「歯がズレて死亡」米大生両親との面会拒否する文在寅の誤算
北朝鮮で長期にわたり拘束され、釈放直後に死亡した米国人大学生、故オットー・ワームビアさんの両親が22日から韓国を訪問する。ソウルで開催される「北朝鮮の拉致および抑留被害者たちの法的対応のための国際決議大会」に出席するためだ。
ワームビア夫妻は訪韓に際し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に面会を要請したが、青瓦台(韓国大統領府)がこれを拒否。国内の一部で批判の声が上がっている。
「拷問」の証拠写真
青瓦台が面会を断った理由は、大統領の日程上、調整が難しいというものだ。韓国紙・朝鮮日報の報道によれば、青瓦台の国家安保室は夫妻に対する回答書で「送ってくださった書信はきちんと受け取って読んだ。大統領との面会を希望されるお気持ちは私どもも十分に理解している」としながらも、面会要請を断った上で「ご家庭の幸せと健康をお祈りする」とつづったという。
確かに、多忙をきわめる大統領が、日程の都合で会えないというのは十分にあり得ることだ。しかし、今回はタイミングが悪い。
韓国政府は7日、刑事事件の容疑がかけられている北朝鮮の船員2人を、亡命を望む本人らの意思に反して強制送還し、国内外から批判を浴びている。韓国が批准している国連拷問禁止条約が第3条において、「締約国は、いずれの者をも、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還し又は引き渡してはならない」と定めていることが根拠のひとつだ。
そして死亡したワームビアさんは、北朝鮮で拷問を受けていた可能性が高いと指摘されている。
その有力な証拠のひとつは、2014年からワームビアさんの歯の治療に当たっていたタッド・ウイリアムス博士が同地裁に提出した複数の写真だ。その写真とは、北朝鮮で拘束される以前に撮られた、ワームビアさんの下の歯が見える顔写真とX線写真、そして死亡後の検視の際に撮影された頭蓋骨のスキャン画像の3枚だ。
たしかにこれらを見比べると、拘束前のワームビアさんの歯並びはきれいなのに、スキャン画像では下の中央の歯2本が歯列の内側へ大幅に移動していることがわかる。
(参考記事:北朝鮮が拷問か…死亡の米大学生の歯列変形。米メディアが写真公開)
文在寅大統領はかねてから、金正恩党委員長との対話を優先するため、北朝鮮における人権侵害の深刻さから目を背けてきた。ワームビア夫妻との面会を拒否したことは、その事実をより強く印象付けるだろうし、船員2人の強制送還を巡る批判にも、いっそう勢いを与えることになりかねないだろう。