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オーストリアのロックダウンによるリスク回避の動きは一時的なものか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 欧州で再び新型コロナウイルスの感染が拡大している。オーストリアでは18日の新規感染者が1万5000人を超えて1日の感染者としてはこれまでで最も多くなった。

 オーストリア政府は19日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、完全なロックダウン(都市封鎖)を再導入することを明らかにした。

 西欧で今秋、ロックダウンが再導入されるのは初めてとなる。政府はまた来年2月までのワクチン接種を全国民に義務付けるとした。オーストリアのワクチン接種率は66%程度。

 WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、欧州の新型コロナウイルスの感染が拡大していることに対し、季節が冬になったことや、ワクチン接種率が十分なレベルに達していないこと、より感染力が強いデルタ変異株が広がっている地域があることなどが背景にあるとしている。

 オーストリアのロックダウンの再導入を受けて、19日の欧米市場はリスク回避の動きを強めた。

 19日の欧米の国債は売られ、国債の利回りが上昇した。米国株式市場では米長期金利の低下からハイテク株は買われたものの、ボーイングなどは売られてダウ平均は下落した。欧州の株式市場も総じて下落。原油先物も下落し、外為市場ではユーロが売られ、ユーロ円も大きく下落した。

 金融市場ではあらためて新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け始めている。日本では落ち着いているが、ワクチン接種率が高い国でも感染が拡大しているところもあり、油断はできない状態にある。

 今回の欧米を主体とした新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避の動きは一時的なものとなる可能性はある。しかし、欧米の株式市場ではここにきて株価指数が過去最高値を更新するなどしていたことで、オーストリアのロックダウンをきっかけに調整局面入りする可能性もないとはいえないか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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