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【女子バレー】中田ジャパン2年目 心を鬼に!「久美さんの覚悟」

大林素子スポーツキャスター、女優
五輪でメダル!のために、自らやチームを追い込む中田久美監督(写真:松尾/アフロスポーツ)

「サバイバル」の中で勝ち残るのは?

 女子バレーボール「火の鳥NIPPON」の2018年シーズンがスタートしました。中田久美監督にとって2年目。

 中田ジャパン1年目は、久美さんは監督として「中田バレー」が何か、どういうバレーをしていきたいかを選手に伝えることを一番に考え、選手は監督とコミュニケーションを取り、それがどういうものかを感じ取り、いろんな努力をしてくれた1年でした。

 「けがをした選手もいて、登録メンバーの全員を起用することはできなかったけれども、その中でも選手はしっかり頑張ってくれた」と久美さんは評価していました。選手との信頼関係や2020年の東京オリンピックに向かっての絆ができ始めてきた。1年間の積み重ねは久美さんの中で大きかったと思います。

 とはいえ、数字的なデータを見てみると、プラス面ばかりではなくマイナス面もあり、しっかりと課題になって表れました。私は「選手の人間ドック」と称しているのですが、選手個々の全試合のパフォーマンスの全データが集計されて、通信簿というよりも、まるで人間ドックの血液の数値といったようにはっきりと出ました。アナリストが細く調べて洗いざらい全部出してくれたので、2年目の今シーズンは、選手の課題や取り組むべきものがはっきりした状況で戦える。選手がその課題をどうクリアするかが今季の「戦い」になってくると思います。

「3つのチャレンジを」と選手に伝えた中田監督

 昨シーズンは「知ること」、そして今シーズンは数字にはっきりと出ている課題に取り組む。「前衛2枚のときの決定率」や「パス(サーブレシーブ)が乱れた時の攻撃」。誰がどう攻撃していくのか、一人ひとり、どう個人の能力を上げていくのかというのが大事になってきます。

 

「決め切る」エースとして期待の古賀紗理那選手(FIVB提供)
「決め切る」エースとして期待の古賀紗理那選手(FIVB提供)

 

攻守で引っ張る存在になってほしい石井優希選手(FIVB提供)
攻守で引っ張る存在になってほしい石井優希選手(FIVB提供)

 久美さんは、会見で「選手たちにはさらに3つのチャレンジをしてほしい」と話しました。「1つ目は、大事なシーズンなので、自分と戦って自分に対してチャレンジしてほしい。2つ目は、若手選手も入ってきていますし、チーム内で切磋琢磨、チャレンジしてほしい。3つ目は、世界にチャレンジしてほしい」と。

 個人との戦い、自分との戦いであり、新しい選手や戻ってきた選手もいるのでチームメイトとの戦い。それがなければ、世界を相手に戦えない。久美さんは「サバイバル」とテーマを決めて、競争させ、選手それぞれに期待して、覚悟を持たせています。

 もちろん試合をやってみないとわからないですが、そこで結果を出した選手が、「サバイバル」の中で勝ち残っていく。久美さんは、心は鬼に!!しているので、とてもシビアな1年になるだろうし、本気の戦いが始まるのだと思います。

目標は「全大会メダル獲得」

「ネーションズリーグ」ドイツ戦で今季初勝利(FIVB提供)
「ネーションズリーグ」ドイツ戦で今季初勝利(FIVB提供)

 初めてのネーションズリーグ(5月15日に開幕、ファイナルを含めると7月1日まで)があり、アジア大会(8月18~9月2日・ジャカルタ)があり、世界バレー(9月29日~日本開催)がある2年目。

 久美さんに今年の目標、来年の目標、オリンピックの目標を聞いたとき、「全大会メダル獲得」とおっしゃっていました。自らを、またチームを追い込まないと、五輪のメダルには届かない。1年目はまだ「メダル」とは言えなかった。それはどんなチームにするかなど、久美さんの中でも模索していただろうし、選手のポテンシャルや、選手がどこまでできるか、何ができるのかがわからなかったからだと思います。

 でも今年は、はっきりと「メダル」という言葉を出しました。久美さんの覚悟を感じました。メダルを獲得できる可能性も感じているので、選手には久美さんのその言葉に負けないで戦ってほしいと思います。

今シーズン出遅れると世界に追いつけなくなる

 2018年に結果を出せなければ、2019年は見えない。続かない。オリンピックでメダルを取ってきたときにはそうやって階段を上っているので、過去のそのデータに基づくとしたら、今シーズン出遅れると追いつけなくなってしまう。世界も、去年はオリンピック1年目でメンバー(主力)が揃っていなかったり、あえてメンバーを変えていたチームも多かったですが、今年から本気になってくる。メダル圏内に常に!入る戦いをしなければならない。

(撮影:坂本清)
(撮影:坂本清)

 東京オリンピックでのメダル獲得を目指し、厳しい1年になると思いますが、楽しみな1年でもあります。期待しています。

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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