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山本量子さんのお別れ会にあった“思いの水流”。そして、55文字に込めた思い

中西正男芸能記者
2024年5月、筆者の取材を受ける山本量子さん(写真は全て筆者撮影)

関西の多くのラジオ番組で存在感を示し、多くの人から愛される中、8月18日に48歳で逝去した山本量子さん。「お別れ会」が11日に開催されました。

僕も会場に行かせてもらいました。会場には晴れやかな表情の写真や、思い出の品が展示され、山本量子さんへのメッセージを綴る場も設けられていました。

親交のあった芸人さん、タレントさん、仕事関係者の方々もたくさんいらっしゃっていました。ラジオを通じて零れ落ちてくる山本さんの人柄に惹かれたリスナーさんもたくさん、たくさんお越しになっていました。

会場は毎日放送一階にある「ちゃやまちプラザステージ」。普段はラジオの公開イベントなども行われる広いスペースですが、すれ違うのにも苦労するほど人で埋め尽くされていました。

「お別れの会」という特性上、もちろん、悲しみの感情も存在するものの、それ以上に皆さんが晴れやかで、うれしくて、ほこらしい顔をされているのが印象的でした。

「自分たちが大好きな山本量子がこれだけの人に愛されている」

互いの存在が互いの喜びになり、互いの癒しと赦しになる。その循環を強く感じる場でもありました。

その空気を深く吸う中でメッセージを書くコーナーに案内されたのですが、スッとペンが動きました。

「縁は簡単に切れるものではない。どこまでも続きます」

どんな言葉を書いたら良いのか。そんなことを一切考える暇もなく、もう書き終えていました。

人の思いは見えないものです。人の思いに質量はないはずです。でも、あの場にはあまりにも思いが凝縮しすぎていて、海の中のように水流ができていました。その力で知らないうちに文字を綴っていた。書く仕事をしているので、書くことには多角的に繊細になっているつもりですが、脊髄反射的に書いていました。

会場を出る時、山本量子さんのマネジャーさんからカードをいただきました。山本量子さんからのメッセージということでした。名刺大のカードに文章がプリントされています。

この仕事に出会えたこと

音楽に出会えたこと

そして

皆さんに出会えたことが

私の宝物です

愛と感謝を込めて…

量子

2024年8月

山本量子さんが旅立つ2、3日前にスマートフォンに残していた文字だそうです。その時の思いを病床で綴っていたと。

自分の命の期限を感じる。その中で文字を残す。この文字が皆さんに届くということはどういうことなのか。

誰でも命の期限は決まっています。ただ、健康でいる時にはそれが見えにくい。一方、期限を否応なく突き付けられる中で、体も極限状態であろう中で、自分が何を綴れるのか。

「仕事に出会えたこと」という部分には過去形を使っているが「私の宝物です」には過去形を使っていない。「宝物でした」と書いたら、もう認めてしまう。終わってしまう。そうならないでほしい。

こんなものは僕の勝手な想像です。本当のことは分かりません。たった55文字。その向こう側に奥行きをどこまでも感じますが、そこに何があるのか。本人にしか分かりません。もしかしたら、ご自身も探していたのかもしれません。

人の死は二回ある。一回は肉体的な死を迎えたとき。二回目はその人のことを覚えている人が一人もいなくなったとき。お別れの会に充満していた思いの濃度から考えると、この先、山本量子さんはとんでもない長寿になるはずです。

書く仕事をしているはずですが、こんな手垢のついた言葉くらいしか綴れません。

それくらい、温かく、尊く、切なく、やさしい場でした。全ての言葉が陳腐になるほどに。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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