中国の不法漁民に凄惨な私刑…「北朝鮮海賊船」の過激な実態
朝鮮中央通信は27日、金正恩第1書記が朝鮮戦争での「勝利(停戦協定締結)」62周年に際して、「中国人民志願軍烈士陵園に花輪を送った」と報じた。同陵園には、毛沢東元中国国家主席の長男・毛岸英氏をはじめ、朝鮮戦争で戦死した中国人将兵らが安置されている。
朝鮮戦争中、中国は北朝鮮を支援するために120万人とも言われる兵力を投入。これが、「血で固めた友誼」と言われる両国関係の基礎になってきた。
金正恩氏も、権力を継承した当初はこの関係を重視。2013年7月には、同陵園を自ら訪れて献花している。しかしその後、中朝関係が悪化。正恩氏は昨年、同陵園に花輪を送ることさえしなかった。
それが今回、正恩氏が2年ぶりに花輪を送ったことが明らかになると、中国の官営メディアがこれを主要ニュースとして報道。中朝関係の「正常化」を思わせる空気がにわかに醸成されてきた。
確かに、中朝関係はギクシャクし始めてからすでに1年半を経ており、両国首脳がそろそろ「正常化」を考えたとしてもおかしくはない。問題は、この間に殺伐さを増した現場の空気が、どこまで改善されるかだ。
両国関係の悪化は、正恩氏が中国との窓口になっていた張成沢(チャン・ソンテク)元国防委員会副委員長を処刑したことや、習近平国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問したことにあるとされる。
直接的にはそうかもしれない。しかしそもそも、北朝鮮には政府指導層から一般国民に至るまで、自分たちの困窮を見透かしたような中国人の振る舞いに対する反感が、満ち満ちているのだ。
そうした気分に政府がお墨付きを与えたものだから、現場での衝突も必然的にエスカレートした。4月には北朝鮮海軍が、中国カニ漁船の北朝鮮海域での違法操業を取り締まる過程で、中国人船員1名を射殺する事件も発生した。
もっとも、北朝鮮の漁業取締船は以前から、海賊化していることが知られていた。摘発名目で中国船から燃料や食糧などを強奪し、さらに中国人漁民を拘束して人質にし、彼らが所属する漁業関連会社から身代金を脅し取るのだ。中には凄惨なリンチを加え、漁民をなぶり殺しにしてしまうケースさえある。
北朝鮮海軍は従来、そうした行為を遠巻きに見守るだけだったようだが、今回は彼らまで前面に出てきてしまったというわけだ。
一方、中国側としても、北朝鮮の脱走兵が国境地帯で強盗殺人を繰り返していることに頭を抱えている。
仮に中朝両国の首脳が関係の「正常化」に動くとしても、現場レベルで上手く行くかどうかは未知数な部分が残る。