方法は常に議論されてきた。

とりわけアメリカのビルボードは頻繁にチャートの指標に新たなデータを加えたり、換算ルールを変えるなど、音楽消費の傾向と取得できる再生データのバランスを常に取りながら、ルールをアップデートさせている。

YouTubeの動画再生数をカウントすることの利点は、ミュージックビデオのバイラル化を強みとするアーティストや、YouTubeを効果的に活用するレコード会社にとっては、YouTubeだけの人気に終わられること無く、その勢いを公式チャートにも反映させられるというメリットが生まれやすくなることだ。

公式チャートの入れ替わりも毎週早くなっていくはずだ。チャートで好調なアルバムの背景は、人気曲のバイラル効果によるものだったという例は、すでにアメリカでは起きている現象でもある。

また、動画の再生数を増やすための施策も増えるはずだろう。不正に再生数をあげようとするアーティストは今後も続くことが予想される。それだけに、不正行為をいかに減らし、公平な換算方法を持続するための対応は、音楽チャートを運営する企業や、そうした不正行為の影響をダイレクトに受ける音楽業界にとっての課題の一つとなっていく。

Source:

Billboard 200 to Include Official Video Plays From YouTube, Streaming Services (Billboard)

A Big Change Comes to Billboard’s Album Chart: YouTube Streams(The New York Times)

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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