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「持ち家無し」の人の間に広まる「マイホームはいらない」の思い

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 住宅保有は夢であり人生の目標…の人も多いのだが。(写真:アフロ)

・持ち家率は単身世帯で26.3%、二人以上世帯で72.9%。

・二人以上世帯の方が将来の自家取得希望率は高い。

・単身世帯では年々自家取得希望率が減少している。

単身世帯は「持ち家はいらない」との意見多し

住宅保有は夢であり人生の目標と評する人もいるが、最近では賃貸で十分との考えの人も多いとの話。持ち家無しの人が住宅を調達しようとする意志と予定時期について、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

今調査の直近値(2017年分)では、単身世帯は26.3%、二人以上世帯では72.9%が持ち家に住んでいると回答している。単身世帯の方が圧倒的に持ち家率が低い、逆にいえば借家住まいの人が多い。なお今件における「持ち家」とは「本人が購入した家屋マンション」「相続または贈与を受けた持ち家」のいずれかを意味する。

↑ 持ち家率(2017年)
↑ 持ち家率(2017年)

それでは現在持ち家に住んでいない人、つまり借家住まいなどの人は、将来自家を取得する予定はあるのだろうか。自前で購入する以外に、親などから相続を受ける可能性もあるため、それも含めた回答をしてもらったのが次のグラフ。

↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(2017年)
↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(2017年)

予算の都合や必要性も併せて考えれば当然の話ではあるが、二人以上世帯の方が(現在非持家世帯でも)自家取得意向が強いのが分かる。また、単純計算で確率が2倍に増えることから、「相続で譲り受ける予定」との意見も、二人以上世帯の方が多い……が、約3倍の値は単純な確率論を超えた値。「単身で生活している子供にでは無く、夫婦で世帯を有している子供にこそ、住宅を相続させたい」とする祖父母側の意図がすけて見えてくる。

興味深いのは単身・二人以上世帯間で「相続予定・時期不明」と「目下考えていない」を合わせた比率に大きな違いが見られないこと。「取得予定なし」はノー、「何年以内」は明確なスケジュール付きのイエスのため、「取得できる・できない・しない」の差はあれど、「住宅取得について直近で深く考えたことは無い、考えていない」との人は単身・二人以上世帯ともに同程度の比率となる。

自家取得意欲の昔と今と

これをデータが残っている2007年以降の推移でみると、特に持ち家の無い単身世帯で住宅取得意欲が減少しているのが確認できる。

↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(単身世帯)
↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(単身世帯)
↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(二人以上世帯)
↑ 非持ち家世帯における自家取得予定時期(二人以上世帯)

「相続予定」「目下考えていない」は多少のばらつきがあるがそれぞれの世帯種類内ではあまり変わらず、具体的年数を決めて取得する意向の値が少しずつ減り、その分「取得予定無し」が増えているのが分かる。特に単身世帯の取得意欲の減り方は著しく、2007年から2017年の間に「予定無し」の人が22.4%ポイントも増加している。取得可能な2007年分以降では、単身世帯における「取得予定無し」の値が前年比で減ったのは、2015年分が初めて。

相続による取得以外では、自家は自前で手に入れるしか無い。相場は比較的安定しているとはいえ、可処分所得の減少や雇用の安定度を考え、取得をあきらめる人が増えており、その実情・心境が反映されていると考えれば、今件グラフの動向も納得がいくものだ。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2017年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2017年6月16日から7月25日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は47.1%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2017年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は2000世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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