2024年8月度外食産業売上は前年同月比でプラス9.3%
日本フードサービス協会は2024年9月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2024年8月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でプラス9.3%を示した。相次ぐ台風による大雨被害で臨時休業や営業時間短縮の店舗が続出したが、お盆休みやインバウンド需要が後押しし、全体としては堅調さを維持することができた。
全業態すべてを合わせた2024年8月度売上状況は、前年同月比で109.3%となり、9.3%の増加を記録した。これは前回月から継続する形で33か月連続の増加。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は変わらず、土曜日は1日多いため、売上の観点ではプラス。気象環境では雨天日は東京は少なく、大阪も少なく、平均気温は東京は低く、大阪は高く、客足への影響判断はプラスと判断できる。ただし、3つの台風が相次ぎ日本に大きな影響を与え、臨時休業や営業時間短縮の店舗が続出しており、この点では大きなマイナスとなっている。
新型コロナウイルス流行に関しての5類移行やインバウンドの回復傾向などの動きから人の流れは増加し、これらが外食機運の高まりとともに売上増につながっている。今回月では円安による訪日外客需要は旺盛なままで、これが大いに客足をけん引した。結果として客数は全体では前年同月比でプラス4.7%を示した。一方で客単価はプラス4.4%となり、結果として総合売上はプラス9.3%に。
業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で42か月連続のプラス(プラス9.6%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、ファストフード全体をけん引するかのような好調さを示している。今回月では「11日まで続いたパリ五輪の在宅需要やお盆需要が貢献」と説明されている。
なおマクドナルド単体の2024年8月における営業成績はプラス5.3%(売上、既存店、前年同月比)を示している。客数はプラス2.6%、客単価はプラス2.6%。
牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス7.6%、客単価はプラス8.1%となり、売上はプラス16.3%。麺類は客数プラス2.1%、客単価はプラス8.6%となり、売上はプラス10.9%。麺類は「猛暑に対応した冷たいメニュー、辛いメニューが売れ行き好調」との説明がある。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がプラス2.4%。「台風の影響を受けたが土曜日が1日多かったことがプラス」とある。
ファミリーレストラン部門は客数ではプラス6.0%、客単価はプラス3.8%、売上はプラス9.9%。洋風では「メニュー改定や販促キャンペーンの実施(が奏功)」との説明がある。
パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はプラス3.0%、居酒屋の売上はプラス4.1%。部門全体では売上はプラス3.7%を示した。「南海トラフ地震情報や台風の影響」「お盆の集客はおおむね堅調で、季節メニューの好調とあいまって」とある。
新型コロナウイルスの影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても(場合によっては自治体からの要請に従う形で)時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。
特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続していた。しかし業界側では2024年7月発表分で「2019年同月比につきましては、新型コロナの5類移行から満1年が経過したため、2024年5月度を以て掲載を終了いたしました」とコロナ禍前との比較値を非公開とし、それが今回月も継続している。少なくとも数字の上では、状況は改善しているようだ。
次回月の2024年9月分では、今回月に続き行動制限などは無く、平均気温は平年より高く、特に北海道以外では平年より気温がかなり高い。降水量は東北と九州を中心にいくぶん多い。気温はある程度以上高くなると外出忌避につながることを考えると、気候の観点では、客足はいくぶんネガティブな力が加わるだろう。他方、原材料価格の高騰などは継続中であり、また人員数不足も深刻化しており、ビジネスの上では大変な状態が続くに違いない。
上記は今記事のダイジェストニュース動画(筆者作成)。合わせてご視聴いただければ幸いである。
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