ついにロシアのドル建て国債がデフォルトと判断される。それを判断した謎の委員会とは何か
21日にNHKが次のように報じた。
「世界の主要な金融機関の代表などでつくる委員会は、20日、ロシアが今月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いなどを自国通貨のルーブルで実施したことについて、潜在的なデフォルト=債務不履行にあたると判断しました。」
ついにロシアのドル建て国債がデフォルトと判断されたようだが、いったい誰がデフォルトと判断したのか。世界の主要な金融機関の代表などでつくる委員会とはいったい何であるのか。
ロシアが今月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いについて、ロシア政府は利払いや償還をルーブルで実施したと発表した。国債の利払いなどには30日間の猶予期間があり、それまでにドルによる支払いがなければ、デフォルトと判断されるが、すでにドル以外の通貨で支払ったことでこれはデフォルトとなる。
ロシアは1917年のロシア革命直後以来、対外債務でデフォルトを起こしていない。ロシア国債の格付けは、同国がウクライナに侵攻する2月24日までは投資適格級となっていた(11日付けロイター)。このためデフォルトと判断されるとなれば、非常に大きな出来事となりうる。
ルーブルでの支払いをめぐっては大手格付会社「S&Pグローバル・レーティング」が今月8日に、部分的なデフォルトに陥ったと認定した。その直後、EU=ヨーロッパ連合によるロシアへの制裁に対応するため、格付けを取り下げていた。「ムーディーズ」も格付けはそのものは取り下げていた。このまま猶予期間が過ぎればデフォルトにあたる可能性があるとの認識を示していたが、正式なデフォルトとの認定は宙に浮いていた格好となっていた。
EU=ヨーロッパ連合の要請に応じて、4月15日までに主要格付会社はいずれも、ロシアの格付け業務を停止してしまった。通常、主要格付会社がデフォルトの格付けをすることで、デフォルトが正式に認定されるが、それができなくなってしまったのである。
ちなみに主要格付け会社は各国の国債の格付けを勝手に行っている。勝手にという表現はおかしいかもしれないが、とにかく頼まれてもいないのに「勝手格付け」を行っており、それを投資家は投資の判断材料にしているのである。
その各国国債はその格付けによってデフォルトと判断される。しかし、今回は格付け会社はその判断がロシアの格付け業務停止で、できなくなってしまったのである。
それならばいったい誰が今回、潜在的なデフォルトと判断したのであろうか。
ロシア国営鉄道会社「ロシア鉄道」が、外貨建て債務の利払いができず、債務不履行(デフォルト)と認定されたことが11日に明らかとなった。
これを判断したのが、クレジットデリバティブ決定委員会と呼ばれるものであった。
あまりなじみがないかもしれないが、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というデリバティブ商品(金融派生商品)がある。発行体の信用リスクを対象とするデリバティブである。
デフォルトなどクレジットイベントが発生した際、スワップの想定価値と等価の債券を額面で売却できるという権利と引き換えに、プロテクションの売り手に対して毎年プレミアム(保険料/オプション料)を支払うという取引である(やや難解)。
このクレジットイベントが発生したかどうかの認定に関しては、クレジットデリバティブ決定委員会が決定するようである(以前はISDAの元にある委員会であったが、2018年からISDAは事務局の役割をおりていて現在は関わっていないそうである)。
国営ロシア鉄道の発行した外貨建て社債について、CDSもどうやら取引があったとみられ、このためクレジットデリバティブ決定委員会によってデフォルトと認定されたとみられる。
今回のロシアのドル建て国債を潜在的なデフォルトと判断したのも、クレジットデリバティブ決定委員会であったとみられる。
ただし、今回は具体的には「クレジットデリバティブの世界におけるクレジットイベント」が正式に認定されたわけではなく、あくまで「潜在的(Potential)」との表記があり、近い将来に「クレジットデリバティブの世界におけるクレジットイベント」が認定されるであろうとの認識である。
ロシア国債のCDSは当然ながら取引されていたとみられる。今回、ロシアの外貨建て国債が潜在的デフォルトと判断され、それをNHKが報じたのである。