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ついに強硬姿勢!欧州ツアーが打ち出したスロープレー取り締まり「4つの新システム」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
革新的な施策を次々打ち出す欧州ツアーがスロープレー新施策を打ち出した(写真:ロイター/アフロ)

 プロゴルフ界で蔓延するスロープレーに対し、ついに欧州ツアーが強い動きを見せ始めた。これは、8月11日にスロープレー取り締まりに対する異例の声明を出した米ツアーの動きに続くもの。だが、欧州ツアーの姿勢は、米ツアーのそれをはるかに上回る強硬で緻密な内容だ。

【米ツアーの最新の動き】

 プレーペースの問題は世界のゴルフ界の長年の懸案事項になっている。だが、有効な解決策はなかなか見つからず、なかなか講じられず、選手も関係者もゴルフファンも、いわばゴルフ界全体が辟易していると言っても過言ではない。

 つい先日も米ツアーのシーズンエンドのプレーオフ第1戦、ザ・ノーザントラストで、1ショットに3分以上、1パットに2分以上の時間をかけた米国人選手、ブライソン・デシャンボーのスロープレーぶりに多数の選手たちから批判が噴出し、大騒動が起こったばかりだ。

 

 「スロープレー常連」と呼ばれるデシャンボーを「世界ナンバー1プレーヤー」のブルックス・ケプカをはじめとするトッププレーヤーたちが次々に激しく批判し、挙げ句の果てにはデシャンボー自身が「持論」を展開して応酬するという大バトルへ発展。

 その事態を重く見た米ツアーは、同大会最終日に異例の声明を出した。そして、これまでは「アウト・オブ・ポジション」になってから警告を出し、「オン・ザ・クロック(計測)」としていたが、今後は、米ツアーが誇るショットリンクのテクノロジーを活用し、あらかじめ各選手の全ショット、全パットの所要時間を計測、その平均値をリスト化する方向で検討していくことを発表した。

「それが、スロープレー改善のカギになる」と米ツアー・チーフ・オペレーションのタイラー・デニスは胸を張っていた。

【欧州ツアーの最新の動き】

 しかし、実を言えば、米ツアーのスロープレーに対する取り締まり姿勢は、「そもそも甘すぎる」と言われて久しい。前述の声明は「出しただけでも進歩」と言えるほどで、「検討していく」が具体的に実現、実施に辿り着くかどうかには、クエスチョンマークが付けられたままと言わざるを得ない。

 そんな米ツアーの姿勢に業を煮やしたのかもしれない。欧州ツアーの大会自体、プレーペースが一向に改善されないという苛立ちも手伝ったのだと思われる。欧州ツアーはスロープレーを取り締まるための独自の「4つの新システム」を考案。8月19日付けで発表し、2020年からの導入、施行を予定しているという。

 「レギュレーション」「エデュケーション」「イノベーション」「フィールド・サイズ」という4つのカテゴリーに分け、多角的・多面的に、そしてシステマティックに、スロープレー改善を目指す内容は画期的と言っていい。

【4つの新システム】

1、レギュレーション(Regulation=規則)

 新システムでは「アウト・オブ・ポジション」あるいは「計測により制限時間の40秒を2度オーバー」したら、その時点で即座に1罰打が科されることになる。

 現行システムでは、アウト・オブ・ポジションになった後、警告を受け、オン・ザ・クロック(計測)になり、そして制限時間の40秒を2度オーバーしたら1罰打だが、これでは「1ペナまでの道が長すぎる」という指摘を踏まえ、新システムでは「警告&計測」というステップを省き、あらかじめ計測することになった。

2、エデュケーション(Education=教育)

 ペース・オブ・プレーに関する知識と理解を高めてもらうため、欧州ツアーの新メンバーになる際は、スロープレーに対する決まりや罰則を含めたルールの講義をオンライン上で受けることが義務づけられる。現在すでにメンバーになっている選手たちにも順次受講が義務付けられ、全メンバーに3年毎の更新授業が義務付けられる。

3、イノベーション(Innovation=革新)

 アウト・オブ・ポジションになっていないかどうか、プレーヤーに自身の立ち位置を常に把握してもらうため、各ホールのティグラウンドに、前の組との間隔を示すディスプレイ・ボードを設置する。さっそく今年9月のBMW・PGAチャンピオンシップで試験的に導入する予定だ。

4、フィールド・サイズ(Field sizes=出場人数)

 欧州ツアーのフル・フィールド大会の出場人数を現行の156人から144人へ縮小し、プレー進行のスピードアップを図る。決勝2日間は各組のティタイムのインターバルを広げ、スムーズな進行を図る。

 欧州ツアーのキース・ペリー会長は今年始めごろ、「2019年は1ラウンドの所要時間を15分短縮する」と意気込んでいたが、実際は、いまなお5時間以上を擁したラウンドが数回あり、事態はあまり改善されていない。

 来季、この「4つの新システム」がどこまで効果を発揮するのか。米ツアーや世界のゴルフ界のロールモデルとなってくれるかどうか。

 2020年がスロープレー大幅改善の年になることを祈りたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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