都市部での地震-注意すべき10の事態と、地震後にとるべき行動「あごにひも」
7日夜遅く、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生し、東京都足立区、埼玉県川口市、宮代町で震度5強を観測した。東京23区で震度5強以上の揺れを観測するのは、2011年の東日本大震災を引き起こしたマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震以来。
2011年の東日本大震災では、都内で千代田区の九段会館の天井が崩落し女性2人が死亡したほか、町田市のスーパーの立体駐車場でスロープが崩落し車3台が巻き込まれ2人が死亡。さらに、江東区では、地震の揺れで金属加工会社で化学薬品トリクロロエチレンを含んだガスが充満し、吸い込んだ従業員2人が犠牲になるなど計7人が命を落とした。
震度5強ぐらいの揺れをもたらす地震は毎年数回は起きているが、人口密度が高い都市部では、このぐらいの揺れでも大きな被害をもたらす危険があるため注意が必要だ。余震も懸念されるほか、地震後は公共交通機関が混雑するため、無理な出社は避けてほしい。
近年では、2018年6月に発生した大阪府北部地震(最大深度6弱)で6人が死亡。高槻市で寿栄小学校のプール沿いのブロック塀が倒れ、登校途中の小学生が下敷きになって犠牲になったことはまだ記憶に新しい。さらに大阪府北部地震では、朝の通勤時間帯に地震が発生したこともあり、出社や帰宅困難者が街にあふれ返った。エレベーターは6万6000台が自動停止し、339件の閉じ込めが報告された。
都市部で発生する地震において、特に注意すべき点をまとめた。
1 倒壊・落下・転倒・移動・飛散
都市部に限らず地震で起こり得る典型的な被害。古い建物の倒壊や、什器類の転倒、看板、天井などの落下、複合機の移動、ガラス類の飛散などに注意。持っているバッグや、お店なら買い物かごで頭を覆う、落下や飛散しそうなものからは離れる。
2 公共交通機関内での危険
電車やバスの中では緊急停止などに注意。緊急地震速報が鳴ったら、画面を見るより前に、しっかりつり革などにつかまる。ホームにいたら落下にも注意する。
3 火災
特に飲食店が入っている建物では火災に注意。通電火災もあるので、停電が発生した際は、その後に火災が起きないかを疑って行動する。
4 人込み
人込みに巻き込まれないように冷静に行動。あわてない、押さない、無理をしない。
5 暗闇
夜間なら、普段街頭で明るい街並みが一気に停電で暗くなるため、さまざまな危険が考えられる。むやみに歩きまわらず、周囲の状況を確認して安全な場所で一時避難。水道管の破裂などで水が噴き出したり、道路が陥没したり路肩が崩れている可能性もある。
6 閉じ込め
エレベーターの閉じ込めを避けるには、まずは全フロアのボタンを押して止まった階で降りる。閉じ込められても無理にドアをこじ開けたり天井から逃げ出そうとせず、その場で救助を待つ。平時から飲料水、ライト、簡易トイレなどの防災グッズはバッグに入れておくことで慌てなくて済む。エレベーターに限らず、部屋などでも閉じ込めに注意。揺れが収まったらドアを開け、出口を確保しておく。
7 トイレの被災
地震後から公衆トイレには長蛇の列。水道管の被災や排管設備の被災により、多くのトイレが使えなくなる事態が想定される。やはり簡易トイレなどの自宅での備蓄と、普段から防災グッズとして持ち歩くことが大事。
8 有毒ガス
特に化学薬品を扱う工場内やその近くでは、有毒ガスにも注意。地震後にガス漏れがないかを疑い、異臭がしたら窓を開けるなど通気を確保するとともに、安全な場所に移動して通報。家庭などでも、非常用発電機の一酸化炭素には十分注意し、屋内では決して使わない。
9 帰宅困難
都市部では、帰宅困難それ自体が大きなリスク。日頃から歩きやすい靴を履くとともに、水、LEDライトや、簡易携帯トイレ、スマートフォンの充電用バッテリー、医療用品など防災グッズを持ち歩く。
10 堤防決壊
川底が人家より高くなり天井川となっているようなところでは地震の揺れにより堤防が決壊する危険があるので地震後はなるべくそうした場所から離れる。など
大きな揺れに襲われた際の行動は「あごにひも」と覚えるといい。まずは安全を確保した上で、特に見落としがちなのが、二次災害に巻き込まれないようにするということ。その上で安全な場所から家族と連絡を取り合うというのが基本だ。
あ:頭を覆って安全確保
ご:誤報(火災警報、津波警報などを)だと思って安心しない
に:二次災害に巻き込まれないようにする
ひ:火に注意し、一旦安全な場所に避難
も:もしもし。家族へ安否の連絡(安全を確保した上で連絡をとる)