日銀の総裁と副総裁人事で注目すべき点
政府は16日、日本銀行の黒田東彦総裁を再任させる人事案を国会に提示した。日銀総裁を2期連続で務めるのは第20代の山際正道総裁以来54年ぶりとなる。副総裁には雨宮正佳日銀理事、若田部昌澄早稲田大学教授を充てる案も示された(ブルームバーグ)。
黒田総裁は前任の白川総裁(当時)が、空白期間を埋めるために4月8日の任期を待たずに副総裁の任期に合わせるため退任したことで2013年3月20日に就任した。この際には翌月の4月8日でいったん任期満了となり、あらためて2013年4月9日に就任した格好となっており、これはどのようにカウントされるのかはわからないが、とりあえず2期連続と報じられている。
そのような細かいところはさておき、総裁候補としては以前からスイス大使の本田悦朗氏の名前が挙がっていた。しかし、政府としては消費増税に反対している本田氏を総裁とする案は結果としてのめなかったと思われる。そうなると黒田総裁の続投が最有力となるが、同じ財務省出身の黒田総裁と本田氏の組み合わせも、考え方の違い等を含めて考えづらかった。雨宮理事の副総裁昇格は予定通りとなると、問題はもうひとりの副総裁人事となっていた。
岩田副総裁は一応学者枠ともいえるが、財務省出身の総裁と日銀プロパーの副総裁、そして学者というかエコノミスト的な立場の副総裁がバランスが良い。しかし岩田副総裁はリフレ枠でもあったようで、官邸もリフレ積極論者を岩田副総裁の後任に据えたいとされている。ここに問題があった。リフレ派での学者枠となれば、実は若田部氏の可能性もないとは言えなかったが、個人的にその選択肢はどうかと思っていた。
個人的な意見はさておき、リフレ派の意見をいまだ重視している官邸としてはこの選択肢を取らざるを得なかったのであろう。ただし、審議委員には同じリフレ派で若田部氏の先輩格である原田氏がいる。リフレ派も一枚岩ではないようで、今後はリフレ派同士で意見を戦わせる場面が出てくるかもしれない。
もうひとつ注目すべきは、副総裁となる雨宮理事(企画局、金融市場局、金融研究所)の後任人事となる。これについては日銀が内田真一名古屋支店長を理事に昇格させる方向で検討していることが16日、分かったと時事が伝えていた。
異次元緩和を雨宮理事と支えたのが内田企画局長(当時)であったことで、立場は変わるが雨宮氏と内田氏のコンビが復活となるようである。
こうして日銀の総裁と副総裁さらに企画担当理事の人事が出そろうこととなる(正式には国会の承認等が必要だが)。これを見る限り日銀は現在の政策を進めていくことが予想される。いまのところ金融政策の微調整は考えづらいが、マイナス金利政策のマイナス面を長短金利操作付きに変更させて、金融機関からの反対論を封じ、さらに量の縛りをなくして異次元緩和の継続性を強めるなど、今後も状況に応じた修正はありうると思われる。ただし、あらたに世界的な危機的状況が起きない限りは、リフレ派の一部が主張する追加緩和も封印されるであろうと予想される。