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またしても2罰打、されど今回は賞賛!?フィル・ミケルソンは、やっぱりミケルソンだった!

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
批判の直後に賞賛!?さすが米国の国民的スターならではの巻き返しだと私は思うが、、(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月の全米オープン3日目に動いているボールを打ち返し、「あえて2罰打を受けてルールを活用した」と主張したフィル・ミケルソンが、またしても2罰打を受けた。だが、今回は「ルール活用」ではなく、自分で自分をルール違反に問い、2罰打を科したという話である。

 米ツアーのミリタリー・トリビュート・アット・ザ・グリーンブライア(7月5日~8日)の最終日の出来事。ミケルソンは7番(パー4)のティグラウンド上にボールをティアップした直後、目の前に長く伸びていた草を邪魔に感じ、数歩前方へ歩み出して、その草を足で踏みつけた。

 その時点では「別段、何も考えていなかった」そうだが、ティアップしたボールの位置へ戻り、ティショットを打とうとしたとき、突如、ライン上の草を踏みつける行為はルールに抵触しないかどうかが気になり始めた。

 ティグラウンド上で「踏んでもいいんだっけ?」と数人に尋ねたが、ルール違反を指摘する声は無く、ミケルソンはそのままティショットを打ち、次打地点へ向かった歩き出した。

 しかし、やっぱり気になったミケルソンは、ルール委員を呼び、歩きながらコトの経緯を説明。

 ルール委員は諸々を確認後、ミケルソンにその行為が「ライン(プレーの線)の改善」(ルール13-2)に当たることを告げ、ミケルソンは2罰打を自ら科し、「4」で上がった7番のスコアをダブルボギーの「6」と記した。

 ミケルソンはティアップしたボールのライン上の草を踏みつけたが、実を言えば、それでも2罰打を回避する道は残されていた。草を踏みつけた時点では、まだショットしていなかったのだから、ライン上の草を踏みつけた後、ティアップの位置を少し左右にずらしてからショットすれば、踏みつけた草は「ライン上ではない」ことになり、ルール違反にはならなかった。

 その事実をルール委員から告げられたミケルソンは「なるほど。ずらせば良かったんだ。なるほど」と大きく頷ぎながら納得。その一部始終を、会場を訪れていた大勢のギャラリーが笑顔で見守っていた。

 ミケルソンは6月の全米オープン3日目に、干上がってプレー不能と批判が殺到していたシネコックヒルズの13番のグリーン上で、まだ動いているボールをパターで打ち返し、「グリーン上や周辺で右往左往するより、あえて2罰打を受けるルールを活用した」と主張して物議を醸したばかり。

 その2日後、ミケルソンは「あれは僕が胸を張れる瞬間ではなかった」と謝罪。今大会は、その出来事以来、ミケルソンが姿を現わした最初の試合だった。

 そこで再び2罰打を受ける運びになったミケルソンだが、わざとルール違反行為を行なった前回と、ルール違反したのではないかと自らの行為を問い正した今回とでは、その内容も経緯も大違い。

 ティアップの位置をずらせば2罰打を免れることができたのだから、「無意味な2罰打だった」と揶揄する声も一部から上がってはいるが、大勢の観衆は「これぞ、我らがフィル!」と尊敬の視線でミケルソンを眺め、「ミケルソンは、やっぱり我らがミケルソンだった」と正直でまっすぐな言動を賞賛する声は、それ以上に上がりつつある。私も、そう感じ、安堵している一人だ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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