銃撃浴び重傷の北朝鮮兵士「酒に酔って亡命」…韓国情報機関が報告
東亜日報など韓国の主要メディアは25日、昨年11月に板門店の共同警備区域(JSA)で銃撃を浴びながら軍事境界線を駆け抜けるという劇的な亡命を決行した元朝鮮人民軍兵士のオ・チョンソン氏が当時、「酒を飲んで酔っ払った状態であったようだ」と一斉に報じた。
東亜日報によれば、韓国の情報機関・国家情報院(以下、国情院)は24日、オ・チョンソン氏は飲酒運転で事故を起こし、処罰を恐れて突発的に亡命を決行したもようであると、国会情報委員会に報告したという。
また国民日報は、「亡命時にも酔っていたと聞いている」との情報当局者のコメントを紹介している。
朝鮮日報も複数の国会情報委員の話として「オ氏は酒に酔った状態で友人に『板門店を見物させてやる』と提案し、車を運転していたところ事故を起こした。そのまま突発的に亡命したとの国情院の報告があった」などと伝えた。
オ氏を巡っては23日にも、「北朝鮮で殺人事件に関与した」との報道が韓国で出ていたが、韓国当局はこれを否定していた。
(参考記事:金正恩氏が「寄生虫動画」の兵士亡命事件で沈黙を守る理由)
朝鮮日報は交通事故についても、「死亡事故ではなかったようだ」とする情報委員の言葉を伝えている。
ただ、北朝鮮側からの銃撃により瀕死の重傷を負ったオ氏の体調は、軍や情報当局の本格的な合同尋問に耐えられるほどには回復しておらず、亡命時の全般的な状況の確認にはさらに時間がかかる見込みだ。
それにしても不思議なのは、北朝鮮メディアがこの事件について沈黙を守っていることだ。ふだんは何ら罪を犯していない人に対しても、「極悪な犯罪者」とか「人間のゴミ」などと言って誹謗中傷するのに、オ氏の亡命については何も言っていない。仮に交通事故が事実ならば、送還を要求して当然なくらいであるにもかかわらずだ。
やはり北朝鮮にとっても、オ氏の亡命は衝撃が大きすぎたのだろうか。事件の一日も早い風化を望み、あえて言及しないことにしている可能性もゼロではかろう。